ハッピーバースデー！　１月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　１月☆

●早朝の出会い

　冬の朝。
　落合まゆらは寒さを振り切って体を起こす。

「さむっ……」

　思わず口に出てしまった。
　しかしなんとか布団から出て、いつものように早朝トレーニングをするための準備を始める。

（そういえば）

　彼女はふと友達の北風貴子のことを思い出す。
　貴子の誕生日が１月２日だった。『だった』と過去形なのはとっくに過ぎてしまい、１月も下旬に差し掛かっているから。祝う気持ちはあったものの、正月はさいたま市の実家に帰省していたため難しかった。
　そのため帰省から寝子島へ戻ったら祝うつもりだったけれど、島へ戻った後は専門学校の卒業を控えて多忙な日々が続いた。頭の片隅で引っかかってはいたものの、流されるままに時間が過ぎていき今に至る。

（だいぶ経ってしまったけど、できれば直接お祝いしたい）

　靴ひもをきちんと結ぶとアパートのドアを開けた。途端、冷えた空気が肌をかすめる。まゆらは準備運動をしっかりしてから走り出した。アパートを出発して猫又川を渡り、そのまま大通りに沿って走る。同じようにランニングに励む人々と何度かすれ違う。白い息を吐きながら進んでいくと、寝子ヶ浜海岸に到着した。
　呼吸を整えるとボイストレーニングを開始する。ふと視線を感じて振り向くと貴子の姿があった。
　
「久しぶり！」

　まゆらは思わず駆け寄った。
　貴子も朝のランニングを日課にしているのは知っていたが、ばったり出会うとは思っていなかった。

「まさかと思ったけど、やっぱり落合さんだったのね」

　向こうもここで会うなんて想像の外だったようだ。再会の喜びもほどほどに、お互いの近況報告や雑談に花を咲かせる。

「あたしは今年で寝子アニを卒業して、上京して一人暮らしするんだよね」
「そうらしいね」

　どうやら友達から既に聞いていたようで、貴子のリアクションはさほど大きくなかった。そして、まゆらはずっと伝えようと思っていた言葉を口にした。

「それはそうと、遅くなったけど、ハッピーバースデー！」
「ありがとう」

　貴子はその言葉を素直に受け取ってほほ笑んだ。その微笑みが見られて、まゆらも喜んだ。

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