- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
ハレよ、風吹け ～ぼくらが幸せでありますように～
ふーかちゃんとくがつちゃん
旧市街は参道商店街にある蕎麦屋すすきの。
出汁の香り漂う店内で、店主の孫娘・五月の妹であり、看板娘でもある薄野 九月がそわそわしている。
「くーがつちゃーん！」
店の外から待ち合わせ相手の声がして、九月はお気に入りのキャスケット帽を被った。
「はーあーいー！」
迎えに来たのは雨崎 楓香。現生徒会長である彼女には、年子の兄がいる。
「ふーかちゃん！」
「くがつちゃん！」
仲良しの二人は、妹同士という訳だ。
「九月ちゃんとデートだ！ どこがいいかな～？」
楓香と九月は腕を組み、子ども時代に戻ったみたいにくっついて行き先を相談し合う。
「シーサイドタウンの駅前で北海道フェアっていうのやってるみたいだよ、くがつちゃん」
「いいねー！ 北海道っておいしいものいっぱいあるけど、寝子島から遠いから憧れちゃうよ～。一度行ってみたいなぁ。クラーク像とか、テレビ塔とか、ラベンダー畑とか」
いつか本物の北海道にも一緒にいけたらいいな。そんな夢を抱きながら、本日のところは疑似体験である。
「おおー、お土産でしか見なかったバターとレーズンのお菓子だー！」
会場は程よく賑わっていた。イクラや鮭、ホタテにカニなどの海鮮料理のコーナーも人気だが、北海道と言えばスイーツも外せない。涼しいがゆえに発展したチョコレート菓子や生キャラメル、名産品のじゃがいもを加工したお菓子や、焼きとうもろこしのお菓子なども人気である。
「すごーい！ ねぇねぇ、ぜんぶ美味しそうだね、ふーかちゃん！」
九月もすっかり目移りし、どれにしようか迷いに迷う。
「あ、これ可愛い！ フリーズドライの甘酸っぱい苺をホワイトチョコでコーティングだって。お姉ちゃん達にもお土産買って帰ろうっと！」
高校生の予算で買える量は限られているけれど、楓香も九月もひとつふたつのお土産とソフトクリームを買って、北海道フェアを満喫した。
「ねーくがつちゃんは何味のソフトクリームにしたの？」
「夕張メロン味。ふーかちゃんは？」
「濃厚北海道ミルクだよ。ちょっとずつ交換して食べない？」
「食べる食べるー。はい、あーん」
ソフトクリームを食べ比べしながら駅前広場に歩いてくると、噴水のそばで猫たちが気持ちよさそうに日向ぼっこをしている。
「ねこー！」
「あれっ、本当だ。ねこちゃんだねー！」
「ねこちゃんだーいすき！！ 九月ちゃんもねこ好きなのー？」
「うん、わたしも大好きー！」
ふたりとも大好きとあっては、愛でずに立ち去る訳には行かないだろう。楓香と九月は猫たちがたむろしている噴水の縁に腰かけて、猫たちに囲まれてソフトクリームを頂くことにする。
猫たちの方も、傍で楽しそうにしている女の子たちにお耳をぴくり、しっぽをゆらゆら。
なにかおいしいものたべてる？
なんて興味津々近づいてくる。
「おいでおいで～」
「あ、お膝に乗って来た。この子は野良かな？ もしかして保護猫ってやつ？」
「ふーかちゃんが美味しいもの持ってるって分かってるんだよ。賢いね～」
「人なつっこいなぁ、ああくすぐったいよっ。だめだめ、ソフトクリームはあげられませんよー」
楓香は最後のひとくちを口の中に入れて、クリームが垂れて甘くなった指も舐める。
すでに食べ終えていた九月は、寄って来た猫たちを片っ端から撫でていたが、灰色のハチワレ猫と白猫を撫でていたらふと何かが脳裏をよぎって、思わず楓香の顔を見た。
「……そう言えば。ねぇねぇ、ふーかちゃん。わたし何か忘れているような気がするなぁ」
「九月ちゃんも？ 実はあたしも。なんていうか違和感っていうか」
「ずっと身近にあったものが、どこかへ行っちゃったみたいな。何だろうね、何だかちょっと……さみしいような気がするよ」
灰色猫は九月にもっと撫でろというように催促し、白猫はどこか寂しい目で楓香の手に鼻先を押し付けている。この子たちもどこかで会った気がするのに思い出せない。
「春だからちょっとセンチメンタルになっているのかなぁ」
九月は首をかしげる。
「もしくは……ねこがかわいいからかな？」
「ねこがかわいいとセンチメンタル？」
「そう。不思議だけど、猫が可愛いとさみしくなるの。だから……いっぱいなでなでしよ！」
どうしてかこのとき、『猫が可愛いとさみしくなる』という九月の謎理論が、楓香の中でも腑に落ちた。
ふたりはなでなで、猫たちを撫でた。
何も思い出せはしないけれど、ふたりでいたら楽しい。今は、それでいい気がする。
旧市街は参道商店街にある蕎麦屋すすきの。
