幽霊猫とお化けの国　第五幕：戦士は憩いを希う｜リアクション

幽霊猫とお化けの国　第五幕：戦士は憩いを希う

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「逃がさない！　貴様等なんかに、魂さんたちをやらせるものか……！」
　透明化で姿を消して構えていた夏朝が、出現と同時に『重く軽く』の進化能力を発動した。次々とねこシールを射出し、本体はもちろん奴らの手にしたフォークやナイフにまで、可能な限り貼り付け。
　そして、ろっこんを発動！
　突如として増した重量に引きずられ、お化け兵たちは混乱する間もなく地面に引きずり降ろされていく。
　そしてその先には、先ほど彼らが飛び越えたスパイクがあった。
　墜落したカボチャどもに、ぐさぐさとスパイクが突き刺る。あるいは両手の武器も本体も全てろっこんを受けた個体に至っては、重さと勢いだけで砕けさえする。
「ギアッ！」
　武器を捨てて重量から逃れたお化け兵が、口を開けて夏朝に飛びかかった。
　ろっこんで自重を軽くしたのを活かして回避。かじりつきが空ぶったところへ、すかさずシールを射出する。
　するとお化け兵は、緑の炎を吐いた。射出したシールが焼きつくされると同時に、体が重くなる感覚が夏朝を襲う。
「しまっ……！」
　鼻を刺す焦げた臭い。自身に貼り付けてあったシールが、炎の余波で焼かれていた。
　貼り付けなおすよりも先に、カボチャの大口が迫ってくる！

　その時、猛然と突撃してくる一頭の熊が居た。
　暴走自動車並みの圧をともなって突撃してきた熊は、その勢いのままお化け兵に激突。たまらず吹き飛ばされたカボチャは、廃墟の壁に叩きつけられて粉々になった。
「大丈夫か、恵御納！」
「その声、桜井君！？　び、びっくりした……！」
「近場に居たからちょっと体貸してもらっ――たッ！」
　背後から迫っていたナイフをラッセルは爪で叩き落とし、そのまま飛びかかる。
　牙でかみ砕く音が響くと、周囲のお化け兵たちもさすがに怯んだ様子だ。

「わっ、ラッセルくんってばワイルドだね！」
　少し姿が見えなくなったと思ったら、熊になって帰ってきた友人の姿に、タルトは面白くてたまらないとばかりに笑う。
　負けていられないとばかり、夏朝のろっこんによって落とされたナイフを拾い上げ、そのままぐるりと一回転。
　すっぽ抜けるのは上等で、お化け兵たちが飛んでくる巨大ナイフをかわしたところに、すかさず近くのお化け兵へ飛びかかる。
　カボチャはフォークで浮けようとするが、どこからかの銃弾を受けて注意が逸れる。
「よっと！」
　その隙に、タルトは猫が空中で体を捻るみたいにして背後へ。そのまま、ヘタの位置に剣を突き立てた。

　タルトが投げつけたナイフを避けた二体のお化け兵に、紫苑は無音の銃弾を数発撃ち込む。
　気配だけの攻撃に、慌てて武器を振るう二体。しかし距離が近すぎて、お互いの武器がお互いを突き刺し合うような有様。
　うまく混乱させたと思う間もなく、紫苑が居る辺りに向かって炎が吹きかけられる。
（あら、見えて……はなさそうですけど。気配に気づかれたんでしょうか？）
　とっさにカボチャの頭上を飛び越えながら、紫苑はそんなことを思った。前に戦った時よりも、敵の感覚が鋭くなっているのかもしれない。

（さっきの弾は紫苑ちゃんかな。助かっちゃった）
　タルトの振るった剣が、お化け兵の皮を切り落とす。手のひらに収まりそうなくらいの大きさのその皮を、タルトは思わずキャッチしていた。
　お化け兵を蹴って飛び退きつつ、味見のつもりで口に放り込む。すると、紫苑が言っていた通りの味わいが口の中に広がるのだった。
「ほんとだ。生でもイケるし、ほんのり甘い！」

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