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LIQUID -Star Chronicle- 月の都編
【ストーリークエスト『月の都』（４）】
大鋏は切っ先鋭く、凛風の肌をかすめては薄く裂いてゆく。＜サムライマイスター＞へとチェンジし、能力も取りうる戦術の幅も増したがしかし、眼前の強敵の猛攻たるや。
「ふぁふぁふぁ！ その程度かの、冒険者よ？」
「好きに言ってくれるね……けれど確かに、強いな」
老体とは思えない巨躯が、まるで嵐のごとく強大な圧をもって迫る。いささか鈍重ながら、狙いすました一撃は確実に凛風の動きをとらえてくる。そのひとつひとつが、まともに受ければ人の身体など千切れ飛ぶだろう破壊力だ。カタナで弾きいなすも限界があろう。
ポラリスの援護攻撃も厚いが、時に隙を突いて放たれる水流の槍が蓄積した氷盾を砕き、それを費やして繰り出すはずの決め技を封じられている。
そして極めつけに厄介なのはやはり、背負う甲殻だ。
「攻撃が、通じない……！」
凛風の刃もポラリスの魔法をも弾き、傷ひとつ走る様子もない。巧みに体をかわして攻撃を殻で弾き、背後からの攻撃一切の通じないシャルルマーニュは確かに、殻将と名乗るにふさわしい。
「そおれ、そこじゃ！」
「く……！」
閉じた鋏を巨大な鈍器のように振るい、殻将の殴打が凛風をとらえた。
「凛風！！」
地を転がり衝撃を殺し、立ち上がるも致命打と言っていいほどにダメージは大きい。ポラリスが駆け寄り＜銀盤・氷精の園＞を展開し、周囲へ氷柱を突き立て氷の精霊を呼び出す。反抗の礎としたいが、殻将は氷柱を砕きながらすでに眼前へと迫っている。
「僕はいい。君だけでも退くんだ、隙を見い出して、みんなといっしょに反撃を……」
ポラリスはふるふると頭を振った。そうして凛風の胸に顔をうずめる。
「覚悟を決めたか？ ふむ、思うたよりあっけなかったのう。ま、よかろう。どれ、終わりにしてやるとするか」
大鋏を開き、ふたりまとめて両断せんと振り下ろす。が、その時だった。
「させないわよ！」
「ぬう！？」
幾筋もの光が降りそそぎ、殻将の鋏へぶつかり弾けた。ソフィアの誘導魔弾だ。
「お待たせ、ふたりとも。大丈夫！？」
「なんとか無事だな、間に合ったか」
オサムも駆けつけ、炎弾で牽制し殻将をポラリスと凛風から引き離しにかかる。
「ここからが俺たちのターンだ。前衛はアオイ、それにケイさんで頼みます。凛風が復帰するまで持ちこたえてくれ」
「アヤカ、凛風の回復をお願い。私はポラリスの魔法発動を援護するわ」
オサムとソフィアの指示で、またたく間に戦線が構築されてゆく。アヤカは凛風のもとへ駆けつけ、キャットヒールで回復を図る。
「大丈夫ですか？ 体力が戻るまで、少しかかります」
「ああ、ありがとう。あの獣は？」
「やっつけました！」
彼らを囲んでいた水の獣たちは、そのほとんどが失せていた。とっさの分担が功を奏し、また凛風とポラリスが殻将を相手に時間を稼いだことで、掃討することができたのだ。見れば獣は数体が残っているが距離は遠く、殻将の助太刀をするわけでもなくまごまごとするのみで、中には形を保てなくなっているものもあった。
魔弾と炎弾を大鋏が弾き、デュアルガーディアンとなったケイの＜シャインサークル＞が光の障壁を広げ、アオイが＜ダーク・リベンジ＞で敵の攻撃をカウンターとして増幅し放つ。
頑強な殻を持ち揺らぐことのなかったシャルルマーニュが初めて一歩、後退した。
「ち……ものの役にも立たぬ月の民どもめ。満足に時を稼ぐこともかなわぬとは」
ひとつ舌打ちし苛立たしげに、やみくもに鋏を振るって都市の名残りを破壊する。
「やはり次代を担うのは我ら、大いなる意思の寵愛受けし白瞳の者よな」
「大いなる意思……？ 前にも聞いた言葉ね」
ソフィアの記憶の中、相対した翼持つ異形の男。ペトリュスと名乗ったヴォーゲンリッターの将が確か、そう発していた。
＜大いなる意思＞。ソフィアは杖をかかげながらも問う。
「いったい何者？ 誰があなたたち、弧の騎士団を率いているというの？ 月の民ではないかと思っていたけれど。それとも、水将ベルモットのことかしら」
「あの小癪な若造が？ ふぁふぁふぁふぁ！ 戯言を」
返答を期待しての問いでなかったが、殻将は興が乗ったか口にした。
「カビの生えた古代種の残りカスなどもとより、眼中にないわい。大いなる意思、その芽生えし時より導かれてきた我らよ。なにがあろうと殉ずるのみ……さて！」
並び立ち身構える冒険者らをぐるり鷹揚に見回して、不遜に口元をねじ上げ、
「つまらぬおしゃべりは終いじゃ。この先を確かめたいのならば」
大鋏の切っ先にて都市の最奥、ゆるい斜面の上に鎮座する白亜の宮殿、中枢を指し、殻将は吼えた。
「おのが力で、わしを押しのけてみよ！」
大鋏は切っ先鋭く、凛風の肌をかすめては薄く裂いてゆく。＜サムライマイスター＞へとチェンジし、能力も取りうる戦術の幅も増したがしかし、眼前の強敵の猛攻たるや。
