【節分】寝子島節分祭、および、霊界殺武無祭｜リアクション

【節分】寝子島節分祭、および、霊界殺武無祭

　自分の顔を僅かに写し返す液晶画面を見つめる時間。
　電源ボタンを押せば、表示される電話の発信アイコン。これをタップする前の画面を見つめる時間も、何度か掛けている内に気持ち短くなったような気がする。
　僅かに揺れる心を勇気で抑えるように、通話ボタンをタップする。相手が出る間の、いつも丁寧なまでの３コール。小さな通話ノイズと共に、倉前七瀬とそちらの元教鞭をとっていたウォルター・Bの会話が始まった。

「倉前。どうしたんだい？」
「ウォルターさん、寝子島でやってる『福豆まき』に参加してみませんか？」
「ああ、今日は節分だねぇ」
「もし、お忙しくなかったらとでいいんですけど……」
「いいねぇ、行こうか。倉前のことだから一人でも行くんだろうし。それなら、日本の祭りは一緒の方が楽しめるからねぇ」
　見透かされていた。七瀬としては少し恥ずかしいが、少し砕けた口調でこちらのそういう所までもお見通しであるのが、このウォルターという存在なのかもしれない。
「待ち合わせはどうしようかぁ？」
「それじゃあ、」
　ひとつ決まればとんとん拍子に話は進む。寝子島の昼、社務所の側で合流する事にした。

　一足早く、七瀬は待ち合わせ場所でウォルターを待つ事にした。通り際に社務所を見て、福豆まきの景品を目にしてきた。目につく限り欲しいと切望するものは無かったが、それでもまずは何がもらえるかだけでも期待に胸が膨らむ。同時に、良いものが手に入れば相手へのプレゼントに出来ると思えば楽しみは増すばかりだ。
「（お互い交換し合うというのもいいですよね）」
　思わず微笑みが浮かび、しかしそれを追いかけるように現れたのは『まず福豆を入手出来るのか』の悩ましさ。七瀬は複雑な心境で小さくうつむき眉根を寄せた。
「むむ……」
「ごめんねぇ、待たせちゃったかなぁ？」
　そこに、不意打ちのように掛かる声。七瀬が驚いた様子で顔を上げれば、そこにはいくら馴染んでも、きっと慣れて飽きる事はないであろうウォルターの笑顔があった。
「わ……いえ、今来たところなんですよ」
　そう告げて、七瀬もウォルターと同じように笑顔を見せる。
　時計の針は時間丁度を指すところ――ちょうど、福豆まきが始まる時間となっていた。