【節分】寝子島節分祭、および、霊界殺武無祭｜リアクション

【節分】寝子島節分祭、および、霊界殺武無祭

　人々の期待の詰まった寝子島節分祭を前日に控え、島の人々が準備に盛り上がる中。
　厄落としの為、本土の祭りに向かうことにした稲積柚春は、約束していた旧市街の商店街の一角にて、共に行く約束をした待ち人であるウォルター・Bを待っていた。
　――待っていた、というのには少々語弊があるのかも知れない。柚春が約束の場所に来て辺りを見渡そうとした瞬間、その真後ろには既にウォルターの姿があったのだから。
「あぁ、待ったかなぁ。ごめんね」
「え、ううん！　ワットこそ、僕の方が遅かったのかも。探してくれてたならごめんね？」
「いや？　丁度来たら、柚春の後ろ姿が見えたんだよねぇ。同じくらいに来ていたなら良かったよ。それじゃあ行こうか」
　スラリとした高身長であるウォルターが柚春に柔らかな笑顔を見せる。柚春はその左側に回り、プライベートならではの、あまり緊張感を見せない柔らかな服を身にまとう彼の隣で、そっと腕を組んで歩き始めた。

　本土の節分祭に向けての着物選び。
「よし、ワットは和服を着こなせちゃうから、選びがいがあるよ！」
「柚春が僕の着物を選んでくれるだなんて光栄だなぁ。じゃあ君が僕の着物を選んでくれているなら、僕は柚春の着物を見ていようかな。試着ならいくらでもするから、決まったら声を掛けてねぇ」
　そう言うと、ウォルターはどこか気持ち急くようにふらりと姿を消してしまった。柚春としては、ウォルターを全力コーディネートしたかったのだが……そう思いながら、彼に金の髪に似合う濃紺の袴などを見繕い彼に試着してもらう。
「あ、柚春。こんなものは気に入りそうかなぁ」
　そんな柚春にウォルターが持ってきたものは、柚春の藍色の髪に似合う、薄桃色の柔らかな色無地の着物と、白に誇張しすぎないが見れば確かに美しい帯。
　そして――
「あ……お揃いの、帯飾り」
　目立ちすぎず、それでも収まるべき位置にある、シンプルだが個性の滲む帯飾り。
「お祭りで茶会じゃないのだし、このくらいは流石に許されるよねぇ……あ、これでいいかい、柚春？」
「……あ、う、うんっ！」
　柚春がウォルターの手際の良さに驚いている間に、相手は自分よりもずっと短い時間で『これ以上は無いのでは』と思うほどの素敵な着物を選んでくれた。
　……今回だけではない、こういうちょっとした所が、嬉しいけれども少し申し訳ない感もある。その気持ちはウォルターも分かっている癖をして、微笑みながらいつも柚春の頭を軽く撫でてくれるのだ。
　――もっと早くに大人になりたい、と心の底から深く思わずにはいられない。
　柚春にとっては、ウォルターとは相思相愛であると自負するからこそ、そのギャップはとても重たいものなのだから。

　そして、人々の期待を集め、寝子島節分祭も幕を開ける――

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