- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
MODERN LOVE／バレンタインデーくれー知ってるよ！
間もなく訪れた第三の人物に、さゆるは声が漏れそうになった。
マニッシュショートにした明るい茶髪、透き通るほど白い肌にすらりとした立ち姿、沙央莉も華やかだが彼女も勝るとも劣らない。ただそこにいるだけなのに、後光が差しているように錯覚してしまう。
同居人のじゅんはあまりテレビを観ない。誤解のないように言っておくと毎日テレビは灯（つ）いてはいるが、HDD録画やBlu-rayないしDVD、それもほぼアニメの再生に使われるだけだ。さもなくばゲームか。実写映像と言っても声優バラエティかアニメの実写版、まれにニュースが流れる程度である。
そんなさゆるでも彼女のことは知っている。文梨 みちるではないか。元キャバ嬢、それもトップクラスのキャバ嬢という異色の経歴をほこる敏腕弁護士で顧問先多数、テレビのレギュラー番組出演、講演会や雑誌連載もこなすまぎれもないメディアの寵児である。セレブリティという呼び名は彼女のような人間にこそふさわしかろう。まさかここで実物を目にするとは。
「文梨 みちる……先生ですよね」
「はい、『プロムナード』顧問弁護士の文梨です。よろしくお願いします」
「文梨先生は、縁があって顧問してもらってるんですよー」
アーナンドも誇らしげだ。
それにしても驚きだ。見知っただけでも沙央莉にみちる、そしてもちろんじゅんもいる。一地方のキャバクラというのに、なんとまばゆい顔ぶれか。『プロムナード』が異様なのか、それとも世のキャバクラというのはどこもこうなのか。
じゅんは私のこと、『美人、素敵』って言ってくれるし、おそらく男受けのいい容貌なのだろうけど――。
ここにあっては大勢のひとりでしかないのかもしれない。
でもそれは、とても楽なことのようにも思えた。
テーブルの向こうにはアーナンド、みちる、沙央莉。左からこの順だ。面接がはじまった。
「それでは志望動機、聞かせてくれるかしら？」
リードを取るのも沙央莉らしい。手慣れた口調で問いかけてくる。さゆるは、湿った手のひらを膝にこすってから言った。
「じゅ……まみ子さんに紹介されたというのもありますが、自分を変えたい――そのきっかけになればと思って」
「変える？」
もう少し詳しく聞かせてよと沙央莉が言う。
「卒業予定ですが高校にはあまり顔を出しませんでした。こもりがちというか、対人関係が苦手で」
対人関係が苦手、という言葉に難がつくのではとさゆるは思った。「接客業でそれはねえ」と沙央莉あたりが言うかもと予想したが意外にも、
「泰葉（やすは）と似たタイプかもね。あいつなんか元ヒッキー（引きこもり）だし。あ、ごめん泰葉ってのはもう辞めたけどずっとトップだった子」
というのが沙央莉の反応だった。なお「いまは私がナンバーワンだから」と付け足すのも忘れなかった。
「沙央莉さん成長しましたねー」フフフとアーナンドが笑った。「前は『数字上は泰葉かもしれないけど私が真のトップだから』って言ってたのに」
「そりゃどうも……って、あたしの面接じゃないでしょ店長っ」
沙央莉は犬みたいにうなった。
まあまあ、とみちるがうまくいなして言った。
「苦手意識があるほうが上達するものよ。それに、むしろクールなキャラがお好みのお客様も多いから」
「だよね」沙央莉が相づちを打った。ふたたびみちるから質問だ。
「シフトの希望を聞かせてくれる？」
「大学に合格した場合は、学業に支障がない範囲で。そうでない場合は最大限」
「問題ないです。大学生のスポットさん、だいたいそんな感じですしー」
アーナンドがうなずいた。沙央莉が言う。
「できるだけレギュラーに近いと助かるわ。あんなのヤツ、『あーしバカなんで女子大生のフリするのもう限界っす～』って泣きを入れてるから」
あんなという名前の嬢もいるのだろう。
「お酒のこと聞いたほうがいいんじゃない？」
沙央莉が言うも、「まだ十八歳だし」とみちるが応じた。だが、
「大丈夫です」
さゆるは答えたのだ。
「そこそこ強いと思います。褒められたものではありませんが、過去に薬物やアルコールの経験はあります」
いまではもう遠い話だが、かつてさゆるは自傷行為のセックスに溺れていたころ、相手に勧められるままに深酒していたものだ。当時は、あんな状態がずっとつづくと思っていた。
「過去は過去です」アーナンドが言った。「うちは法律厳守だから二十歳まではお酒飲まなくていいですよ。というかやめましょうね。体によくないです」
ここでみちるが意外な提案をした。
「着てみない？ 仕事着」
