【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！｜リアクション

【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！

　御巫時子は暖色系のジャージ姿でぽつんと立っていた。意気込みのようなものはあまり感じられない。どこか浮いた状態で周囲に目をやる。
　――尚輝先生を応援しようと思っていたのですが、一緒に走ることになりました。遠くで声援を送るより、側にいてサポートした方が私としても安心できます。
　自身の判断は間違っていないと軽く頷いた。
　――それにしても遅いですね。体調を崩していなければいいのですが。
　頭に過った不安は瞬く間に膨らみ、落ち着かない様子で方々に目を向けた。
「御巫さん、ここにいたのですね」
　声の方に振り向くと五十嵐尚輝が軽く手を挙げた。ボサボサの髪は日頃と同じ。ただ、白衣は白いウィンドブレーカーに変わっていた。
　時子は柔らかい笑みを作って言った。
「白衣ではないのですね」
「浮世離れしたところを自覚していますが、さすがにそれは……」
「少し安心しました。体調の方はどうですか？」
「悪くないと思います。体力面に不安はありますが」
　両目は前髪に隠れていて表情を窺うことはできない。時子はまじまじと見て口元に笑みを作った。
「肌の色は悪くないですね。唇も荒れていません。大丈夫そうですね」
「御巫さんは万全ですか」
「体調は悪くありません。マラソンの練習をして少しは走れるようになりました。無理はしないでゆっくり着実に走っていきましょう」
　時子の言葉に尚輝は、そうですね、と言って口角を上げた。
「御巫さん、花は受け取りましたか」
「まだです」
「では、一緒に」
　二人は笑みを交わし、運営の元へ揃って向かった。

　その二十分後、スターターの号砲で参加者は一斉にスタートを切った。