転がる不法投棄　from 宇宙｜リアクション

転がる不法投棄　from 宇宙

【９番ホール　リピーター、布団屋のせがれ、また不機嫌な人】

「以前にも同じようなことがあったようなと思えば……やはり」
「またラパーマ星人か！」
　手紙を読み終えた伊賀解理と桜庭円は、前回のアリのときのことを思い返し、ため息をついた。

「今回はにゃーくんも一緒に転送されちゃったねー」
「にゃー」
　部屋で一緒にごろごろしていたところを、飼い猫のにゃーくんともども転送されてしまった円。一方の解理は、前回と同様、部屋で暇つぶしに遊んでいたチューブ付きのトレーニングボールを腕に装着している。
「今回も頑張るとしますか」
　さっそく動き出す解理。地形を把握するため、周囲の探索を開始する。
「とりあえず、ダンゴムシを殲滅させなきゃ帰れないことは分かったけど……」
　学校では円と同じ組、日暮ねむるは、あくびを噛み殺しながら、フェアウェイに座り込む。
「持ち物はキーホルダーの防犯ブザーしかないや。どうしたものかな……」
「僕はにゃーくんと協力して倒すよ。ねーにゃーくん」
「にゃー」
　肩に乗るにゃーくんと頬を擦り合わせる。
　コースを駆ける解理を目で追うねむる。彼女のさらに向こうには、大きな砂場、バンカーがある。さらには林。
「まぁ、地の利を活かせばなんとかなる、か……」
　そうつぶやくと立ち上がる。
「ところでさ、あそこの彼は、なんであんなイライラしているんだろう」
「さあ？」
　円が首を傾げる。ねむるが指差した先には、不機嫌なオーラを全開にして立ち尽くす男がいた。円やねむるの一つ上のクラスで見た記憶があるが、先輩だという以上に、不良然としたスタイルで、声は滅法かけづらかった。
「……んだよ？」古めかしい言葉でいえば、メンチを切る様相で、２人をねめつける。「今俺はイラついているんだ」

　不機嫌な彼の名はナイト・レイヴン。
（俺自身の気遣いの無さ、自分勝手さにイラついてるのさ）
　控えめに心配する２人に背を向けて、広大なゴルフ場、月に照らされ映える富士山を見る。
（もう少し、やりようがあったはずなんだ）
　突っ込んだポケットの中で拳をギュッと握る。今のこのくすぶった感情を打破するには、これからやって来る邪魔者たちに想いのままをぶつけるしかないだろう。

（事情はよく分からないけど、嫌なことがきっとあったんだろうなあ）
　にゃーくんとアイコンタクトして、今はそっとしておこうと決める円。
「ねむい……」
　ねむるがあくびとともに口癖を言った。

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