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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
イケナイコトカイ
『四月△日
今日は、寮で同室になった友達のことを書きます。
名前は野々ののこさん。
とっても明るくて楽しい子！ 中学までの私の人生で、会ったことのないタイプの子なんだ。
好奇心いっぱいで、なんにでも興味を示すの。今日も、
「この寮の周囲には何匹の猫がいるのかにゃ～？」
って言ったきりいそいそと出かけて、ずーっと猫探しをしてたんだよ。
野々さんはかわいくて楽しい。ステキな子です。
昨日も消灯後、野々さんとずーっと話しつづけちゃった。おたがいしゃべり疲れちゃうくらいまで。
もっとずっと仲良くなりたいな。
そういえば野々さんは今日の昼も――』
ああ、とうめいて鴻上 彰尋は頭をかかえた。
また一日分読んでしまった。
また、七夜 あおいの日記を読んでしまった！
イケナイコトだとわかっている。プライベートな日記というのは、誰にとっても秘密にしておきたいもののはずだから。それを軽率にめくって、あまつさえそのころの書き手の姿を想像して、なんなら共感までしてしまうというのは甘美な毒以上のものだった。
不謹慎は承知で思う。
かわいい。
十五歳の当時のあおいさん、床に転がってゴロゴロしたくなるくらいかわいい……！
まだあおいとののこは、知り合ったばかりなのだ。だから日記における呼び名が『ののちゃん』ではなく『野々さん』なのも青い梅のようにみずみずしいではないか。甘酸っぱいではないか。
あおいはノートを見開きで使っており、入学式のことを書いた日記の右側がこのページだった。どうやら毎日日記をしたためていたのではないらしい。前回から数日空いている。ページにはののことの最初の日々が、簡潔にしかし大いなる好意をもって記録されていた。第一印象からしてベストに近いものだったようだ。結ばれるべくして結ばれた親友関係だったといえよう。自分は第三者なのに、ほっこりして仕方がない。
だけど彰尋は、鉄の自制心をもってその先を読むのをやめた。
これは、絶対に読んじゃいけないものだ。
とにかく落ち着こう。深呼吸してノートを閉じた。
ノートはA5サイズだ。世間的には漫画の単行本サイズという感じだろうか。紙は黄ばんでおり、右下隅は折れている。
黄色く変色した表紙……きっと書き終わった日記なんだろう。
書き終えて少し日数がたって、この場所に隠したことを忘れてしまって――そんな感じなのかな。
最後のページまで書いているのかはチェックしなかった。ただ、膨らんだ様子からしてほぼ最後まで埋まっているとわかる。毎日は書いていないようだが、長くても入学から数ヶ月分で終わっているはずだ。といっても実際はわからない。下手をすると一年ないし二年分くらいの記録があるかもしれない。
イケナイコトだ。大丈夫、わかってる。
それでも、とても気になってしまう。
これがたとえば、ただの友達の書いたものなら、あるいは家族のものだったなら、彰尋がここまで逡巡することはなかったろう。紙袋に戻し、翌日にでもしれっと返却しておしまいだったと思う。「開けたら日記だったんで閉じた。中身？ 読んでないよ」と迷いのない口調で言ったろう。
なのに。
うう。
あおいさんだから……好きな子の日記だから、こんなにも迷ってる。
いっそのこといまから彼女に電話して、ことの次第を明かして引き取ってもらおうか。
それとも、彼女が気づいていないを幸い、たき火にでもくべてしまおうか。
でも焼いてしまうのはな。
やはり、よくないよな。
でもこのままじゃ読み進めてしまいかねない。丸一冊、あおいさんの秘密を。
俺も日記を書いているから、誰かに見られてしまったときの反応は想像がついてしまう。
「ひどいよ彰尋くん！ 私の日記、一冊全部読んだの！？ もう絶交よ！」
――は、はないにしても。
「あー……読んじゃった？ 本当に？ 当時の私ってバカでしょ？ えーと、じゃ、さよならっ！」
くらいのことは予想される。二番目の場合も、以後はNYAINを送っても既読もつかぬスルーになって、廊下で見かけてもさりげなく進行方向を変えられるなどして、ナチュラルに避けられるという嫌な未来につづくおそれがあった。
そんな最後、嫌だよ。
だって、あおいさんとの高校生活はもう残り三ヶ月を切っているのに。
それにとため息をついた。
最初の二ページは楽しい思い出で埋まっていたけれど、日記に書いていることは必ずしも素敵なことばかりではないかもしれない。そこをピンポイントに仲のいい人に見てしまったときに相手を悲しませないかと考えてしまう。
ノートの表紙に視線を戻した。
どうか幸せなことばかりたくさん書いてあってほしい。
それに、見ないと気がつくことができなかった彼女の苦しみや悩みがあったらどうしようか。
いつの間にか外は暗くなっている。
今日は、寮で同室になった友達のことを書きます。
名前は野々ののこさん。