「ふぁふぁふぁ！ その程度かの、冒険者よ？」
「好きに言ってくれるね……けれど確かに、強いな」
老体とは思えない巨躯が、まるで嵐のごとく強大な圧をもって迫る。いささか鈍重ながら、狙いすました一撃は確実に凛風の動きをとらえてくる。そのひとつひとつが、まともに受ければ人の身体など千切れ飛ぶだろう破壊力だ。カタナで弾きいなすも限界があろう。
ポラリスの援護攻撃も厚いが、時に隙を突いて放たれる水流の槍が蓄積した氷盾を砕き、それを費やして繰り出すはずの決め技を封じられている。
そして極めつけに厄介なのはやはり、背負う甲殻だ。
「攻撃が、通じない……！」
凛風の刃もポラリスの魔法をも弾き、傷ひとつ走る様子もない。巧みに体をかわして攻撃を殻で弾き、背後からの攻撃一切の通じないシャルルマーニュは確かに、殻将と名乗るにふさわしい。
「そおれ、そこじゃ！」
「く……！」
閉じた鋏を巨大な鈍器のように振るい、殻将の殴打が凛風をとらえた。
「凛風！！」
地を転がり衝撃を殺し、立ち上がるも致命打と言っていいほどにダメージは大きい。ポラリスが駆け寄り＜銀盤・氷精の園＞を展開し、周囲へ氷柱を突き立て氷の精霊を呼び出す。反抗の礎としたいが、殻将は氷柱を砕きながらすでに眼前へと迫っている。
「僕はいい。君だけでも退くんだ、隙を見い出して、みんなといっしょに反撃を……」
ポラリスはふるふると頭を振った。そうして凛風の胸に顔をうずめる。
「覚悟を決めたか？ ふむ、思うたよりあっけなかったのう。ま、よかろう。どれ、終わりにしてやるとするか」
大鋏を開き、ふたりまとめて両断せんと振り下ろす。が、その時だった。
「させないわよ！」
「ぬう！？」
幾筋もの光が降りそそぎ、殻将の鋏へぶつかり弾けた。ソフィアの誘導魔弾だ。
「お待たせ、ふたりとも。大丈夫！？」
「なんとか無事だな、間に合ったか」
オサムも駆けつけ、炎弾で牽制し殻将をポラリスと凛風から引き離しにかかる。
「ここからが俺たちのターンだ。前衛はアオイ、それにケイさんで頼みます。凛風が復帰するまで持ちこたえてくれ」
「アヤカ、凛風の回復をお願い。私はポラリスの魔法発動を援護するわ」
オサムとソフィアの指示で、またたく間に戦線が構築されてゆく。アヤカは凛風のもとへ駆けつけ、キャットヒールで回復を図る。
「大丈夫ですか？ 体力が戻るまで、少しかかります」
「ああ、ありがとう。あの獣は？」
「やっつけました！」
彼らを囲んでいた水の獣たちは、そのほとんどが失せていた。とっさの分担が功を奏し、また凛風とポラリスが殻将を相手に時間を稼いだことで、掃討することができたのだ。見れば獣は数体が残っているが距離は遠く、殻将の助太刀をするわけでもなくまごまごとするのみで、中には形を保てなくなっているものもあった。
魔弾と炎弾を大鋏が弾き、デュアルガーディアンとなったケイの＜シャインサークル＞が光の障壁を広げ、アオイが＜ダーク・リベンジ＞で敵の攻撃をカウンターとして増幅し放つ。
頑強な殻を持ち揺らぐことのなかったシャルルマーニュが初めて一歩、後退した。
「ち……ものの役にも立たぬ月の民どもめ。満足に時を稼ぐこともかなわぬとは」
ひとつ舌打ちし苛立たしげに、やみくもに鋏を振るって都市の名残りを破壊する。
「やはり次代を担うのは我ら、大いなる意思の寵愛受けし白瞳の者よな」
「大いなる意思……？ 前にも聞いた言葉ね」
ソフィアの記憶の中、相対した翼持つ異形の男。ペトリュスと名乗ったヴォーゲンリッターの将が確か、そう発していた。
＜大いなる意思＞。ソフィアは杖をかかげながらも問う。
「いったい何者？ 誰があなたたち、弧の騎士団を率いているというの？ 月の民ではないかと思っていたけれど。それとも、水将ベルモットのことかしら」
「あの小癪な若造が？ ふぁふぁふぁふぁ！ 戯言を」
返答を期待しての問いでなかったが、殻将は興が乗ったか口にした。
「カビの生えた古代種の残りカスなどもとより、眼中にないわい。大いなる意思、その芽生えし時より導かれてきた我らよ。なにがあろうと殉ずるのみ……さて！」
並び立ち身構える冒険者らをぐるり鷹揚に見回して、不遜に口元をねじ上げ、
「つまらぬおしゃべりは終いじゃ。この先を確かめたいのならば」
大鋏の切っ先にて都市の最奥、ゆるい斜面の上に鎮座する白亜の宮殿、中枢を指し、殻将は吼えた。
「おのが力で、わしを押しのけてみよ！」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2023年11月02日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年11月09日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年11月09日 11時00分
