九夜山雪まつり｜リアクション

九夜山雪まつり

「ワット、夕焼けがきれいだよ。こっちに座って」
　柚春とウォルターは、肩を寄せ合って夕焼けを眺めていました。
「一番星をどっちが先に見つけるか競争だよ」
　柚春はウォルターに視線を向けていいました。
「よし」
　少し無言になったものの。
「……ねえ、流れ星は見えないかもしれないから、ワットにお願いしてもいい？」
「えっ？」
「ずーっと一緒にいられますように、って」
「……あっ、一番星だ」
「あっ、ずるい……ふふ、だいすきだよ」
　競争などほんとはどうでもよくて。
　幸せな気持ちで柚春は笑いました。

「あちこち覗いてきたけど、カップルの邪魔をしちゃったみたいだよ」
　道哉ときなこの元へ帰ってきた雪女は言いました。
「カレー鍋にポトフ、いろいろおいしそうだったけど作るのは面倒だ。用意された鍋をいただこうよ」
「そうさな、私はそれでいいよ」
「おなべたべたい！」
　そんなわけで火を起こし、小さなお鍋を温め始めました。
「鍋が温まる間、料理をする間の静かな時間も喧騒を離れていいじゃないか」
　静かな闇の中、遠くに街の明かりが綺麗に見えました。

「おなべできたよー」
　三人はお椀を手に鍋をつつき始めます。
「小さな鍋は趣があるね。量は物足りないが、これはこれで……」
「みちちかくん、こーひーもあるよ」
「いただこう。……うむ、体も芯からあったまるよ。きなこは？」
「ほっとみるく、あったかくておいしいよ！」
「そうか、よかった」
「あたしは冷が一番だよ。雪見酒は最高だね」
　雪女はカップ酒を飲んでいました。　

「星空も澄んでてきれいだね……流れ星だ」
「えっ、あっ、あれ？」
　急いで夜空を見上げたきなこも流れ星を見られたようです。
「ほら、また」
「きれいだね」
　無邪気に笑うきなこを見ながら道哉は思います。
（自然の美しさやいい笑顔をみれるなら来たかいがあったかな）

このページにイラストを設定する