とっても明るくて楽しい子！ 中学までの私の人生で、会ったことのないタイプの子なんだ。
好奇心いっぱいで、なんにでも興味を示すの。今日も、
「この寮の周囲には何匹の猫がいるのかにゃ～？」
って言ったきりいそいそと出かけて、ずーっと猫探しをしてたんだよ。
野々さんはかわいくて楽しい。ステキな子です。
昨日も消灯後、野々さんとずーっと話しつづけちゃった。おたがいしゃべり疲れちゃうくらいまで。
もっとずっと仲良くなりたいな。
そういえば野々さんは今日の昼も――』
ああ、とうめいて鴻上 彰尋は頭をかかえた。
また一日分読んでしまった。
また、七夜 あおいの日記を読んでしまった！
イケナイコトだとわかっている。プライベートな日記というのは、誰にとっても秘密にしておきたいもののはずだから。それを軽率にめくって、あまつさえそのころの書き手の姿を想像して、なんなら共感までしてしまうというのは甘美な毒以上のものだった。
不謹慎は承知で思う。
かわいい。
十五歳の当時のあおいさん、床に転がってゴロゴロしたくなるくらいかわいい……！
まだあおいとののこは、知り合ったばかりなのだ。だから日記における呼び名が『ののちゃん』ではなく『野々さん』なのも青い梅のようにみずみずしいではないか。甘酸っぱいではないか。
あおいはノートを見開きで使っており、入学式のことを書いた日記の右側がこのページだった。どうやら毎日日記をしたためていたのではないらしい。前回から数日空いている。ページにはののことの最初の日々が、簡潔にしかし大いなる好意をもって記録されていた。第一印象からしてベストに近いものだったようだ。結ばれるべくして結ばれた親友関係だったといえよう。自分は第三者なのに、ほっこりして仕方がない。
だけど彰尋は、鉄の自制心をもってその先を読むのをやめた。
これは、絶対に読んじゃいけないものだ。
とにかく落ち着こう。深呼吸してノートを閉じた。
ノートはA5サイズだ。世間的には漫画の単行本サイズという感じだろうか。紙は黄ばんでおり、右下隅は折れている。
黄色く変色した表紙……きっと書き終わった日記なんだろう。
書き終えて少し日数がたって、この場所に隠したことを忘れてしまって――そんな感じなのかな。
最後のページまで書いているのかはチェックしなかった。ただ、膨らんだ様子からしてほぼ最後まで埋まっているとわかる。毎日は書いていないようだが、長くても入学から数ヶ月分で終わっているはずだ。といっても実際はわからない。下手をすると一年ないし二年分くらいの記録があるかもしれない。
イケナイコトだ。大丈夫、わかってる。
それでも、とても気になってしまう。
これがたとえば、ただの友達の書いたものなら、あるいは家族のものだったなら、彰尋がここまで逡巡することはなかったろう。紙袋に戻し、翌日にでもしれっと返却しておしまいだったと思う。「開けたら日記だったんで閉じた。中身？ 読んでないよ」と迷いのない口調で言ったろう。
なのに。
うう。
あおいさんだから……好きな子の日記だから、こんなにも迷ってる。
いっそのこといまから彼女に電話して、ことの次第を明かして引き取ってもらおうか。
それとも、彼女が気づいていないを幸い、たき火にでもくべてしまおうか。
でも焼いてしまうのはな。
やはり、よくないよな。
でもこのままじゃ読み進めてしまいかねない。丸一冊、あおいさんの秘密を。
俺も日記を書いているから、誰かに見られてしまったときの反応は想像がついてしまう。
「ひどいよ彰尋くん！ 私の日記、一冊全部読んだの！？ もう絶交よ！」
――は、はないにしても。
「あー……読んじゃった？ 本当に？ 当時の私ってバカでしょ？ えーと、じゃ、さよならっ！」
くらいのことは予想される。二番目の場合も、以後はNYAINを送っても既読もつかぬスルーになって、廊下で見かけてもさりげなく進行方向を変えられるなどして、ナチュラルに避けられるという嫌な未来につづくおそれがあった。
そんな最後、嫌だよ。
だって、あおいさんとの高校生活はもう残り三ヶ月を切っているのに。
それにとため息をついた。
最初の二ページは楽しい思い出で埋まっていたけれど、日記に書いていることは必ずしも素敵なことばかりではないかもしれない。そこをピンポイントに仲のいい人に見てしまったときに相手を悲しませないかと考えてしまう。
ノートの表紙に視線を戻した。
どうか幸せなことばかりたくさん書いてあってほしい。
それに、見ないと気がつくことができなかった彼女の苦しみや悩みがあったらどうしようか。
いつの間にか外は暗くなっている。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年12月06日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年12月13日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年12月13日 11時00分
