【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年｜リアクション

【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年

〇一月二日　のんびり散歩

「ぶらりと散歩にでも出かけようかな」
　佐藤英二は、そう思い立ちました。
　受験生ですが順調に準備は進んでいるので、のんびり過ごせています。
（あ、どうせなら）
　クラスメートの野々ののこの顔が浮かび、英二はスマホを取り出しました。
「英二です。あけましておめでとう。あの、もしも予定が空いているなら一緒に散歩に出かけない？」
（大晦日には犬になった野々さんと遊んだけど、挨拶はまだだったな）
　電話口からののこの元気な声が聞こえてきました。
『あけおめ～！　英二くん！　うん、行こう！』
　即答でした。嬉しくなりながらも英二は思います。
（あっ、ちなみにデートとかじゃないよ、うん）
　気さくな今の距離感も気に入っているのです。

　ののこと合流し、気の向くまま足の向くままに歩きます。
「いろんなお正月の風景を眺めたい所だね。そういえば、最近は、凧あげしたり、コマ回ししている子供たちとかいるのかな？」
　英二が言うと、ののこは空を指さしました。
「あそこ、凧揚げしてるよ！　行ってみよう！」
「ああ、やってるね……あ、野々さん、待って」　
「ちょっとやらせてもらおう！
　とののこは目を輝かせ、そちらへ向かって走っていきました。
「こんにちは～、ちょっとやらせてもらってもいい？」
　ののこは気軽に小学生に声をかけて、凧あげを楽しむのでした。
「さすが野々さん」
　英二はちょっと驚きつつ、眩しい思いでののこを見ていました。
　
「面白かったー」
「よかったね。旧市街の方にも足を伸ばそうか？」
「うん！　商店街に行きたい。お年玉もらったからちょびっとリッチなんだ～」
「……お父さんから？」
「うん。英二くんほしいものがあったらおごっちゃうよ」
　普段は英二がごちそうしたりすることもありますが、ちょっと考えて英二は言いました。
「いや、野々さんのお年玉だから大事に使って。おごったらすぐなくなっちゃうよ」
　そんな話をしながら参道商店街に着きました。
「おいしそう！　何食べようかな？」
　ののこはよだれをたらしそうに露店を見つめています。
「たい焼きにお団子、ドーナツもあるね」
「うーん迷う、ど、れ、に、し、よ、う、か、な？　……お団子！」
　二人でお団子を買い、１本ずつ食べました。
「おいしかった！　次は射的やろうよ」
　ののこは射的の露店へ向かいました。
「戌年だから景品が犬なんだね」
　なぜかサンマさんを咥えた、かわいい犬のマスコットに狙いを定めるののこ。
　パーン！
　弾はあらぬ方向へ飛んでいきました。
「おっかしいなー？」
「撃つときに銃が動いちゃってるみたいだね」
　様子を見ていた英二は言いました。
「今度こそ！」
　さっきよりはましになりましたが、かすりもしませんでした。
「うーん、おしいなー」
　最後の一発。
　英二も祈るような気持ちで見ていましたが。
　パーン！
「やった！　あれ？」
　当たったのは全然違う場所の、ちょっとブサかわな犬のキーホルダーでした。
「これも可愛いからいいかー」　
「それじゃ今度は僕がやるよ」　
　一発、二発。
　英二の弾も惜しいところではずれましたが。
　パーン！
「やった！」
　狙っていたマスコットに見事命中！
「はい、野々さん、あげるよ」
「やったー、ありがとう！　それじゃこれは英二君に！」
「えっ？　いや僕は」
「交換だよ♪」
「……ありがとう」
　渡されたぶさカワな犬のキーホルダーを、英二は戸惑いつつも受け取るのでした。