文房具まつりがやってきた！　ふたたび！｜リアクション

文房具まつりがやってきた！　ふたたび！

『青猫堂』にインクを受け取りに行った彰尋は、店頭で新しい日記帳とつけペンタイプの万年筆を購入。
　インクの出来とお気に入りの発見にすっかり満足し、軽い足取りで帰り道を歩いていた。
「さすがは紙とインク、万年筆の老舗だな」
　ネコメリバー紙使用の日記帳は、インクが滲まず乾きも速く、その上裏抜けもしないという高品質。万年筆の方は水で洗うだけで色換えが可能という商品なので、様々なインクが楽しめそうだ。
　学生にも手の出る値段だったことは、ただ感謝するしかない。
　彰尋は、頭上の夕空に大切な人の顔を思い浮かべた。
　今日作ってもらった色のような瞳をした、七夜あおいを。
「あれっ、彰尋君？」
「あおいさん！」
　声をかけてきたのは、まさに今想っていたあおいその人だった。夕飯の買い出し帰りのようだ。
「その袋、彰尋君も文房具まつりに行ってきたんだね！　ステキだったよね、ガラスペンとかインクのお店がたくさんあって」
「も、ってことはあおいさんも？　僕はインクブレンドのお店に行ってきたんだ」
　その後は、話の流れでインクを見せることになり。
「これが彰尋君の作ってもらったインクなんだね。きれいな青い色……ノートと万年筆も買っちゃって、インクライフを満喫するつもりですな？」
「えへへ、まぁそんな感じ」
　楽しい時間は瞬く間に過ぎ。
　彰尋はあおいと手を振り合って別れ、歩き出す。
　
（あおいさんの瞳をイメージしてインク作ったってばれないか、ひやひやしたけど……まぁ、いいか）

◆

　日曜日の夜。
　英二はドラゴンガラスペンと魔道書風ノートを傍らに、『グリフィンレイク王国物語』を読み進めていた。

　ぶつかった剣が走り、火花を置き去りにする。
　反射的に躱した体のあった場所を、相手の剣が薙ぐ。
　斬られた髪がはらりと散り、エルディンは後ろに跳んだ。
『あー、つまらん。頭は多少切れるようだが、弱すぎるぞお前。腑抜け王子との評判は本当だったようだな』
『そりゃあ、あなたと比べられたら誰でも腑抜けになるよ、剛胆姫』

　物語は、王子エルディンが敵国の将とまみえるシーンにさしかかっていた。
　雰囲気作りにと買ってきたアロマキャンドルの芯が、ちりちりと音を立てる。
　無論、キャンドルの灯りだけでは小説を読めないので、蛍光灯もついているが。
「あぁ、王子……今までグリフィンの研究浸りだったツケを、こんな形で払うことになるなんて！」
　英二は椅子から立ち、背筋を伸ばしてストレッチをした。
　グリフィン研究に入れ込む王子がサボりがちだったのは、政務だけではなく、剣術もであった。
　そんなありさまでは、一騎当千の強者と謳われる姫将軍と勝負になるはずもなく。
「これから、剛胆姫シャルロッテと……想いが通じ合ったりするのかなぁ」
　先の章題を見ながら、展開を予測するのもまた楽しいもの。
　とはいえ、もう夜は遅い。
「続きは明日の楽しみにとっておこう」
　英二はノートの表紙、金の箔押しを指でなぞる。
　キャンドルと蛍光灯を消してから、ベッドにもぐり込んだ。

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あとがき

担当マスター：陣杏里
ファンレターはマスターページから！

皆様こんにちは。
『来る花粉に身構えている』陣　杏里です。

２０２４年初シナリオは、景気よく文房具爆買いのシナリオ第二弾でお送りいたしました。
今大人気の（まぁ、時事ネタはすぐに古くなるのですが）インクブレンドやシーリングワックスに
大盛り上がりのＡＣ、どうもありがとうございます。
ご参加いただきました方、お読み頂きました方に、素敵な文房具ライフが訪れることを願ってやみません。

では、この辺で失礼します。
陣　杏里でした。

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