異世界浸食！『焚書官かく語りき』｜リアクション

異世界浸食！『焚書官かく語りき』

　夕食と入浴を終え、明日の準備も済ませた仙藤蒼はスマホ片手にベッドに寝転んだ。
「やっと復刻シナリオできるよ～」
　山積みの本が燃え上がるアニメが始まり、秘密図書館の猫館長と整列する文豪たち、制服姿の焚書官がダンジョンで魔物と戦っている。
　ボロボロになった焚書官が輝く本を勝ち取って、ゲームスタートだ。
「よーし、貯めといた石で復刻のガチャもやるぞ～！」
　最近の蒼は『焚書官かく語りき』というゲームにハマっている。先週のアップデートで過去のシナリオ『虜囚列車』が復刻され、蒼のような新参プレイヤーは歓喜なのだ。
「シナリオをクリアすれば、猫田爪彦をお迎えできるから、猫田をサポートしてくれるキャラが、ガチャで来てくれるといいんだけど……」
　深呼吸した蒼が『召喚』のボタンに指を伸ばすと――なぜか、猛烈な眠気に襲われた。

◆

　くしゃっ、という紙の潰れるような音がして。
　桜井ラッセルは突然、図書館に放り出されていた。
「いきなりかよ……」
　本がびっしり詰まった見上げる程に高い本棚は、寝子島高校のそれでは無い。
「んで、今日の寝子島はどんなピンチなんだ？」
　ラッセルは、現れた灰色猫――テオに問う。
　彼の言うには『焚書官かく語りき』というゲームに浸食されているのだとか。
「このままだと、ゲームの世界と寝子島が入れ替わり、本は全て焚書されるだろうな」
「何だと？　本を燃やすなんて許せねーな！」
「うむ。お前らには、猫田爪彦作『虜囚列車』の作品ダンジョンに挑んで、ボスを倒してもらいたい。現実に戻る鍵だ」
「猫田爪彦？　大正時代の文豪だっけ……ゲームも本も読んだことがないんだけど」
「俺も無いが……まぁ、誰かしら知ってるだろ。武器防具は用意してあるから、身につけるといい」
　テオに案内された更衣室には、ずらりと制服が並んでいた。
「うわー、大正浪漫っぽい。金髪目立つかな……いや、帽子に収めたらいけるか？」

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