【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！｜リアクション

【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！

　浅見柚乃は飛び出した。歯を食い縛り、いきなり全力の走りを見せる。息が乱れて尚も腕を大きく振った。
　――苦しくて、悲しくて、胸いっぱいに広がって……それでいい。
　苦しさが増す程に羽生碧南と鷹取洋二の仲睦まじい姿が霞んでゆく。ペース配分は頭から抜け落ち、何かに追われるように速度を上げていった。
　気付くと視界がぼやけていた。意識が飛びそうになって頭を強く振った。
「これって……」
　ランナーズハイは幻覚まで見せるのか。園児くらいの背丈のキノコが路上にいた。傘の部分は紫色で実に毒々しい。軸の部分から手足が生えて、ふらつくようにして歩いていた。見える範囲だけで十体を超えて、時折、胞子のようなものを吐き出した。
　柚乃は反射的に鼻と口を手で覆った。その状態で走り抜けた。
　キノコは踵を返して追い掛ける。
「なんでよ」
　前方にいた別のキノコは横一列に並んで進路を阻む。
　柚乃はバスケットボールで鍛えたフェイントを駆使して躱す。
　そこに新手が現れた。異様な植物は巨大ホウセンカで今にも破裂しそうな実を宿す。
「なんなのよ、これは！」
　足音を響かせて近づくと、前触れなく実が割れた。瞬間、拳大の種が飛び出し、慌てて横に跳んだ。
　足止めを食らった柚乃にキノコ達が群がる。
「いい加減にしろ！」
　足元にあった枯れ木を拾い、振り向き様に一体のキノコをアッパースイングで吹き飛ばした。
「もう、完全に怒ったからね！」
　波状攻撃を仕掛けるキノコを打ち据えた。合間に飛んでくるホウセンカの種を避けて半狂乱に近い状態で奮闘した。