【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年｜リアクション

【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年

〇正月のビッグウェーブ！

　三折部朝衣は、去年は町長秘書になったおかげで仕事が多忙になり、趣味のサーフィンはあまりできませんでした。
「でも正月三が日は休み！」
　天気予報では正月三が日快晴で、肌寒くはありますがサーフィン日和。
　おまけに三日間いい波が来る……とくれば、繰り出さないわけにはいきません。
　そんなわけで、現在同棲中の婚約者、洋食レストラン「青猫亭」シェフである住沢遥人と新年初波乗りすべく寝子ヶ浜海岸へ繰り出しました。
「アパートと海岸とは徒歩で５分とかからないから、こんな時には便利よね」
「当然さ。そのためにここに住んでるんだから」

　ウェットスーツに着替えて、二人は入念にストレッチしてから相棒のサーフボードを抱えて海に駆け出しました。
「よっ、あけましておめでとう！」
　海岸には顔なじみのサーファーが何人かいて、もう初サーフィンを楽しんでいました。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
　何人かと新年のあいさつを交わしつつ。
「でかい波だ！」
　遥人が声を上げ、朝衣は彼と共に波に向かいます。
　水の冷たさも気にならず、嬉々として波に乗りました。
　何度もターンを繰り返し、海に落ちてはまた何度も波に挑んだり。
「最高のお正月ね」
「ああ」

　そんな日々が3日間続いて、三が日の最後。
　初日にたくさんいた仲間も減ってきていましたが、新しくやってくるメンバーもいて。
　同じ波は二度と来ないので、三日続けても飽きるということはなく、二人はサーフィンを楽しみ続けていました。
（明日からまた出勤かぁ。そうすればまたしばらくサーフィンはお預けね）
　三が日も町長は動いているので、何かあれば朝衣も呼び出されかねませんでした。
　幸いそんな事態は免れましたが、たまった仕事に追われる日々がまた始まるのでしょう。
　そんなことを思い少し憂鬱になりかけた朝衣の目に、大きな波が映りました。
「遥人、来たわよ！」
「よし、行こう」
　今年最大の波、ビッグウェーブです。
　二人は目を輝かせ波に挑みました。
「三が日の最後にこんないい波が来るなんてね！」
「春から縁起がいいね！」

　最後の波を乗り終えた後、朝衣は遥人に駆け寄りました。
「朝衣？」
　そして遥人の唇に、心の赴くまま不意打ちのキスをしました。
「これが新年最初のキス……今年もよろしくね」
「……こちらこそ、よろしく」

「いよっ、正月からアツいね！」
　気が付けば周囲のサーファーたちが、口笛を吹いて祝福してくれていました。

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