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ナチュラル・セラピーのおさそイ
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【幸福の別れ道】
なぜあんなにもぎらつく憤怒に満ちた瞳を向けられるのか、高久にも拓郎にも覚えはありません。ふたりは
武道の見た幻像、あるいは悪夢、あるいは彼の潜在意識下におけるおそれ
を知りません。彼はいつだって語らず、頼らず、孤高でした。ゆえにこそ彼が内に秘める脆弱に、ふたりは気付いていません。
「走るぞ!!」
言われるまでもなく駆け出します。女は崩れた道の暗黒の上に平然と立ち、ふたりへ猛然と追い縋ります。握りしめた手斧は赤黒く血に汚れ、刃の光は鈍く、それでもあれほどの憎悪とともに振り下ろされれば人体などたやすく断ち割ることでしょう。
「誰、だ……!? なんであんな、にらまれて……!?」
「どのみちまともな場所じゃないんだ、分かるもんか! とにかく走れ!」
肉の壁から飛び出す奇怪な触手をくぐり抜け、真っ赤に染まった川に跳ねる飛沫と悲鳴を飛び越え、遠く届く赤子の鳴き声を振りほどき、ふたりは駆け抜けます。背後にぴたりとつかず離れず、手斧の女はしかしひとたび立ち止まりでもしたならすぐにも、ふたりへ刃を振り下ろすでしょう。ためらうそぶりなど塵ほどにも見せずに。
「兄貴……、この風景、見覚えある……!?」
「いいや、ない!」
「俺もない、ということは、やっぱり……ここは、武道兄貴の……!」
てん、てんと。足元へ転がるサッカーボールは脈絡もなく、気づいたときには拓郎は足を取られ、地に転げていました。
「拓郎!」
高久も足を止めたのは、拓郎を助け起こすためでもありました。背に迫る冷や汗にじませるほどの憎悪を意識しながら、そうせざるを得ませんでした。
目の前にもうひとり、惑乱する人影が立ちはだかったので。
「武道……!」
「武道兄貴……」
「だって仕方ないじゃないか。
俺たち人間は罪深く手のほどこしようもなく大気を、土壌を、海洋を汚染してしまった今さら解決の姿勢を見せたところで遅いんだそう遅いもう遅い、俺たちはこの業を背負っていきていくしかできないけどこれ以上破壊を広げないために決断することはできるそう決断するんだ、文明を放棄し自然へ回帰することだけが
」
「よせ、武道!」
手刀のひと突きで、彼のろっこんが麻痺させ昏倒させることを高久も知っています。鋭く伸びる指先を、先にアウトドア用品店で手にしたピッケルの柄でいなします。同時に、気づきました。
「狙いは俺じゃない、拓郎か……!?」
前方には奇怪なメッセージに毒され身内の顔も分からないほどに混乱した弟、後方には憎しみに満ちた瞳をひとたびも外さない手斧の女。必然、役割は定まりました。
「拓郎、お前が武道を正気に戻せ。女の相手は俺がする!」
「じ、自分が……兄貴を? 正気に!? どうやって……む、無理だよ!」
「無理でもなんでもやれ、こいつは本気だぞ!」
高久の放った蹴りが武道の上半身裸の腹へ入り、無理やりに間合いを離したところで体を入れかえ、拓郎を背に追いやります。
「自分が、兄貴を……」
頼りない小型のフライパンを握りしめ、武道を見やれば、
「
全て捨て去るんだそれしかないんだ
、俺にはもうそうするしか……警察官になろうだなんて思ったら多くの時間を勉強や訓練に費やすしかないし、寂しいからって誰かの貴重な時間を奪うことはできない。そうだろう? 俺が誰かの重しになるなんて、そんなのダメだ。弟にこんな弱い俺を見せたくない、あいつの未来を阻む障害に俺自身がなってしまうだなんて耐えられない、ああ、懐かしいあの日々にはもう戻れない。高校時代は輝いてた。楽しかったな。まぶしい思い出だ、もう戻れない……
だから全部捨て去るんだ、文明社会に未練はない
」
拓郎は知りませんでした。ひょうきんで、時どきウザ絡みで、けれど芯は強くて頼りになって、実にできた兄だとばかり。こんな弱さを内に抱え込んでいただなんて、思いもよりませんでした。
思いつめて、追い詰められて、打ちのめされて。その隙を突かれたのでしょうか? こんな場所に誘われて迷い込んで、茫洋な奇怪現象にとらわれ虚ろにさまようばかりなんて。
それはそれとして拓郎は覚悟を決め、兄の選択を尊重することにしました。そう、拓郎もまた衣服を脱ぎ去り、おぞましき文明を捨て去り尊き自然の守り人となって、母なる大地への献身を心に抱き、
「俺が……兄貴を、戻す!」