マニッシュショートにした明るい茶髪、透き通るほど白い肌にすらりとした立ち姿、沙央莉も華やかだが彼女も勝るとも劣らない。ただそこにいるだけなのに、後光が差しているように錯覚してしまう。
同居人のじゅんはあまりテレビを観ない。誤解のないように言っておくと毎日テレビは灯（つ）いてはいるが、HDD録画やBlu-rayないしDVD、それもほぼアニメの再生に使われるだけだ。さもなくばゲームか。実写映像と言っても声優バラエティかアニメの実写版、まれにニュースが流れる程度である。
そんなさゆるでも彼女のことは知っている。文梨 みちるではないか。元キャバ嬢、それもトップクラスのキャバ嬢という異色の経歴をほこる敏腕弁護士で顧問先多数、テレビのレギュラー番組出演、講演会や雑誌連載もこなすまぎれもないメディアの寵児である。セレブリティという呼び名は彼女のような人間にこそふさわしかろう。まさかここで実物を目にするとは。
「文梨 みちる……先生ですよね」
「はい、『プロムナード』顧問弁護士の文梨です。よろしくお願いします」
「文梨先生は、縁があって顧問してもらってるんですよー」
アーナンドも誇らしげだ。
それにしても驚きだ。見知っただけでも沙央莉にみちる、そしてもちろんじゅんもいる。一地方のキャバクラというのに、なんとまばゆい顔ぶれか。『プロムナード』が異様なのか、それとも世のキャバクラというのはどこもこうなのか。
じゅんは私のこと、『美人、素敵』って言ってくれるし、おそらく男受けのいい容貌なのだろうけど――。
ここにあっては大勢のひとりでしかないのかもしれない。
でもそれは、とても楽なことのようにも思えた。
テーブルの向こうにはアーナンド、みちる、沙央莉。左からこの順だ。面接がはじまった。
「それでは志望動機、聞かせてくれるかしら？」
リードを取るのも沙央莉らしい。手慣れた口調で問いかけてくる。さゆるは、湿った手のひらを膝にこすってから言った。
「じゅ……まみ子さんに紹介されたというのもありますが、自分を変えたい――そのきっかけになればと思って」
「変える？」
もう少し詳しく聞かせてよと沙央莉が言う。
「卒業予定ですが高校にはあまり顔を出しませんでした。こもりがちというか、対人関係が苦手で」
対人関係が苦手、という言葉に難がつくのではとさゆるは思った。「接客業でそれはねえ」と沙央莉あたりが言うかもと予想したが意外にも、
「泰葉（やすは）と似たタイプかもね。あいつなんか元ヒッキー（引きこもり）だし。あ、ごめん泰葉ってのはもう辞めたけどずっとトップだった子」
というのが沙央莉の反応だった。なお「いまは私がナンバーワンだから」と付け足すのも忘れなかった。
「沙央莉さん成長しましたねー」フフフとアーナンドが笑った。「前は『数字上は泰葉かもしれないけど私が真のトップだから』って言ってたのに」
「そりゃどうも……って、あたしの面接じゃないでしょ店長っ」
沙央莉は犬みたいにうなった。
まあまあ、とみちるがうまくいなして言った。
「苦手意識があるほうが上達するものよ。それに、むしろクールなキャラがお好みのお客様も多いから」
「だよね」沙央莉が相づちを打った。ふたたびみちるから質問だ。
「シフトの希望を聞かせてくれる？」
「大学に合格した場合は、学業に支障がない範囲で。そうでない場合は最大限」
「問題ないです。大学生のスポットさん、だいたいそんな感じですしー」
アーナンドがうなずいた。沙央莉が言う。
「できるだけレギュラーに近いと助かるわ。あんなのヤツ、『あーしバカなんで女子大生のフリするのもう限界っす～』って泣きを入れてるから」
あんなという名前の嬢もいるのだろう。
「お酒のこと聞いたほうがいいんじゃない？」
沙央莉が言うも、「まだ十八歳だし」とみちるが応じた。だが、
「大丈夫です」
さゆるは答えたのだ。
「そこそこ強いと思います。褒められたものではありませんが、過去に薬物やアルコールの経験はあります」
いまではもう遠い話だが、かつてさゆるは自傷行為のセックスに溺れていたころ、相手に勧められるままに深酒していたものだ。当時は、あんな状態がずっとつづくと思っていた。
「過去は過去です」アーナンドが言った。「うちは法律厳守だから二十歳まではお酒飲まなくていいですよ。というかやめましょうね。体によくないです」
ここでみちるが意外な提案をした。
「着てみない？ 仕事着」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2024年02月20日
- 参加申し込みの期限
-
- 2024年02月27日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2024年02月27日 11時00分
