ハッピーバースデー！　１月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　１月☆

●サプライズ

　冬の寒さが深くなる１月２４日。
　桜花寮の一人部屋で佐藤英二は目を覚ました。

「……ん～、さむい」

　体を起こしてカーテンを開けると、暖かな日差しが差し込んでいる。換気をしようと窓を開けると、冷たい空気が部屋に入り込んだ。ほどほどで窓を閉めると、スマホのカレンダーを見る。

「今日はいよいよ僕の誕生日だね」

　メールを確かめると家族からお祝いのメールが届いていた。何歳になってもこういうのを見ると、ほっこりとした気分になる。ずっと眺めていたいけれど学校に遅刻するわけにもいかない。着替えをさっと済ませると学校に向かう。
　英二は高校三年生で、木天蓼大学を受験する予定。受験勉強はたぶん順調だと英二自身は思っている。

（高校生活で最後の誕生日なんだよね）

　サプライズなお祝いやプレゼントがあったら嬉しいな、とひそかに思う。その背中に野々ののこの元気な声が響く。

「おはよー！　英二君！」
「おはよう、野々さん。今日も元気だね」
「うん！」

　防寒装備をばっちり身にまとったののこは、その場でくるっと回ってみせた。白い息を吐きながら笑顔を浮かべる。寒空の下、昨日あったことや勉強のことを他愛なく話す。学校に着いても同じクラスなので、授業が始まるまで話していた。

（そういえば誕生日のこと、何も言われなかったな）

　少し残念に思いつつも、授業が始まったので大人しく聞いている。大きなハプニングもなく昼を迎え、いつのまにか下校の時間だった。授業の合間で誕生日を祝ってもらったり、プレゼントにお菓子を受け取った。それに対して英二は全力で感謝の言葉を返した。
　下校の準備を整えて、昇降口に向かう。
　受け取ったものを大事そうに鞄の上から撫でる。靴を履き替えて、校門から出ようとしたそのとき。

「あー！　いたー！」

　ののこの声が後ろから聞こえた。
　立ち止まって振り返ると、ののこが急いで靴を履き替えている。

「一緒にかえろっ！」

　その言葉に英二は頷いた。

（今日は一緒に登校できてラッキーだと思ったけど、下校も一緒だなんて……！）

　英二は心がふわっと温かくなった。今日あったことなどをお互いに話していると、ふと思い出したようにののこが自分の鞄を探る。

「はいこれ！　お誕生日おめでとう！」
「えっ！」

　嬉しさのあまり、受け取ってから少し固まってしまった。

「あ、開けてもいい？」
「いいよ！」

　英二は丁寧にラッピングを取った。中にはゴアラのミニフィギュアが入っていた。

「ありがとう！　ありがとう！　すごく嬉しいよ！！」

　プレゼントの中身が嬉しかったのもあるが、ののこから手渡されたことがとても嬉しかった。

「よかった！」

　ののこも純粋な笑顔を浮かべた。その笑顔がなによりも英二は嬉しかった。