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Pioggia Capriccioso
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読み終わった本を片手に、刀は外へ出ると黒い傘を開いた。雨脚は弱まってきているものの、傘を差さなければならない程度には降っている。そう言えば、部長は傘を持っていただろうかと、先に部室を出た小淋の姿を思い出そうとするが、意識の半分以上が本に向けられていたためによく思い出せない。濡れていなければ良いがと思いながら帰路へと爪先を向けたとき、刀の耳に細い旋律が届いた。
雨の音の合間に聞こえて来た歌声と、聞いたことのない美しい調べに、目を閉じる。喜び、悲しみ、労わり、慈しみ、孤独 ―― 複雑に絡み合った音と感情の中に、一際強烈な想いを感じる。闇色をした孤独は冷たい悲しみを纏い、周囲からの優しさに戸惑いながらも小さく丸まっている。
ピアノの音が、刀の胸に深く突き刺さる。この気持ちを全て言葉に出来るのかと言われれば、無理だろう。けれど、心の底から湧き上がるこの感情を、奏者に伝えなければならない。義務にも似た強い感情に突き動かされて、刀は音楽室へと走った。傘についた雫を乱暴に払い、滑る廊下を疾走する。音楽室の前で一旦止まり、呼吸を整えてから中に入ると、刀の目はピアノの前に座る少女へと吸い込まれた。
優妃が顔を上げ、灰色の瞳が一瞬だけ刀を見上げる。色素の薄い瞳に宿る濃い感情の渦に、刀は息を呑んだ。音の波が刀の心を奪い、暫らく呆然と立ち尽くす。曲が終わるまでの間、身動ぎすることなく、音となって流れてくる彼女の心の声を聞き続けた。
静かに演奏が終わり、今感じている想いを込めた拍手を優妃へと送る。これだけの演奏が出来る奏者なら、何かを感じ取ってくれるだろう。優妃が刀を見つめ、灰色の瞳に引き寄せられるように刀がピアノの隣へと歩いて行く。
「いい演奏だった、ありがとう」
心を込めて言葉を紡ぎ、手を取る。優妃の視線が繋がれた手へと向けられ、刀の黒い瞳を見上げる。困っているような表情が徐々に赤くなっていき、灰色の瞳が潤んでいくのを見ながら、刀もつられて顔を赤くすると慌てて優妃の手を離した。
「……むっつり」
後方から小さな攻撃が飛んでくる。素早く後ろを振り返れば、私は何も言っていませんよとアピールするかのように涼しい顔で拍手をしている月詠の姿があったが、声は誤魔化せない。月詠が立ち上がり、スケッチブックから数枚破ると、後ろにサラサラと何かを書き付けてから優妃に手渡す。寂しそうな部屋の一室、キラキラと輝く衣装を纏った華やかな絵、動物達の輪の中心で幸せそうに眠る少女の絵 ―― その後ろには“秘めたる感情に言葉は要らぬ。魂の鼓動を響かせろ!”と力強い字で書かれていた。
何かを言おうとする優妃を押し留め、月詠はヒラリと手を振ると背を向けた。優妃に宿る芸術家の感性は嘘をつかないだろう。今は寂しい音しか紡げなくても、近い将来もっと色々な音が出せるようになるはずだ。何しろ、優妃の周りには彼女の心の音に惹かれた人が沢山いるのだから。……そして月詠もまた、彼女の音に惹かれ、この先紡がれるであろう未知の音色に期待している一人だ。
「その服は、私がデザインした。気に入ってくれたら嬉しい」
月が月詠の描いた絵の一枚を指差すと、ほんの少しだけ口の端を持ち上げて微笑み「また明日」と声をかけてから背を向ける。明日教室で会ったら、挨拶をしてみよう。言葉が返ってくるかどうかは分からないが、気持ちはきっと返って来るはずだから。
月詠の地味に心に刺さる一撃に暫らく黙っていた刀だったが、白髪の芸術家二人がいなくなったところでやっと優妃に向き直った。
「この演奏なら、言葉は余り必要ないかもしれないな。相手に言葉で伝えるのではなく、何かを感じさせる事でしか伝えられないものは確かにあるから。それは音楽だったり絵だったり、歌や料理だったり、俺がやってる剣術だってそうだ」
長い前髪の間から見える鋭い眼光を意識して弱めながら、刀は力強く言った。
「でも、それと同じ様に言葉を交わすことでしか伝えられない物がある。だから、言葉を交わす事が苦手だとしても、それは諦めないで欲しい」
言葉がなかなか紡げないなら、いくらでも待つ。焦る必要はない、ゆっくりでも前に進めれば、きっと今とは違った景色が見えてくるから。
「俺は他の人達みたいに、音楽や歌や絵で君と話をする事は出来ないけれど、また話に来るよ。……俺は
御剣 刀
。君の名前を聞いても良いかな?」
優妃が顔を上げ、唇を薄く開いたまま苦しそうに眉を寄せる。微かな震えに気付いた深雪が助け舟を出そうとした時、優妃の細い指が深雪のシャツをギュっと握り締めた。
「御陵 優妃……」
