幽霊猫とお化けの国：最終幕　旅の終わりと最後の戦い｜リアクション

幽霊猫とお化けの国：最終幕　旅の終わりと最後の戦い

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「終わったのだな、これで」
　住民たちの喜びの声の中で、クリストファーが感慨深げに呟いた。
　そしてラグドール号の仲間たちへと向き直ると、ボウ・アンド・スクレイプの姿勢を取る。
「無事に終わらせることができたのは、ここまで旅を共にしてくれた皆のおかげだ。すべてのゴーストリアの民を代表して、礼を言わせてくれ」
　誰かが、クリストファーに応えようとしたその時だった。
　ゴーストリアの大地から、天まで届く銀光のカーテンが広がっていった。
　それはきっと、ウィルの復活によって生じた歪みが、解消されたことを示すものだったのだろう。
　ゴーストボディの面々の胸に、まるで錨が水底から引き上げられていくみたいに、ゴーストリアが遠のいていくような感覚が起こったから。
『わたしたち、もとにもどるみたい』
　海がスケッチブックを見せると、クリストファーは小さく息をのんだ。
「あなた達、もうお帰りなの？　でもこれで、少しは騒がしいのもなくなるかしら？」
　孤島の洋館で初めて出逢った時のような調子で、メモワが言う。
「……ドールたちが、楽しかったと言ってるのだわ。これでもう戦いにひっぱりだされずに済むと思うと、わたくしはせいせいするのだけど！」
　調子とは裏腹に、声は少しだけ震えていて。これみよがしに髪をいじって隠れた彼女の表情は、よく見えなかった。
「……」
　いつもは身振り手振りのうるさいピエロが、静かに風船をいじっていた。ねじって、結んで、出来上がった風船の花を、別れの言葉の代わりに差し出す。
「……そ、っか。あなたたちは、元々ゴーストなわけじゃないものね」
　寂し気な声で呟いて、アマキは目を伏せた。それから深呼吸して、めいっぱいの笑みを浮かべる。
「あなたたちのおかげで、私は入り江の外の世界を見ることができた。カルカドロの気持ちを知ることもできたわ。……ありがとう」
　そして、微かな声で歌を口ずさみ始めた。
「貴公らのおかげで、同胞たちを守ることができた。取り戻すことができた。短い間だったが、貴公らと共に戦えたことを誇りに思う」
　剣を掲げて、戦士は瞑目した。
「あの浜辺でそなたらと出会えたことは、我輩が生きてきた中で最大の幸運だった。これまで旅を共にしてくれたこと、ゴーストリアを救ってくれたこと……本当に感謝する。どれほど言葉を連ねても、この想いは言い尽くせない」
　そして、と。
　クリストファーは、皆に向かって笑いかけた。
「そなたらとの旅は、とても楽しかった」
　その言葉に、夏朝が一歩前に出て応える。

「僕も、色々あったけど……楽しかったよ。また会えたら嬉しいな」
　ね、と振り返れば、サキリがそれにうなずいた。
「また何処かでゴースト達と会えれば、嬉しく思うよ」
　さらさらとペンを走らせた海が、ゴーストたちへスケッチブックを向けた。

『つぎにあえたら、そのときは』
　スケッチブックをぺらりとめくる。
『へいわにたのしく、すごせたらいいね』
　クリストファーが目元を抑える。けれどその口元は、確かに笑みを描いていた。
「……そうだな。その時は、平和なゴーストリアを案内させてもらいたいものだ」
　それじゃあ、また。
　これっきりの別れではなく、いつかまた再会できたらと。最後に交わしたのは、そんな祈りのこもった言葉だった。

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