【大晦日】猫の島がわんわんわん！｜リアクション

【大晦日】猫の島がわんわんわん！

お三夜さまとお一努さまを追え！

　同じころ。
　寝子島神社裏手の森では、犬たちの盛大なおいかけっこが繰り広げられていた。
　万条幸次は走りながら、周りの犬たちにリサーチ。
「犬たちにきいたら、先頭にいるのは犬になったお三夜様で、犬のリーダーが打倒するべく追いかけてるって」
　子犬になったお三夜様は、自らの領域という地の利を生かして小回りを利かせて逃げ回っているが、体格差やスピードから考えると圧倒的に不利だ、と幸次は考えた。
「花遊、一緒に先頭に出よう」
「なんだよやる気だな」
「どこまで行けるかはわからないけど子犬を咥えて俺が走った方がまだ逃げられる可能性はあるはずだよ」
　なるほど、と花遊は頷く。
　こうやって追ってるばかりじゃ疲れるだけでつまらない。
　お三夜さまを確保して逃げるほうが面白そうだ。
「よっし、行こうぜ幸次！　一之助、ハルキ！　犬たち足止めできるか？」
「やってみるでござる」
「お三夜様を頼むよ」
　幸次と花遊が、おいかっけこの先頭と思われる方へのショートカットルートを選択したのと同時、一之助とハルキは犬たちの流れを断ち切るように、撹乱するように動く。
「一之助さん、そっちに！」
　ハルキが指示した方向が陽動であると気づき、一之助は「こっちでござる、ついてくるでござる」と犬たちを導くように駆けてゆく。
　一之助について行かなかった犬たちへ、ハルキは屋台で買い求めてあった巨大ブラシを掲げた。
　何に役立つのかと思ったブラシだが、ここにきてブラッシング攻撃の武器であることが判明した！
　わーしわしわし、ゴシゴシゴシゴシ！
（これに動じないしっかりものの子犬いたら目をつけとこ。番犬と癒し候補に）
　などと、飼い犬候補のリサーチも忘れないハルキである。

◇

　一方、おいかけっこの先頭に躍り出た幸次と花遊は、ちょこまかと逃げ続ける小さな黒い仔犬を見つけた。
「お三夜様！」
「なんじゃ、おぬしらは」
「助けに来ました。これから首咥えるけど、我慢してくださいねー」
　言うが早いか、甲斐犬の幸次は力強くお三夜様を咥える。
　花遊に目くばせすれば、白黒のボーダーコリーの彼は落ちていた丸太を咥えてお三夜様を咥えているかのように偽装をし、お三夜様を追いかけてきていた犬たちを別の方へと誘導していった。
　みんなの協力もあってうまく犬たちを撒いた幸次は、お三夜様をおろして木のうろの中に隠した。
「花遊がうまくやってくれたみたい。すこしここに隠れてようねぇ」

◇

「おい。お三夜はどこだ！？」
　すっかりハルキたちに攪乱されていたお一努さまと犬たちだったが、ようやくお三夜様の不在に気づいたらしい。いきり立ったお一努さまは浮足立つ犬たちを統制しようと「あおーーーん！」と遠吠えをした。
　が、それが、運の尽きであった。
「発見。君が犬たちのリーダーのお一努だね？」
　ハルキががっしりと背後から柴犬頭の青年なお一努さまを取り押さえる。
「だめだろ、こんなことをしちゃ。季節性の病持ち込みはもってのほかだ」
「な、なんだお前は！　季節性の病ってなんのことだ？」
「１２年に一度、戌年が来るたびにお三夜様に勝負を挑んでいるんだろう？　季節性の病みたいなものじゃないか。それは、恋っていう名の病じゃないのかい」
「鯉？　いや、オレは魚は食わないが」
「そのコイじゃないよ」
　ハルキは、わしゃわしゃわしゃーーーっと勢いよくお一努さまをブラッシングし始めた！
「ぎゃなにを！　オレをどうする気だ……んん、そこっ、気持ちいいぞ、もっとだ！」
「嫌われていいのか。そっぽ向かれてもいいのか」
　お一努さまがお三夜さまへの恋心の裏返しとして１２年に一度やってくるのだと信じて疑わないハルキは、
「先ず大事なのは身だしなみだろっ！｣
　とブラッシングをしまくる。
（めちゃ適当だけど！　自信たっぷりに言ってやるね。間違いでもないし）
　体中くしけずりまくって、お一努さまの毛並みがつやつやピカピカになるとハルキは満足げに汗を拭った。
「ふう！　これでよし！」
「こ、これが、オレ……？」
　差し出された鏡を見て、美容整形をした女子みたいな反応をするお一努さま。見とれているようだ。
「こーらー」
　狗民きとりがぽてぽてと駆けてきた。
「お一努さま！　めっ！」
　きとりが、全然いたくない拳で、ぽかっとお一努さまの頭を叩いたその時。

　どおん、と盛大な花火が、寝子島神社の上空にあがったのだ。

このページにイラストを設定する

【大晦日】猫の島がわんわんわん！

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