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ナチュラル・セラピーのおさそイ
『ナチュラル・セラピーのおさそイ』
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【打開】
呆然と拓郎は立ち尽くします。兄たちの叫びもうめきも、耳にこびりつくよう。
「ぐ、ううううっ」
「みんなが幸せになれるとでも思った? お前の幸せは誰かの不幸せなんだよ。よかったな、これでお前はもう、誰かを不幸にすることもない」
あまりにも現実離れして、頭がぼんやりとして。苦悶に顔を歪めながらも、決して膝をつかない高久を今さらながら誇りに思い、
「俺だ。俺がふたりのフツウを……壊した。俺が……俺がああああああ」
「兄貴……!!」
頭を抱え振りたくり、小刻みに震え身もだえする武道を、奥歯が砕けそうなほどに噛みしめ見据えます。
「た、拓郎……武道を、正気に戻せ! この女を止めるには、武道の……ろっこんが、必要だ」
腕一本を失ってなお、高久は一歩も引きさがらず。身をかわしながら気丈にも拓郎へ声をかけました。ああ、なんて。なんて、なんてこの兄は強いのだろう。
武道だって。
「俺が、俺が拓郎のフツウを。俺が……」
彼がこんなにも繊細な心を抱え、追い詰められていたのだと拓郎は知りませんでした。明るい笑顔の下に苦しみを覆い隠していたなんて。
しかしそれが人類の背負ってしまった罪、贖うべき痛みなのです。振りかえることもなく顧みることもなく破壊を広げてきたツケを支払う時が今、
「違う!!」
……人間という生き物は自制できず、ブレーキを持たず、激突し破滅するまで己の行いに気づくことさえ……
「違う、兄貴は不器用なだけなんだ。やっと分かった。兄貴は、強い!」
人の、過ち……過ちが、世界を、
「たったひとりで……戦ってたんだ」
目の前の兄の、動揺しやみくもに繰り出した手刀から身をひねってかわしつつ、なおも拓郎は確信します。達成すべき目標があり、そこへ向かってどこまでも邁進できる。まぎれもなくそれは、武道の強さでしょう。それを決して見せることがなかったのは、武道の優しさでしょう。兄弟や周りの誰もかれへも向けられた、強く正しい愛情でしょう。ただどうにも、すこうし、ブレーキが壊れかけだっただけ。それに気づかなかっただけ。
まだ間に合うと、光を失わぬ高久の瞳が告げています。
「拓郎を、俺が! フツウを! ああああああ!!」
「でも、兄貴っ……いい加減、目覚ませよな!」
フライパンを一撃。あまりに軽い衝撃はさしたる効果もなし、反撃とばかり伸びる手刀がかすめた肌をびりびりと痺れさせ、飛び退いたところに。
「!?」
脈絡もなく。どこからともなく、てん、と目の前に転がったボール。反射的に身体が動きました。フライパンを投げつけて隙をこじ開け、駆け寄ります。
「この、馬鹿兄貴……武道! 戻ってこい!!」
体育の授業で、クラスメートといっしょにボールを追いかけた経験が活きたのでしょう。思いきり蹴り出すと、ボールは回転とカーブを描きながら鋭く飛び、武道の顔面へ。ずばん、と小気味よく叩きこむと、
「兄貴! だ、大丈夫か? おい!」
「……ぶ、じゃ……」
「なに!? なんて」
「大丈夫じゃ、ない……」
頬を伝った雫を、拓郎は呆けたように見つめました。彼のそんな顔を、拓郎は一度だって見たことはありませんでしたから。
「……たすけて」
衝撃に目を覚ますとすぐに、悔やんでいる暇はないのだと悟った。眼前に瞳を見開いた拓郎。向こうには見覚えのある、ああ、いつか悪夢に見た恐怖と痛みの象徴たる、あの手斧のぎらつき。そして、
「たかにーちゃん!」
「やっと……戻ったか。この馬鹿。心配、させるな……」
青ざめた高久にはもはや用はないとばかり、その脇をすり抜けた女の憎悪は今、拓郎へと向けられている。肉色の壁から伸びる触手も、赤い水たまりにちらと見える牙も、空間のあらゆる害意が拓郎へ集められているかのよう。
そして審判の時は誰にも等しく訪れることでしょう、破局的な飢餓に気候変動、天変地異が人類という名の咎人に断罪を下し
「うるさい!!」
そうはさせない。
ちょっとばかり失敗したけど、やらかしたけど、俺はたー坊の兄貴なんだ。たかにーちゃんの弟なんだ。
「あれだけ殺して、まだ殺そうっての、お前は!」
あの女。あの斧で斬られた痛み、まだ忘れてない。悪かったって気持ちもある……俺の選択したことで、この人の大切な誰かは消えていった。すまない、って思う。
けど、それとこれとは話が別だ!
