マイ・フェイバリット｜リアクション

マイ・フェイバリット

●ねこでん散歩で見つけたお気に入り

　日曜日、マリエッタ・ラシュリエは寝子島電鉄に揺られて寝子島へ。
　寝子島駅で降りてみたけれど、特にこれと言って目的はない。
　ぶらぶらと散歩するだけだが、春の朗らかな陽気にすっかり冬は遠くになったと実感できる。
　参道商店街をのんびり歩いて、思い立ったように目についた横丁へ足を向ける。
「普段行ったことのないところへ立ち寄るのは、ちょっとした冒険ね」

　ほんの少し歩いてみると、昔ながらの駄菓子屋があったので楽しもうと立ち寄ってみる。
　レトロ感漂う昭和の駄菓子屋の中を見回したマリエッタが興味を示したのは、ジャムのような赤いソース状の駄菓子。
「ジャムみたいなお菓子が売っているのね。おばちゃん、これ、どうやって食べるの？」
　店番をしているおばちゃんに聞くと、これを薄くてパリパリとしたせんべいに塗って食べるのだとか。
　そうやって食べるとおいしいんだよとおばちゃんが言うので、さっそく買って食べてみる。
「……おいしい」
　商品名に梅がついているお菓子なので酸っぱいかな？　と思っていたが、そんなに酸っぱくなかった。
（よく考えたら、駄菓子はお菓子だものね）
　子供が食べやすいように加工してあるもの、と食べながら納得する。
　せんべいを食べた後はくじ引きをやった。当たったのは野球カードだった。
　カードの他に独楽やメンコ。竹とんぼ、風船といった素朴な玩具も景品になっていた。
「駄菓子屋さん、昔懐かしの雰囲気が良かったわ」
　入ってきた子供達とすれ違うように駄菓子屋を出て、またゆっくり歩く。

　駄菓子屋から少し離れたところに、ひっそりと隠れるように小さな甘味処があった。
　酸っぱいものを食べた口直し、と中に入ると、客はマリエッタ以外に地元の人が2人ほど。
　店員がマリエッタを見て戸惑っているので「大丈夫、私、日本語話せますから」と安心させるように言う。
　それを聞いた店員は、空いている席にどうぞとメニューを差し出した。
　何にしようか迷っていると、先程の店員が桜餅とこのお茶がお勧めだと教えてくれた。
　それなら……とマリエッタはお勧めの桜餅とお茶をいただくことに。
「この桜餅おいしい。葉っぱの、ほんのりとした塩味がいい味を出しているわね」
　桜餅を食べ終え、お茶を飲んでからメニューを見る。
　三色団子やあんみつ、おしることいったいろいろな甘味があるので目移りしてしまう。

　この甘味処の雰囲気は、おひとり様で過ごすのに最適。気分転換にはちょうどいいかもしれない。
（この店、気に入ったな。また来ようかしら）
　ねこでんでのぶらぶら散歩が有意義なものになったと、マリエッタは満足気に寝子島駅に向かい歩き出した。

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