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イケナイコトカイ
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イケナイコト――。
そこまで意図したつもりはないが、艶っぽい口調だったかもしれない。
とりつくろうように七瀬はつづけた。
「……あ、もうお腹いっぱいとかじゃないですよね?」
「そんな風に誘惑されちゃ断れないなぁ」電話口のむこうでウォルターが笑みを浮かべているところを七瀬は想像した。それにふさわしい声であり口調だった。「大丈夫、胃袋に余裕はあるよ。パン買って食べただけだから。メアリには『今夜は遅くなる』って連絡を入れとく」
いまの質問で、何かを食べるというのは勘づかれましたね。何をするか伏せて誘いたかったのですが。
「ありがとうございます」
「お礼を言うのは僕のほうさ。なにやらわくわくするじゃないか」
偶然ながら『わくわく』という言葉が彼から出たのも七瀬には嬉しい。ウォルターは言った。
「迎えに行くから場所を教えてよ」
数分ほどで七瀬の前に、目の覚めるようなロイヤルブルーのスポーツカーがすべりこんでくる。
「ウォルターさんっ」
「待った?」
窓を開け、運転席からウォルターが顔を見せた。
「いえ、ぜんぜん」
「そりゃよかった。今夜も冷えるからねぇ、風邪なんか引いたら大変だ。ほら、乗って乗って」
助手席に座った七瀬の膝に、温かい缶が置かれた。
「これは?」
「うん。アップルサイダー。電話で言ってたやつ。日本じゃ『サイダー』って炭酸飲料のことだけど、本来のciderはリンゴ酒のことなんだよねぇ。すくなくとも地元じゃそうだった。でもアメリカあたりじゃアルコールなしのリンゴジュースを指すみたい。『サイダーハウスの物語』ってアメリカ文学が……あ、ごめん、どうでもいい話だった」
「そんなことないです。本の話、好きですから」
「よかった。だからまあ、『ホットアップルサイダー』って名称、よく考えると『ホットなリンゴのリンゴジュース』ってことになるわけだけど気にしないで。『チャイティー』みたいなもんさ。『チャイ』はそもそも『お茶』って意味だろ、って感じで」
「ありがとうございました。いまからカフェに行きたいって思ってて、だからこの缶は家に帰ってから湯せんして温めて飲みます」
「それがいい。明日の朝食後にでも楽しんで。僕のふるさとの味だから」
「え? ウォルターさんさっきの話と――」
はははとウォルターは笑った。
「ジョークさ。僕の言うことをいちいち真に受けちゃイケナイよ。それで行き先、教えてくれる?」
「あ、はい、そこの道を西に」
すっかり暗くなった街を走る。
「カーステレオ、かけていいかい?」
「もちろんです。AMラジオで?」
「いや、HDD。先日買ったヴァインランズの発掘音源を入れてる。ガチャガチャうるさいかもだけど」
しかし『ガチャガチャうるさい』とは対極の音像だった。暗いが聞きやすく、底流にキラキラと光るものを感じた。月さえ眠る夜のダイヤモンド、そんなイメージだ。真冬にぴったりの音楽だと思う。
そういえばと七瀬は言った。
「……でも先生、音楽は苦手なんじゃ?」
「そうだよ。教科としての『音楽』はね」
七瀬としては重い質問をぶつけたつもりだが、ウォルターのほうはあっさりしたものだ。
「ショパン、モーツァルト、ベートーベン――いまじゃちがってるかもしれないけど、僕がティーンエイジャーだったころの音楽の授業は、ああいった古典ばっかりだったからねぇ。正直、大人になってからもまだ苦手かなぁ。バッハ、チャイコフスキー、ヴァイオリン――おっと、最後のはちがうか」
と言って肩をすくめた。
「賛美歌みたいなの合唱するのも大嫌いだったし、音楽の授業はよくサボってたよ。とうぜん落第寸前だったねぇ。仕方ないからペーパーテストだけがんばってなんとかパスしたけどさ。あのとき丸暗記した音楽史、まったく覚えてないなぁ」
でもね、と彼はつづけた。
「でも僕がハイスクール時代にはまったパンクロックはさ、古い権威や権力に抵抗するって姿勢で、古典にうんざりしていた僕は猛烈に共感した。聴くとやりたくなるもんで、見よう見まねでドラムもやってみたよ。パンクはDIY精神って言ってね、下手くそでも同学年のバンドがメンバーに迎え入れてくれたんだ。いやもう思い返しても赤面しそうなくらい僕のドラムは壊滅的に酷かったけど……でもとても楽しかったな」
たとえるならとウォルターは言う。
「体育の成績がCマイナスだった人が、日曜に草サッカーに興じるようなものさ。好きと得意とは、かならずしも一致しないもんだろう? おかしいかい?」
おかしくないですと七瀬は首を振った。
「知られざるウォルターさんの青春時代、って感じですか」
「いまの若い子なら『黒歴史』って言うかもね? だからあんまりこの話はしないんだ。髪を逆立ててた当時の写真は、さすがに恥ずかしすぎて封印してる」
髪を逆立ててデストローイなどと言っているウォルターというのは、ちょっと想像するのが難しい。なお、パンクは反権力そのものなため、メアリが卒倒しないか心配して音楽の趣味は家ではずっと隠しているらしい。
「でもまぁ信用しないほうがいいかもねぇ。僕のことだから、またいい加減なことを言って煙に巻こうとしてるのかもしれないよ?」
「いい加減だなんて」
「でなきゃ臆病、なのかもね。自分をさらけ出すのが怖くて、その場その場で求められる役を演じているだけかも」
ハンドルを握るウォルターの横顔は、平素と変わることはない。なんなら笑みすら浮かべている。
だけど、どこかいつも通りではない気がします。
天才肌でミステリアス、周囲はウォルターさんをそう理解しているようだし、彼もその評価を甘受しているように見える。
でもそれはウォルターさんが自分を守るため身につけた薄い仮面で、その内側には、人一倍感受性が強くて、傷つきやすい男性がいるのかも。
だとしたら――。
「よせよう。レザージャケットは水に弱いんだ、涙には特にね。それに僕も」
自分の両目の間を指でつまみ、ウォルターはぐいと空を見上げたのである。
「僕も、弱いんだからさぁ」
あの夜のウォルターさんの言葉と見せてくれたもの、本物だったんだなって思います。
ぽっかり沈黙が生まれ、空気を闇夜の宝石が埋める。
しかしその時間はわずかだった。
「着いたよ」
ヘッドライトが照らし出した建物、それはカフェだった。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2023年12月06日
参加申し込みの期限
2023年12月13日 11時00分
アクション投稿の期限
2023年12月13日 11時00分
参加キャラクター一覧
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