お餅が攻めてきたぞっ！｜リアクション

お餅が攻めてきたぞっ！

　旅鴉月詠は騒動を聞きつけて、画材を抱えて現場に飛んできた。
「佐藤もこみちが走っているのは別にいいとして」
　いや鏡餅だろ、佐藤もこみちって誰だよ。食レポ芸人か？
　その場にいた御剣と楡宮は心の中でツッコミを入れる。
　というか鏡餅に手足が生えて猛ダッシュする光景自体は良しとするあたり、月詠らしい感性といえよう。
「あの硬い高橋みもちが高速でヒトにぶつかると、当たりどころによってはしんでしまうのでいけない。コメディ的にいけない」
　いやだから鏡餅だって。高橋みもちって売れない地下アイドルの３番手くらいのメンバーみたいだな。
「それに乾燥した山本ももちは鈍器になる。ジャンルが探偵モノに変わってしまうのでこれもよろしくない」
　鏡餅って言ってるだろ！　なんだよ乾燥した山本ももちって。旬を過ぎた落ち目のグラビアアイドルかよ。
「という事で、お披露目するのはこれだ。油がたっぷり入ったお鍋だ」
　なんとあのボケ倒している最中に月詠は一枚の絵を描き上げていたのだ。ハヤイ！
「いくら手足が生えたとて餅は非生物だ。ならばろっこんでスケブの中に吸い込める。このようにな」
　月詠のろっこん『絵空事』は視認した動物でないものが月詠の絵に触れると、対象を絵の中へ吸い込むことが出来る。
　解除するには、絵に生物が触れればよい。
　という事で、月詠は正座で説教されてた鏡餅に自身の絵を押し付けた。
　するとあっという間に餅は柄の中へ吸い込まれ、鍋の油で揚げられている鏡餅の絵に変化した。
　なお、筋肉質の手足も餅だったようで、そのまま絵の中に封じ込められていた。
「捕獲完了。まずは第一段階が終了だ。これより作戦は第二段階へ移行する」
　キリッとした赤い眼差しが、桜花寮の方角へ向く。
「さあ、二人ともついてきたまえ。次の作戦の成否は、君たちのような腹ペコ達に懸かっているいるのだから」
　そう告げた月詠は、スマホを取り出して誰かと連絡を取り始めるのだった。

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