出汁の香り漂う店内で、店主の孫娘・五月の妹であり、看板娘でもある薄野 九月がそわそわしている。
「くーがつちゃーん！」
店の外から待ち合わせ相手の声がして、九月はお気に入りのキャスケット帽を被った。
迎えに来たのは雨崎 楓香。現生徒会長である彼女には、年子の兄がいる。
「ふーかちゃん！」
「くがつちゃん！」
仲良しの二人は、妹同士という訳だ。
楓香と九月は腕を組み、子ども時代に戻ったみたいにくっついて行き先を相談し合う。
「シーサイドタウンの駅前で北海道フェアっていうのやってるみたいだよ、くがつちゃん」
「いいねー！ 北海道っておいしいものいっぱいあるけど、寝子島から遠いから憧れちゃうよ～。一度行ってみたいなぁ。クラーク像とか、テレビ塔とか、ラベンダー畑とか」
いつか本物の北海道にも一緒にいけたらいいな。そんな夢を抱きながら、本日のところは疑似体験である。
「おおー、お土産でしか見なかったバターとレーズンのお菓子だー！」
会場は程よく賑わっていた。イクラや鮭、ホタテにカニなどの海鮮料理のコーナーも人気だが、北海道と言えばスイーツも外せない。涼しいがゆえに発展したチョコレート菓子や生キャラメル、名産品のじゃがいもを加工したお菓子や、焼きとうもろこしのお菓子なども人気である。
「すごーい！ ねぇねぇ、ぜんぶ美味しそうだね、ふーかちゃん！」
九月もすっかり目移りし、どれにしようか迷いに迷う。
「あ、これ可愛い！ フリーズドライの甘酸っぱい苺をホワイトチョコでコーティングだって。お姉ちゃん達にもお土産買って帰ろうっと！」
高校生の予算で買える量は限られているけれど、楓香も九月もひとつふたつのお土産とソフトクリームを買って、北海道フェアを満喫した。
「ねーくがつちゃんは何味のソフトクリームにしたの？」
「夕張メロン味。ふーかちゃんは？」
「濃厚北海道ミルクだよ。ちょっとずつ交換して食べない？」
「食べる食べるー。はい、あーん」
ソフトクリームを食べ比べしながら駅前広場に歩いてくると、噴水のそばで猫たちが気持ちよさそうに日向ぼっこをしている。
「ねこー！」
「あれっ、本当だ。ねこちゃんだねー！」
「ねこちゃんだーいすき！！ 九月ちゃんもねこ好きなのー？」
「うん、わたしも大好きー！」
ふたりとも大好きとあっては、愛でずに立ち去る訳には行かないだろう。楓香と九月は猫たちがたむろしている噴水の縁に腰かけて、猫たちに囲まれてソフトクリームを頂くことにする。
猫たちの方も、傍で楽しそうにしている女の子たちにお耳をぴくり、しっぽをゆらゆら。
なにかおいしいものたべてる？
なんて興味津々近づいてくる。
「おいでおいで～」
「あ、お膝に乗って来た。この子は野良かな？ もしかして保護猫ってやつ？」
「ふーかちゃんが美味しいもの持ってるって分かってるんだよ。賢いね～」
「人なつっこいなぁ、ああくすぐったいよっ。だめだめ、ソフトクリームはあげられませんよー」
楓香は最後のひとくちを口の中に入れて、クリームが垂れて甘くなった指も舐める。
すでに食べ終えていた九月は、寄って来た猫たちを片っ端から撫でていたが、灰色のハチワレ猫と白猫を撫でていたらふと何かが脳裏をよぎって、思わず楓香の顔を見た。
「……そう言えば。ねぇねぇ、ふーかちゃん。わたし何か忘れているような気がするなぁ」
「九月ちゃんも？ 実はあたしも。なんていうか違和感っていうか」
「ずっと身近にあったものが、どこかへ行っちゃったみたいな。何だろうね、何だかちょっと……さみしいような気がするよ」
灰色猫は九月にもっと撫でろというように催促し、白猫はどこか寂しい目で楓香の手に鼻先を押し付けている。この子たちもどこかで会った気がするのに思い出せない。
「春だからちょっとセンチメンタルになっているのかなぁ」
九月は首をかしげる。
「もしくは……ねこがかわいいからかな？」
「ねこがかわいいとセンチメンタル？」
「そう。不思議だけど、猫が可愛いとさみしくなるの。だから……いっぱいなでなでしよ！」
どうしてかこのとき、『猫が可愛いとさみしくなる』という九月の謎理論が、楓香の中でも腑に落ちた。
ふたりはなでなで、猫たちを撫でた。
何も思い出せはしないけれど、ふたりでいたら楽しい。今は、それでいい気がする。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2024年08月04日
- 参加申し込みの期限
-
- 2024年08月11日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2024年08月11日 11時00分