勇気を出した一言に、刀が優しく微笑む。深雪は明後日の方角を見ながら、優妃の手にそっと触れた。シャツを掴んでいた手が深雪の手へと移り、縋るように握られる。勇気付けるようにキュっと握れば、優妃の震えが弱まった。
「……私、話すの……苦手だけど……また、お話……してくれる?」
勿論という意味を込めて微笑み、剣は「また明日な」と爽やかに言って手を振った。小淋が一心不乱に楽譜に何かを書いているのを見ながら、彼女もまた、優妃の音楽に惹かれてやって来たのだろうかと考える。
「ねぇ優妃、寝子島クラシック同好会に入ってみない?」
赤毛の三つ編みを揺らしながら、るるかが元気良く声をかけ、簡単に同好会の説明をすると、自身の持つフルートを優しく撫ぜた。
「私ね、素人なの。響也を追っかけて押しかけたものの、技術や情熱じゃ経験者に敵わなくて、足引っ張ってるんじゃないかって内心不安で。……でもね、皆で音を出すのはすっごく気持ちいい。音が一体となって調和して、それを肌で感じる事が出来るから」
先ほどの演奏でも、るるかのフルートは、お世辞にも上手いとは言えないものだった。瑠奈や響也に導かれるようにして、どうにか即興曲に音を合わせる事が出来ていた。けれど、音は技術だけが全てではない。優妃と仲良くなりたい願いや、同好会の皆を大切に想う気持ち、勿論響也への想いも、全て込めた音は美しかった。
「私……皆と、同じ音が……出せないの……」
キョトンとした顔のるるかが首を傾げた時、響也の大きな手が優妃の頭へと伸びた。ビクリと肩を震わせた優妃だったが、柔らかく頭を撫ぜる手に力を抜く。
「気が向いたらで良いから、来てくれると嬉しい。また優妃と音を合わせてみたい」
小淋が最後の音符を書き終わり、楽譜を持って立ち上がる。まだタイトルのついていないその曲を、優妃に差し出す。
「……これ……作った、の?」
小淋は頷くと、丁寧な文字で『今度一緒に演奏してくれますか?』と書いた。優妃が楽譜を一通り読んだ後で小淋に返し、躊躇うように視線を足元に落とす。
「私の……音で……良い、なら……」
「小淋が作った曲? 見せてっ!」
るるかが楽譜をじっくりと見ている隣で、優妃が深雪と繋いでいない方の手で触りの部分を少しだけ奏でる。小淋が目を丸くしながら『暗譜されたんですか?』と聞くと、優妃が恥ずかしそうに目を伏せながら頷いた。
「あたし、一生懸命練習して、今よりもっとずっと上手くなるから、また一緒に演奏しよう! 小淋の曲も演奏したいし、クラ同にいつでも遊びに来て。約束!」
差し出したるるかの小指に、優妃の小指が絡まる。るるかは飛び切りの笑顔を浮かべると、ビシリと深雪に人差し指を向けた。
「きみも一緒に来てよね、そこのイケメ……ン? メン?」
「
霧生 深雪
っ! 男だっ!」
性別への疑問を呈され、深雪はるるかを睨んだ。何で俺がと言いそうになって、寸でのところで言葉を飲み込むと、小さく溜息を吐いた。優妃と繋いだままの手をチラリと見てから、肯定も否定もしないままプイと視線を逸らす。
また一緒に演奏しよう。そう約束して、クラ同の面々が音楽会館へと向けて歩き出す。今日は小淋の作った曲を皆で演奏してみるつもりだった。日和と響也はヴァイオリン、春哉はトランペット、るるかはフルート、ピアノはシグレで、小淋が指揮者だ。
「優妃、近いうちに来てくれると良いね」
明るく言うるるかに、響也が低く「あぁ」と答えた後で、ふと足を止めると彼女の持つフルートに目を向けた。
「そう言えば最上、前より大分良い音が出せるようになったな」
響也の爽やかな笑顔に、るるかの心拍数は跳ね上がり、瞳にはハートが浮かぶのだった。
賑やかなクラ同の面々から一歩遅れて、ヴィオラを丁寧にケースに仕舞った蓮が、深々と頭を下げてから音楽室を後にする。残された修は、無言のままピアノの前に座る二人をそのままに、窓を開けた。相変わらずドンヨリとした雲が立ち込めてはいるものの、雨はいつの間にか上がっていた。
暫らく外の風を音楽室に入れた後で、修は窓を閉めると優妃の前に立ち、グランドピアノの柔らかな曲線を指でなぞった。
「一曲リクエストしてもいいか?」
優妃が頷くのを待ってから、修は言葉を続けた。
「今の君の気持ちを聞かせて欲しい」
灰色の瞳が揺れ、優妃は深雪と繋いでいた手を離すと、鍵盤の上に乗せた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
雨音響希
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
学校生活
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2013年11月28日
参加申し込みの期限
2013年12月05日 11時00分
アクション投稿の期限
2013年12月05日 11時00分
参加キャラクター一覧
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