ハッピーバースデー！　１月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　１月☆

●気遣いと優しさ

　冬休み明けの、とある休日。
　愛猫萌々子は白い息を吐きながらシーサイドタウンを歩いていた。手袋やマフラーなどで防寒対策をしていても、なかなか寒い。

「聞いたお店はこのあたりのはずですが」

　今日は風紀委員長の笛吹ぴりりと喫茶店に集まる約束をしている。目的は寝子島高校OGである北風貴子の誕生日を祝うこと。予定ではぴりりが貴子をそこに呼んでいるはず。歩くうちに教えてもらった店名を見つけると、安心して入店する。

「萌々子さん、こっちです」

　ぴりりが萌々子を見つけるとテーブル席から手を振った。その向かいには貴子も座っている。萌々子はぴりりの隣に座ると荷物を置いた。

「北風さん、お久しぶりです。大学生活はどうですか？」
「大変だけれどなかなか楽しいわ」

　きりっとした表情を崩さずに貴子はそう答えた。大変だと口にするが、充実した日々を過ごしているように感じた。高校では得られなかったものが多くあるのだろう。

「私はこの前お話した通り、風紀委員から生徒会役員になりました。来年度も引き続き生徒会会計として頑張ります」
「あまり気を張り過ぎないようにね」
「はい！」

　委員会や役員に関することを話し終え、しばらく雑談に花を咲かせる。ふと会話が途切れたところで、萌々子が切り出した。

「じつは今日来ていただいたのは委員会のことだけではなくて、お誕生日のお祝いがしたかったんです」

　店員にさりげなく合図を送ると、厨房のほうからホールケーキを持ってきてくれた。チョコのプレートに貴子の名前が書かれた、シンプルなものだった。けれどお祝いの気持ちは十分に込められている。

「予約しておいたお店特製のバースデーケーキです！」

　貴子は予想外だったのか、驚きと喜びの混ざった顔をしている。気持ちが落ち着いてくると２人に感謝を伝えた。喜んでもらえて萌々子とぴりりはほっと胸をなでおろす。

「それからですね」
「他にもあるの？」
「はい」

　萌々子は鞄からラッピングされた袋を取り出した。ぴりりと顔を見合わせ、２人分の手を添えて貴子に差し出す。

「２人で選んだプレゼントです。どうぞ」
「ありがとう。開けてみてもいい？」
「もちろん」

　包装を丁寧に開いて中身を確認する。繰り返し使えるホットアイマスクと入浴剤のセットだった。

「私たちではお酒は買えないし、今年のスケジュール手帳は既にお持ちかと思って」
「先輩もお忙しいと思うので、リラックスタイムに使っていただければ」
「２人とも、本当にありがとう」

　貴子は柔和な表情を浮かべる。それからケーキを囲んで３人で楽しい時間を過ごした。

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