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- 00月00日生 00歳
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WONDERFUL OPPORTUNITY！
すでに羽生 碧南は木天蓼大学女子バスケットボール部のユニフォームを受け取っている。
今日、はじめてロッカールームでその袖に腕を通した。
寝子高時代と同系統、赤いユニフォーム。ただ、胸のプリントはもちろん異なるし、全体の色味もやや黄色がかったスカーレットだ。肌触りがパリッとしているのは着慣れていないからだろうか。
それとも肌も、緊張しているからかな。
唾を呑みこむと碧南は、シューズの紐をたしかめてからロッカールームを出た。
桜花寮を引き払うときもいよいよ間近、すでに私物は九割方トランクルームに移送ずみで、大学の寮への移動日を待つばかりだ。
なのに大学は、碧南をのんびりさせる気はないらしい。
休む暇ないくらいなんですけど？
入学前の課題はわんさか出ている。
それに入学式だってまだなのに、もうバスケ部の練習に合流しろだなんて。
なにせ学費全免除の特待生、待遇は甘くはないのだ。
唇を噛みつつ暗い廊下を歩く。ワックスの匂いがする。ボールが板の間でバウンドする音も聞こえてくる。
あの扉を開ければコートだ。
怖くないといえば嘘になるが、大事な試合にのぞむそのときのように、体内にアドレナリンが流れているのも碧南は感じていた。柔軟運動は無人のロッカールームですませてきた。それも念入りに。全身の細胞が臨戦状態にある。
いますぐダッシュしろと言われたって対応できるだろう。なんならスリーポイントシュートでもいい。
――よし。
最初が肝心だ。碧南は肺いっぱいに空気を吸いこみ、体育館の両開きの戸を力強くひらくと直立、同時に顔面が膝に激突する勢いで頭を下げた。
「寝子高バスケ部出身、羽生碧南ですッ！ よろしくお願いします！」
コート内の会話が中断した。
跳ねていたボールも止まった。
頭を下げた姿勢のまま微動だにせず、碧南はぎゅっと目を閉じていた。
マタ大女子バスケ部メンバーの視線が、自分に一斉にそそがれているのを感じる。
うう。まな板の上の鯉。
学費オール免除のクソ生意気な新人ってのはあんたか。
なに無断でコートライン越えてんだコラァ！
高校バスケのMVP？ それが大学バスケで通用すると思ってんのか！？
といった罵声が飛んでくるのを碧南は覚悟した。あるいは、
おやおや、あれが期待のホープ？
初日から遅れて出勤とはご立派な身分だこと。
ふーん、まずはお手並み拝見といこうか。
といった冷ややかな笑みか。
どっちも、つらい。
でもこれが実力の世界だ。甘受するほかない。もうどうにでもしてと叫びたかった。
ところがあにはからんや、碧南をまちかまえていたのは温かな笑いだったのである。
「羽生さんだね！ 会えるの楽しみにしてたよ！」
「カタくなっちゃって、初々しくてかわいいなあ」
「ほらそんな隅っこにいなくていいから。今日から仲間じゃん！ もっとこっちおいでよ」
数人かけよってきて碧南の手を引きコートに迎え入れたのである。物珍しそうにわいわい言っているが総じて歓迎ムードだ。
「ウィンターカップ、チケット買って観に行ったよ」という嬉しい声や、
「バスケ誌で見たより美少女じゃ～ん」というフレンドリーな声、
「まだ伸びそうだね、背」という声もあった。
よかった。怖いところじゃなかった。
全国制覇を狙う強豪だから、それはもう殺伐とした部活ではというのは考えすぎだったらしい。安堵に碧南の表情も緩みかけた。だがそれも刹那だ。左から右へ、白い稲妻が駆け抜ける。
「もしかしてカレシいる？」
唐突に飛んで来た無邪気な質問に、碧南の全身はふたたび凝固した。
……正直に答えたりしたらそれこそ、
言っとくけどマタ大バスケ部は恋愛禁止だから。
全国制覇なしとげるまでは、って私も別れたし。
男よりバスケでしょ！
こういう反応が返ってくるかもしれないではないか。強豪校にはありえる話だ。
隠すべきか明かすべきか。それが問題だ。
だが逡巡は一瞬だった。
ええい！
「は、はいお付き合いしてる人が……高校時代の先輩なんですけど……」
清水の舞台から飛び降りる気持ちで碧南は白状したのである。
これを聞くや碧南を囲む熱は、より一層高まった。
「いいなぁ～！」
身もだえするように叫んだ先輩がいる。
「どんな人どんな人！？ 顔はイケてる？ カレシの友達紹介して！」
飛んでくる先輩もいる。
「私も！」
「ちょっとお前、ダーリンいるだろが。私が先だ」
「私もいるけど合コンしたーい♪」
こんな感じでコートは練習開始前にしてすでに、熱くピンク色にヒートアップしたのだ。
なんかここなら。
碧南は思った。
うまくやっていけそうな気がする。
今日、はじめてロッカールームでその袖に腕を通した。
