【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年｜リアクション

【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年

☆大空に、凧揚げ

　大学見学ついでに寝子島にきた海道千里は、寝子島の正月を楽しんでいました。
（ラッセルもいて、友達もできたし、楽しい所だな）
「お、　あそこにみえるのは……ラッセル。と……晴月だっけ？」
　友人を見つけたものの、一緒にいる少女の姿に千里は目をこする羽目になりました。
（……飛んでるな、アレ。白昼夢でもみてるのか？）

　その桜井ラッセルは大きな白頭鷲の形の凧を手に、降りてきた風の精晴月に話しかけていました。
「じゃかじゃん！　一目ぼれして買ってみた！　鷲型カイト！　やってみたかったんだよな、凧上げ！」
「おおきい！　とぶの、これ？」
　晴月の反応に満足そうに、ラッセルは説明します。
「ああ。遊び用の他に農業用の鳥よけでも使えるんだと。つかそっちがメインなのか、わかんねーけど。カッコいいからよし！」
（まー……俺は鳥に変身できるんだけど、凧は凧の魅力あるしさ。やるの小学生以来だー）
「あ、飛ばすのは凧だけだからな。人目もあるし晴月は飛んじゃだめだぞ」
「じゃあ、みえないようにとぶ」
「ダメだって、見えるやつもいるんだから」
　そんなやり取りの後、いよいよラッセルは凧を置き、糸を持って走り出します。
「おお、デカいからか手ごたえが中々……」
　凧ごともっていかれないように、ラッセルは足を踏ん張ります。
「とんだ！」
「飛んだ！　ああ……いいなぁ」
（あ～一緒にとびてー。手離したら意味ねーから無理なんだけど俺が分身しねーかな。）
　晴月に注意したばかりなのに、そんなことを思ってしまうのでした。
「あれ？　晴月どこいった？」
　凧が安定して一安心したところで、ラッセルは晴月を見失い、あたりを見回して千里に気づきました。

「あ。千！　あけましておめでとう！」
（へへ……正月明けは言っちまうよな、何度あっても。ちょっとむずがゆい）
　晴月の姿は見えなくなってしまったので、ラッセルは千里を優先することにしました。
「俺は凧揚げ中だけど千はどこかにいく予定なのか？」
「ああ、サンマさんマンボウくん福袋と初売りを見に行って、温かスイーツ開拓してからダチん家の新年会に顔出しするつもり」
「へ～、寝子島でも幅きかせるんだなー」
　感心したようにラッセルは言い、ちょっとおいて聞きました。
「俺もいっていい？」
　千里も晴月がいなくなったことに気づいていましたが。
（やっぱり白昼夢だったか？）
　追及はしないことにしました。
「いいぞ。その前にその凧俺も上げていいか？」
「もちろん！　風を身近に感じれてホント気持ちいいぜ」
　千里に糸を渡したラッセルは、自分が凧と一緒に飛んでいるところを想像するのでした。