喫茶Rainyの危機～謎のスイーツ消失編～｜リアクション

喫茶Rainyの危機～謎のスイーツ消失編～

「紅茶は温めたポットで3分、ミルクティーなら濃いめに煮出すのがコツ。柚春さん、もう少し待っててね」
　紫にはブラックコーヒーを。ラッセルと龍樹、頼子にはミルクたっぷりのカフェオレが出された。
　砂糖はお好みで。……龍樹と頼子はたっぷりと。ラッセルは角砂糖をひとつ。
　紫はノンシュガー。スイーツを食べる際は砂糖を入れない――彼女の密かなこだわりだ。
「うん、うまい！」
「お菓子の家も可愛らしいし、コーヒーの苦みとよく合っている……なにより、コーヒーがまろやかな口当たりで飲みやすいわ」
　布をフィルターにした抽出法によって、コーヒーの旨みが出やすいのもネルドリップ製法の特徴。
　繊細な風味を紫が楽しむ傍ら、ラッセルもブッシュ・ド・ノエルの一切れを頂く。

「へへー♪　いっただきまーす！　――んん、美味い！」
　クリスマスカラーなだけで気分もアガるのに、その上、味も最高！
　チョコシロップの沁みたスポンジと、ビターなココアパウダーがいい塩梅。彼の舌を唸らせた。
　そして、
「柚春さん、おまたせ。紅茶の風味が引き立つよう、ミルクインファーストにしたよ。お砂糖はお好みでね」
「はい、いただきます！」
　教わったとおり、紅茶にジンジャーブレッドを浸して、口に運ぶ。
　シナモンなどのスパイスが利いたお菓子に、ミルクティーの味わいが加わったことで、チャイ風のお菓子のよう。

　それをラッセルが不思議そうに見ていた。
「紅茶にお菓子を浸けるのか？　珍しい習慣だな」
「ダンキングって言うんですよ。固いお菓子も食べやすくなるし、お菓子が紅茶に溶けて美味しくなるそうです」
「へえ、私も試してみようかしら？　今日は甘慈さんのおもてなしを楽しみたいから、家に帰ってからね」
　紫もコーヒーの楽しみ方に一家言あるだけに、柚春の楽しみ方に興味を示す。
　温故知新。どこかの習慣が、新たな地に根付くこともある。

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