【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年｜リアクション

【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年

☆あなたと新年を　

（新年になった瞬間にお祝いするのは大人になってからのお楽しみ）
　稲積柚春はそう自分に言い聞かせ、いい時間になるのを辛抱強く待ってウォルター・Bを誘いました。
（今の自分らしくワットと楽しく過ごしたいな）

　シーサイドタウンの待ち合わせ場所にやってきたウォルターの頭を、柚春はしげしげと眺めます。
「……何かなぁ？」
　不審そうに尋ねるウォルターに。
「ワットには猫耳が生えたことも犬耳が生えたこともあったけど……今日は何もない？　尻尾も大丈夫？」
　そう言って柚春は念入りにウォルターをチェックして、いきなり頭をわしゃわしゃ。
「ないよぉ。そう言う稲積は……わっ」
「……うん、大丈夫そう」
　そのままウォルターの頭を掴み、額を合わせて、柚春ははにかむ表情を見せました。
「今年もよろしくね」
「ああ、よろしくねぇ」

「シーサイドタウンで楽しんで、メアリさんへもお土産を買っていこう」
　そう言って柚春は歩き出します。
「あんまりかしこまったのだと受け取って貰えないかな？　あっ、福袋だ」
　かぐわしい香りに惹かれて近づいた紅茶屋の店先に、袋が並んでいました。
「わんわん福袋ににゃんにゃん福袋かぁ。２つと４つ？」
　ウォルターも面白そうに眺めています。
「福袋の中身がペアになってるのは面白そうだね。紅茶とお茶菓子のセットがさらにペアで入ってるなら、僕とメアリさんとで分けられて、それはワットに振る舞われるからみんなで分けられるでしょ」
「……そう、なのかなぁ？」
　小首をかしげるウォルター。
「雑貨屋さんの福袋で、ワットとお揃いの物が買えたらいいなとも思うんだけど……」
　思案していた柚春でしたが、。
「やっぱりお揃いは、運頼みじゃなくちゃんと選びたいから。よーし、じゃあ僕は紅茶屋でにゃんにゃん福袋を買うよ。もしワットも気になる物があったら選んでみてね」
「ああ」
　
　にゃんにゃん福袋を買い、柚春はウォルターと合流しました。
「ワット、何か買った？」
　見ればウォルターの手には紙袋があって、興味津々で柚春は尋ねましたが。
「秘密だよぉ」
「えーっ、気になるなあ。何だろう？」
（帰ったら、見せてくれないかな？）
　そんな話をしながら歩いていると。
「肉球書初め、だって」
　犬や猫のいる習字コーナーを見つけました。
「ワットは興味ある？」
「……いや、わざわざ犬の足を墨で染める気はないかなぁ」
「ふうん。みんな肉球に癒やされてるみたいだけど……」
（ワットもぷにもちな感触は好きなのかな？）
　そっとワットと手を繋いでみました。
「……そんなに柔らかくないかな、手触りは悪くないと思うんだけど」
　柚春のつぶやきに、
「僕の肉球が気になるのかなぁ？」
　とウォルターがいたずらっぽく笑いました。
「……いや、僕の肉球はどうかなと思って」
（ワットはあまり癒されてはいないのかな？　でも僕が自信あるのは脚で、ワットが好きなのはお尻だし）
　思案しつつ、柚春は答えました。
「ワットのは大きくて暖かいよ！」　
　このまま手をつないで歩きたいな、と口には出さずに思い。
　ウォルターも手を離そうとはしませんでした。
　
　人通りも増えてきて、知り合いに会ったらなんて言おうかな？　とちょっと気になり始めた柚春。
「メアリさんも待ってるし、そろそろ帰ろうか」
「そうだねぇ」
「実はね、おせちの仕込みを手伝ったんだよ、楽しみにしててね！」
「それは楽しみだねぇ」
　そして二人は星ヶ丘のブラックウッド邸に到着したのでした。