寝子高時代と同系統、赤いユニフォーム。ただ、胸のプリントはもちろん異なるし、全体の色味もやや黄色がかったスカーレットだ。肌触りがパリッとしているのは着慣れていないからだろうか。
それとも肌も、緊張しているからかな。
唾を呑みこむと碧南は、シューズの紐をたしかめてからロッカールームを出た。
桜花寮を引き払うときもいよいよ間近、すでに私物は九割方トランクルームに移送ずみで、大学の寮への移動日を待つばかりだ。
なのに大学は、碧南をのんびりさせる気はないらしい。
休む暇ないくらいなんですけど？
入学前の課題はわんさか出ている。
それに入学式だってまだなのに、もうバスケ部の練習に合流しろだなんて。
なにせ学費全免除の特待生、待遇は甘くはないのだ。
唇を噛みつつ暗い廊下を歩く。ワックスの匂いがする。ボールが板の間でバウンドする音も聞こえてくる。
あの扉を開ければコートだ。
怖くないといえば嘘になるが、大事な試合にのぞむそのときのように、体内にアドレナリンが流れているのも碧南は感じていた。柔軟運動は無人のロッカールームですませてきた。それも念入りに。全身の細胞が臨戦状態にある。
いますぐダッシュしろと言われたって対応できるだろう。なんならスリーポイントシュートでもいい。
――よし。
最初が肝心だ。碧南は肺いっぱいに空気を吸いこみ、体育館の両開きの戸を力強くひらくと直立、同時に顔面が膝に激突する勢いで頭を下げた。
「寝子高バスケ部出身、羽生碧南ですッ！ よろしくお願いします！」
コート内の会話が中断した。
跳ねていたボールも止まった。
頭を下げた姿勢のまま微動だにせず、碧南はぎゅっと目を閉じていた。
マタ大女子バスケ部メンバーの視線が、自分に一斉にそそがれているのを感じる。
うう。まな板の上の鯉。
学費オール免除のクソ生意気な新人ってのはあんたか。
なに無断でコートライン越えてんだコラァ！
高校バスケのMVP？ それが大学バスケで通用すると思ってんのか！？
といった罵声が飛んでくるのを碧南は覚悟した。あるいは、
おやおや、あれが期待のホープ？
初日から遅れて出勤とはご立派な身分だこと。
ふーん、まずはお手並み拝見といこうか。
といった冷ややかな笑みか。
どっちも、つらい。
でもこれが実力の世界だ。甘受するほかない。もうどうにでもしてと叫びたかった。
ところがあにはからんや、碧南をまちかまえていたのは温かな笑いだったのである。
「羽生さんだね！ 会えるの楽しみにしてたよ！」
「カタくなっちゃって、初々しくてかわいいなあ」
「ほらそんな隅っこにいなくていいから。今日から仲間じゃん！ もっとこっちおいでよ」
数人かけよってきて碧南の手を引きコートに迎え入れたのである。物珍しそうにわいわい言っているが総じて歓迎ムードだ。
「ウィンターカップ、チケット買って観に行ったよ」という嬉しい声や、
「バスケ誌で見たより美少女じゃ～ん」というフレンドリーな声、
「まだ伸びそうだね、背」という声もあった。
よかった。怖いところじゃなかった。
全国制覇を狙う強豪だから、それはもう殺伐とした部活ではというのは考えすぎだったらしい。安堵に碧南の表情も緩みかけた。だがそれも刹那だ。左から右へ、白い稲妻が駆け抜ける。
「もしかしてカレシいる？」
唐突に飛んで来た無邪気な質問に、碧南の全身はふたたび凝固した。
……正直に答えたりしたらそれこそ、
言っとくけどマタ大バスケ部は恋愛禁止だから。
全国制覇なしとげるまでは、って私も別れたし。
男よりバスケでしょ！
こういう反応が返ってくるかもしれないではないか。強豪校にはありえる話だ。
隠すべきか明かすべきか。それが問題だ。
だが逡巡は一瞬だった。
ええい！
「は、はいお付き合いしてる人が……高校時代の先輩なんですけど……」
清水の舞台から飛び降りる気持ちで碧南は白状したのである。
これを聞くや碧南を囲む熱は、より一層高まった。
「いいなぁ～！」
身もだえするように叫んだ先輩がいる。
「どんな人どんな人！？ 顔はイケてる？ カレシの友達紹介して！」
飛んでくる先輩もいる。
「私も！」
「ちょっとお前、ダーリンいるだろが。私が先だ」
「私もいるけど合コンしたーい♪」
こんな感じでコートは練習開始前にしてすでに、熱くピンク色にヒートアップしたのだ。
なんかここなら。
碧南は思った。
うまくやっていけそうな気がする。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2024年07月25日
- 参加申し込みの期限
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- 2024年08月01日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2024年08月01日 11時00分
