【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！｜リアクション

【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！

　霧生愛は走りながら遠くを眺める。
　――浅見先輩、もう見えなくなったね。
　半ば呆れたような顔で走る。無理に追い掛けず、自分のペースを維持した。
　その中、目が左右を見た。沿道に観客がいない。妙に静かで走る音が大きく聞こえた。
　――マラソンのルートなのに、どうしてこんなに静かなの？
　突然、何かが破裂したような音がした。出所を探るような目はあり得ない物体を見つけた。
　視線が明らかに上がる。雑居ビルを超えた高さの植物が触手をうねらせ、気紛れに路面に叩き付けた。
　――異世界に迷い込んだ？
　頭を傾げながら視線を下げた。植物の脚の部分は根でスカスカ。愛は上体を低くして中に入り込んだ。触れないようにして足早に通り抜けた。
　迎え撃つように毒々しいキノコ達がわらわらと湧いた。走る愛を取り囲むようにして襲ってきた。
「鬱陶しいわ」
　ピボットを応用したターンを決めて即座にダッシュへ繋げる。機敏な動きで抜き去ると巨大ホウセンカの洗礼を浴びた。四方から飛んでくる種を、ちょっと！　と叫びながら辛うじて躱す。
　無理な姿勢が祟って身体は横へ流れた。片脚で踏ん張って転倒を防ぐ。その拍子に浅見柚乃の姿を見つけた。
　枯れ木を持ち、襲い掛かるキノコ達を次々に打ちのめす。ただし数の多さに押されて劣勢に追いやられる。
「見てられないわ」
　急角度で曲がって走ると柚乃の腕を掴んだ。
「いつまでやってるんですか！」
「え、霧生！？」
「逃げますよ！」
　愛に引っ張られる形で逃げ出した。
　いつしか二人は全力の並走でゴールに突っ込んだ。転がるようにしてグラウンドで仰向けとなった。
　愛は荒い息を呑み込んで横目をやった。
「浅見先輩、大丈夫です、か」
「もちろん。あと、すっきりした……ありがとう」
「それは、どうも」
　二人は安らいだ表情で青空を眺めた。