ハレよ、風吹け　～ぼくらが幸せでありますように～｜リアクション

ハレよ、風吹け　～ぼくらが幸せでありますように～

　これからもよろしくね

　月守輝夜は帰国中の恋人・青木慎之介と超名作のバスケ漫画をアニメ化した映画を鑑賞し、公園へとやってきた。昨年彼がアメリカに留学すると聞いたときは、今生の別れも覚悟した……といったら大げさだが、そう簡単には会えなくなるだろうと思っていたが、意外にも慎之介は日本が長期休暇になるときはほぼ帰国していて、こうして一緒に過ごすことが出来ている。
「今日はうちの学校の卒業式があったんだよ」
　高一の輝夜にとって、卒業式は先輩のための行事で、自分にはまだ遠い話だ。
　慎之介にはもっと遠い話なようで。
「もう三月だなんてなー。あっち行って半年だぜ？」
「慎之介くんは向こうの学校に慣れた？」
「イエス！　やっぱ英語は度胸！　友だちも出来たぜ！」
「友だちって男子？　大人顔負けの可愛い女の子とかいっぱいいたりしない？」
「いるけど俺のことなんか相手にしないって」
「うそ。慎之介くんはかっこいいから心配だよ」
「そんなこと言ってくれんのは月守だけ。むこうじゃ童顔だから女子にはガキ扱いでさ」
　そんなものなのだろうか。彼はこんなに恰好いいのに。ううんそれより。
「私のこと月守じゃなくて輝夜って呼んで。向こうでは女の子も下の名前で呼んでるんでしょ？　マリアとかルーシーとか」
　慎之介はちょっとだけ身を引いて、輝夜の顔をまじまじと見つめる。
「お前……ちょっと嫉妬深くなった？」
「嫉妬くらいするよ。離れてて心配なんだから。ほんとはいつだって、飛んでいきたいんだから……！」
「My Bad」
　慎之介は誠実に頭を下げて謝った。
　公園には……猫しかいない。それを確かめた輝夜は、ぎゅっと慎之介を抱きしめた。