「悪いけど……眠ってくれ」
右手が自然と手刀を形作る。今まさに拓郎めがけて斧を振り下ろそうとする腕を突く。痺れて取り落とした斧ががらんと床に落ち、俺と斧の間を行き来した女の怯えたような目と目が合いながら、胸元へ突き入れた。
「……ハイ。タイヘンモウシワケゴザイマセンデシタ……」
実に見事な、ピッシーっとカンペキなまでの土下座をキメながらに武道は、消え入りそうに言いました。
気がつけば、武道の部屋。奇妙なショッピングモールでも、教会や視聴覚室のような場所でもなく、ましてや武道のトラウマを凝縮したようなあの空間でもありません。どうやら、現実の世界へと無事に帰還を果たしたようです。
武道の説明はそれなりに長くなりました。警察官になるための勉強や訓練を重ねるうち、あまりにものめり込んでしまい、自分をおろそかにしてしまったこと。ストレスや鬱屈するものを払拭するのに一役買っていた水泳も、気の置けない友人たちとの語らいも、弱みを見せたくないがために遠ざけて、離れているうちにどんどんと心の奥へどす黒いものがたまり、やがて背負った重圧に押し潰されて……すべてが虚ろに見えてしまったこと。
ぽん、と高久はかしこまる彼の頭へ手のひらを乗せました。
「キャパオーバーだ。加減しろ馬鹿」
「まことにそのとおりでして……ハイ」
苦笑いまじりに微笑む彼の腕は、もとどおり。
悪夢、だったのでしょうか。すべては幻だったのでしょうか。けれど武道は上半身と靴も靴下もの脱いだままだし、高久や拓郎の着ていたシャツもジャケットも見当たりません。あの場所へ置いてきてしまったのでしょうか。
とはいえ、少なくとも起こったことは兄弟三人にとって、共通の体験であるようです。
「たー坊も、すまん。巻き込んじゃったな。色々学んでるうち、どうしても足りないものばかり見えてきてさ。ついのめり込んで……情けないよな、たー坊にはそんなとこ、見せたくなかったんだけど」
「いいよ、別に……というか自分、兄貴が警察官目指してるなんて知らなかったんだけど」
「アレ。い、言ってなかったっけ」
「聞いてない、初耳……まあ、もういいよそれも。自分だって内緒にしてること、あるし」
「ええ、なに? なにナニ? たー坊なに、おせーておせーて!」
「教えない。その時になったら驚け」
誰にでも秘密はあるものです。拓郎のそれはまあ、ちょっとしたことではありますけれど。
「なんにせよ、だ」
高久は弟たちの肩をがば、とひと息に抱き寄せて、にかっ!
「これで懲りたろ、武道。辛くなったら俺たちを頼れ。遠慮なんてするな、兄弟なんだからな」
「ハーイ……」
「お前もだぞ、拓郎」
「うえっ? じ、自分も?」
「ひとりで突っ走るな。家族でも友だちでも彼女でも、頼れる相手に頼れ。俺もそうする。おたがいに気を付けるとしようぜ。な」
下の弟ふたりがこくこくこくりとうなずくと、高久は満足そうに白い歯を見せて笑みを深めました。
そうして、誰もが生きてゆくのでしょう。世の中って、人ひとりで生きてゆくにはちょっとばかし、冷たすぎますから。誰かと寄り添って、助け合って、どうにかこうにか暮らしてゆくのでしょう。時にぶつかり合ったり、争ったりもするけれど……少しずつ、けれど着実に、前へ前へと歩んでゆくのでしょう。
「さて、お前ら腹減らないか? せっかく集まったんだ、晩飯でも食いにいこう……ん?」
と。
てん、てん。てん。ころころ、ころり。ふと部屋の中を転がったサッカーボールを見つめて、三人はそろって首を傾けます。
「……この、ボール」
拓郎のつぶやきをよそに、ころころころ。ボールは転がり、パソコンデスクの足にこつんと当たって止まりました。
さして広くもない、シーサイドタウンのアパートの一室です。投げ入れる誰かがいようはずもありません。そもそもボールがやってきた向こうには、こちらと隣室を隔てる壁があるのです。
「どこから……いや、どうして」
ずず。ずずず。ずるずる、ずるり。ずずずず。コンクリートの外廊下を、石膏の重たいなにか……たとえばどこかのショッピングモールに飾られているような、あざとい造形のマスコット人形のオブジェかなにかが、引きずられているような。そんな音が次第に近づいてきて、ずるずるずる、ずる、ずずず。やがて部屋の扉の前でぴたりと止まり、おとずれた不気味な沈黙に兄弟たちは思わず顔を見合わせ、眉をひそめます。拓郎の額には冷たく不快な雫が浮かび、流れ落ち
ました。
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あとがき
担当マスター:
墨谷幽
ファンレターはマスターページから!
墨谷幽です。『ナチュラル・セラピーのおさそイ』、リアクションをお届けいたします。
ちなみに本シナリオはフィクションであり、実在する人物や団体とは一切関係ありまセン。ナチュラルセラピーってこーいうものじゃないと思う。
今回はプライベートシナリオの申請、まことにありがとうございました!
ご兄弟の、特に武道さんには小さくない転機となるお話となりそうで、墨谷におまかせいただいたこと、とっても光栄です。
ちなみにホラー的なオチはあくまで演出で、なにか禍根が残ったりしたわけではないと思いますのでご安心ください。ボールやらマスコット人形は記念に置いといてもらっても構いませんが、おまかせです。
なにか少しでも、心に残るものがあれば、楽しんでいただけておりましたら、幸いです。
それでは、今回はご参加いただきましてありがとうございました。
また次のシナリオでお目にかかれますことを、心よりお待ちしております~。
お疲れさまでした!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSSS(600)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
ホラー
定員
3人
参加キャラクター数
3人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2024年05月12日
参加申し込みの期限
2024年05月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2024年05月19日 11時00分
参加キャラクター一覧
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