【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年｜リアクション

【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年

〇クルーザーで寝子島めぐり

　三が日二日目。
　元旦に一緒に初詣を済ませのんびり過ごした佐和崎紗月と初瀬川理緒は、星ヶ丘マリーナにいました。
「島めぐり？　素敵だけど……すごく高いよね？」
　話を聞いて驚いた紗月に、理緒は言ったのでした。
「たまには贅沢しよう。格安でクルーザーが借りられるんだって」
　例によってスマホで調べた情報でした。
「そうね。行きましょう」
　理緒の提案に紗月も賛成し、二人はクルーザーを借りに来たのでした。

　格安とはいえそれなりに高いレンタル代でしたが。
「一回払いでお願いします」
　理緒がそう言ってカードで支払うのを見て、
（理緒ちゃんってやっぱり売れっ子なんだ）
　と紗月は感心したのでした。
「後で半分払うね」
　紗月は言い、
「決して安くはないけど、1年に一度ぐらいこういう贅沢はしてもいいよね？　それに三が日終わったらまた仕事なんだから！」
　クルーザーに乗り込み、理緒は紗月に言いました。
（今年も紗月と一緒にいろんなことを楽しみたいな）
　と理緒は思い。
「ほんとにそうね」
（理緒ちゃんと一緒に貴重な休日を楽しめるのは嬉しいな）
　と紗月は思うのでした。

　クルーザーは沖を走り出しました。
「冬の海って荒れてるっていうけど、意外にそんなこともないのね」
　海を見ながら紗月は言いました。
（この前のクリスマスに乗った豪華客船みたいにほとんど揺れない、と言うわけには行かないけど）
「日差しも結構暖かくてよかったわ。さすがに泳ぐのは無理そうだけど……」
「バウ！」
「あっ、見て紗月、わんこがいる！」
「本当、かわいい……」　
　クルーザーに白くて大きな犬が乗っていました。
　お客のペットではなさそうです。
「今年は戌年だから、わんこもセットでついているのかな？」
　理緒の言葉に、
「……そうなの？」
　首を傾げた紗月でしたが、それはさておき。
「わんこ、なでてもいいですか？」
　スタッフに聞き、快くOKをもらえたので頭をなでなでしました。
　もっと撫でて、といわんばかりに頭を摺り寄せてくるわんこに、理緒も手を伸ばしました。
「このわんこは甘えん坊みたいね。なんていう種類かな？」
「サモエドという犬種です。とても社交的なんですよ」
　スタッフが説明してくれました。
「寝子島にいると猫ばかりが目立つけど、この島にも犬は結構いるんだよね。理緒ちゃんは横浜出身だけど、私は地元民だからこの島の猫と犬が仲良く暮らしてるのは知ってるんだ」
　紗月が海を眺めながらしみじみと言います。
「なるほどね。高校から寝子島に住むようになって４年もいるんだし、あたしも寝子島にけっこうわんこがいるのは知ってるよ」
「あ、サーフィンしてる人たちもいるね」
「気持ちよさそう。寝子島ってサーファーに人気なんだってね」

「そういえばこうして島の周りを巡るなんて初めてかもしれない。思ったんだけど、寝子島って意外に大きいんだな、と」
　そう言いながら理緒が紗月のほうに視線を向けると。
「理緒ちゃん！　あそこにイルカがいるよ！」
　突然紗月が海を指さしました。
「えっ、本当？！　……わーっ、ほんとだ！」
　イルカがジャンプする姿に、理緒は興奮しながらスマホを取り出し撮影を始めました。
「夏だったらよかったのにな、そしたら一緒に泳げたのに」
　残念がる理緒を、紗月は微笑みながら見ていました。
「そうだ、SNSに投稿しよう。紗月、隣に来て」
　理緒はイルカを画面に入れて紗月と並び、見事な自撮り写真を完成させたのでした。

　その自撮り写真をSNSで載せると。
『いいね♪』
『奇跡の一枚！』
『二人のハッピーな表情もいい！』
　等々、結構な反響がありました。

　後日、このクルーザーでグラビア撮影することになりましたが、これはまた別のお話です。