【大晦日】猫の島がわんわんわん！｜リアクション

【大晦日】猫の島がわんわんわん！

大団円

　花火が一つ打ちあがるたび、人々の姿が、元に戻っていく。
　最後の花火が打ちあがり終わると、寝子島神社はすべてが元通りに戻っていた。
　お三夜さま、お一努さまはじめ、裏手の森にいた人々や犬たちは、境内で南天の実を打ち上げていた解決部隊の人々と合流を果たした。
「お！　無事戻れたー。花火よかったな……」
　人に戻ったラッセルは、満面の笑顔でお一努さまに話しかける。
「寝子島のアイデンティティなんだ、猫が優遇されてても勘弁してくれ。次会った時にジャーキーでも持ってくるからさ。遊びに来いよ」
「遊びに来るかはわからないけど、もしもそのときがあれば、ジャーキーは食ってやろう」
「やだあ、ツンデレ？」
　照れ隠しみたいなお一努さまに、ラッセルは思わず笑ってしまう。
「お一努さまー取材させてくださいにゃー！」
　突撃取材をしようとするねこねこ記者の首根っこを掴んで、やめときな、と首を振る想花。
　こちらも姿は元通りだ。
　シオとハルキはお三夜さまや狛猫たちを愛で「新しい年、皆が少しでも楽しくあれますように」と祈っている。そういえば、とお三夜さまはハルキに頭を下げた。
「くりすますのぷれぜんと、確かに受け取ったにゃ。ありがとうにゃ」

「あおいに笑顔が戻って嬉しいよ」「修君こそ。大活躍だったね」

　修とあおいは、自然と寄り添いあう。
「姉ちゃん！　あ、兄貴も！」
　あおいの弟のソラが手を振って駆けてきた。
「ソラ！　よかった、元に戻ったね」
「なんだった、あれ。夢か？」
「うん、夢かも。きっとソラもそのうち慣れるよ。寝子島って夢みたいなことがいっぱい起こる場所だから」
　そういって、あおいは修と目くばせしあい、ソラもまじえて夜の屋台へと繰りだして行ったのだった。

◇

「花火、すごかったね、英二君」
　人の姿に戻った野々ののこは、何事もなかったような顔で佐藤英二の隣にいた。
（あ、戻った……やっぱり野々さんだったんだ。犬だったときのこと覚えてるのかな）
　わからない。でも、どっちでもいい。野々さんと一緒に年越しできるなら。
「もうちょっと、一緒に楽しまない？」
　英二が手を差し出すと、ののこは笑ってその手を取った。
「うん！　もっと食べよう。豚汁も、お団子も、甘酒も、まだ食べてないんだー」
「いいよ。野々さんの気が済むまでお腹いっぱい食べよう。付き合うよ」

　――カウントダウンがはじまった。

「あ、野々さん、年が明けるよ――」
「うん、カウントダウンしよう、英二君！」

◇

　宮祀智瑜も、桐島義弘先生の隣でカウントダウンを迎える。
「ほら、先生もいっしょに。――５、４、３、２、１！」
　あけましておめでとうございます、の声が、合唱みたいにあたりに響く。
　智瑜と義弘先生もお互いに頭を下げて「あけましておめでとうございます」を伝え合う。
「先生の今年の目標は何ですか？　私の目標は義弘先生の恋人になる事です。応援してくれますか？」
　喧騒に紛れて、智瑜はとんでもない告白をした。
「卒業したらいっぱいデートに誘う予定です。もう生徒じゃないから積極的にいきますよ」
「あのな……」
　義弘先生は智瑜を睨むが、困っているのか照れているのか、少し頬が赤らんでもいるような気がする。智瑜はほっぺたを膨らませる。
「ビーチスターズコンテストで『義弘さん大大大好きです』って告白したのに返事は卒業までおあずけ？」
「おあずけだ。俺の職を奪う気か」
　相変わらずいけずな義弘先生だが、少し笑っているから……。
　脈なしではないと、信じたい。

◇

「今年も一番最初に珪さんに新年のあいさつが出来て嬉しいです」
　綾辻綾花と早川珪は、「今年もよろしくお願いします」と新年のあいさつをし合うと、正月飾りの屋台の方へ向かい、同じ犬の飾りのついたしめ縄を買い求めた。
「寮の玄関に飾るといいでしょうか……珪さんは？」
「僕もこのしめ縄を玄関に飾るよ。僕も君も、今年一年、無病息災、良い年であるといいね」

◇

　きとりは、頭の上のいぬみんを優しくなでて、これらの光景を見守っていた。
「敵も味方もなく、最後は団らんできて、よかったです」
「そうだねー」
　きとりといっしょに、幸次も猫に戻った花遊を抱いて笑っていた。
「あはは、これだけ動いたんだから明日は筋肉痛だな！　花遊！」