未来の二人の結婚生活｜リアクション

未来の二人の結婚生活

　エプロンドレスを着た巫部紫苑はソファに座っていた。瞼は閉じられ、窓から入る緩やかな風を一身に受ける。
　男性が帰宅した。紫苑の背中に、ただいま、と二回目の声を掛けた。聞こえていないような態度を不審に思い、正面へ回る。
「なるほどね」
　閉じられた両目を見て口元に笑みを作る。鞄をソファの横に立て掛けると隣に座った。
　目を覚まさない紫苑の頬を指で突く。試すように胸の横を指先で押した。穏やかな表情に変化は見られない。
　男性はニヤリと笑って胸を掴むと遠慮なく揉み始めた。回すような動きも加える。
　紫苑の唇が緩く開き、狙っていたかのように男性は唇を重ねた。

　甘いシャンプーの香りで紫苑は目を覚ます。愛らしい顔が間近にあった。気付くと唇を奪われていた。優しい舌の動きを感じて自ら絡ませる。
　糸を引いて離れた女性は愛らしい顔で頬を膨らませた。
「ただいまって何回も言ったのにぃ」
「お帰りなさい」
「遅いよ。でも、キスは良かったよ」
　女性は笑って紫苑のエプロンドレスに顔を埋めた。押された胸が左右に膨らむ。両手を添えて自らの顔を挟み込んだ。
「この柔らかい感触が堪らないんだよねぇ」
「そう言えば、このような状態を夢で見たような……」
「え、そうなの？　夢の中の私はどんな感じだった？」
「現実とは違って相手は男性でしたね」
　朗らかに笑う紫苑に女性はプルプルと震えた。見る間に顔が赤くなってゆく。
「酷いよ。こんな可愛い結婚相手がいるのに」
「夢の話ですよ。現実ではありません。それに私が愛しているのはあなただけですよ」
「じゃあ、証明してよ」
　女性は体当たりをした。紫苑をソファに押し倒し、強引に被さってきた。
　口は早々と女性に塞がれた。
　――これでは文句も言えないですね。この流れは嫌いではないですが。
　目で笑うと女性の舌を受け入れた。気を良くした相手は紫苑のスカートの中に右手を滑り込ませた。擦るような動きにくぐもった声が漏れた。
　紫苑の手も相手の股間を捉えた。パンツルックなので少し力を込めた。
「あ、ああ、ダメ」
「私もあなたの弱いところを知っています」
「私だって」
　お互いに相手の弱いところを責めた。着ていた服は過程で全て脱ぎ去り、全身で絡み合う。そして深く求め、吸って、舐めた。
　二人の全身が艶やかに濡れた。乱れた髪で紫苑が上半身を起こす。最愛の人の艶やかな背中を優しく撫でると、あ、と微かに声が漏れた。
「夕飯も済ませていないのに汗まみれです。今からお風呂に入ります。一緒にどうですか？」
「入る。泡塗れになって、また、してもいい？」
「もっと可愛がってあげます」
　二人は裸のまま腕を絡め、浴室に入っていった。

　シャワーの音に紛れるように喘ぎ声が聞こえる。ドアのガラスに一つになった影がぼんやりと映っていた。
　一時間近い入浴が終わると食卓で二人は仲良く夕飯を楽しむ。体力を使ったこともあって女性はガツガツと食べた。空になった茶碗を紫苑に差し出し、おかわり、と元気な声で言った。
「しっかり食べてください」
「紫苑のご飯は美味しいからね。食べ過ぎると下腹の出っ張りが心配になるけど」
「それならベッドで夜のエクササイズをしますか？」
「ソファの時よりも激しい？」
「そうですね。一杯、愛してあげます」
　紫苑は妖艶な笑みを見せた。女性は蕩けたような表情で、はい、と小さく声を出した。

　その晩、二人はベッドの上で乱れに乱れた。上げる声の大きさに相応しく、身体が何度も跳ねる。相手の内部まで蹂躙しようと強く抱き締めた。舌や指を入れて執拗に中を掻き混ぜる。
　最後は膝立ちで抱き合い、相手の弱い部分を責めて横倒しとなった。全身が心臓になったかのような痙攣を起こし、泥沼に沈むような眠りに落ちた。