決意が胸を満たすと不思議なほど、力がわき上がるのを感じます。半身を引いて身構え、思いのほか静かな心持ちで見据えます。兄を。
「俺だって、こんな兄貴……見たくないよ。正気に戻れよ、バカ兄貴!!」
世界が真っ赤に染まってゆく。これが世界だ。いつもなにかを傷つけ壊し、踏みにじらずにいられない者たちが跋扈する世界。
そう世の理に対して人類も文明もあまりに無知、あまりに脆弱。運命の枝振りは先細るばかり。人間の下す選択が己以外の何者かを救ったことなどかつて一度でもあったでしょうか? 目先の利便や快楽にとらわれるばかりで大局を見い出す機転に欠け、理性に欠け、目に見えるものすべて貪り尽くさずにいられない、生態系の破壊者。それが人間です。
ああ、たしかに。そのとおりかもしれない。だって俺は、ほら……その、あれだ。そのとおりだし。努力はしてるが、時どき逃げたくなる。たまらなくなるんだ。そんなことじゃまるで無理だってのにな。しばらく泳ぎにもいけてないとか、友だちと会えなくてサミシーとか、言い訳ばっかりだ。自分にその資格も力もないことを認めたくなくて、知りたくなくて、でもなりふり構わず突き進んでいるときだけは、その間だけは忘れられた。俺自身の未熟も、脆弱も。
世に叫ばれるSDGsが問題のすべてを解決するだろうと楽観を述べる学者もいます。土壌・水質汚染や大気変動の解決は飢餓や貧困を解消し、環境保護の重要性を説くことは教育の質を向上させ普遍化し、クリーンエネルギーの確立は大量消費時代における物資の枯渇に歯止めをかけるでしょう。その可能性は否定できません。しかし人類の見識は、その浅慮と短絡が引き起こす事態の進行に対して実に、100年の遅れを取ったと言えるでしょう。もう少しだけ早く気付けたなら、行動に移していたなら、あるいは光明を見い出すことができたのかもしれません。
でも、遅すぎた。遅すぎたんだ……。
分かってた。この奇妙な場所がどんなところであるのか。赤い水たまり……あそこで後輩が、爆ぜた。ワニに食われた誰かは敵だったけど、それでも水面は等しく真っ赤に染まった。あの泣き声。まだ小さかった頃の、たー坊の声だ。俺が川でおぼれて、息ができずにもがいて、苦しくて。それなのに、泣きじゃくる拓郎の声だけははっきりと聞こえて……俺は。ああ、倒れてるみんなは、俺がやった。ろっこんの暴走、だなんてやっぱり言い訳だ。俺がこの手で。俺が鉄の意思の持ち主なら、止めることだってできたかもしれないじゃないか。あの肉の壁みたいな……あの触手。あれは痛かったな。死ぬほど痛かった……。
あの、斧のひと振りも。両手を斬り落とされる痛みも。骨を断つ衝撃と血が噴出する勢いに一瞬驚いて、すぐに耐えられないほどの苦痛に襲われるんだ。
今じゃ夢の中だって分かってる。でも、受けた傷は消えなかった。今までも、決して。いまだにうずくこの痛みが、俺のフツウを壊してしまった。
なら、目の前のふたりは? たかにーちゃんとたー坊は?
もはや引き返せないほどに、人類は大きく舵を切ってしまいました。ひと握りの人々がそれを戻そうとしたところで、波は激しさを増すばかり。やがて岩礁へ乗り上げ、地球という船は海溝深くへ沈みゆくでしょう。もはや理想と現実の隔たりを論じている暇すらありません。破滅は目前に迫っているのです。うながすべきです。あらゆる人々へ、解決の道のりを。すべてを覆して救済へといたる、ただひとつの方法を。
そうだ、そのとおり。俺も、たかにーちゃんも、たー坊もだ。そうなんだ、それこそがみんなを救う唯一の、
「う……うおおおお!!」
「ざまあみろ。お前はもう、なにも選べない。選ばれなかった誰かが死ぬこともなくなるさ。ああ、あの人も……」
武道は惑う意識のなかではっきりと見ました。噴出する奔流の目の覚めるような赤さを。
あの斧が、高久の右腕を断ち落とす瞬間を。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSSS(600)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
ホラー
定員
3人
参加キャラクター数
3人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2024年05月12日
参加申し込みの期限
2024年05月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2024年05月19日 11時00分
参加キャラクター一覧
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