【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！｜リアクション

【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！

　程よく力を抜いた状態で梓智依子はひた走る。同じペースを維持して二十キロ地点を超えた。
　ここまで何人かに抜かれた。多少の焦りを覚えたものの追走はしなかった。
　沿道の花々が心を和ませる。深く息を吸うと仄かに甘い香りが胸いっぱいに広がって安らかな気分になった。
　――花のおかげで自分のペースを続けられる。こんな華やかなマラソンは初めてかもしれない。
　穏やかな表情で智依子はマラソンを楽しんだ。

　ゴールが見えるところまで走ってきた。スタートの時にはなかった横断幕が見られた。立てられた幟には個人や大学名が書かれ、熱の籠った声援がグラウンドを飛び交う。
　その中、智依子は幼い声を聞いた。
　――この声は、どこから。
　斜め前の位置に祖父母と楓を見つけた。目が合うと、ママがんばれ！　と全身を使って叫んだ。
　智依子は笑顔を見せて加速する。驚いたように目を開き、更に勢いに乗った。
　――信じられない。こんなに身体が軽いなんて。
　風を切るような腕の振りで智依子はゴールに駆け込んだ。