翼求エレベーティング｜リアクション

翼求エレベーティング

【果て】

『そんなことしたって、今さら無駄じゃない？』
『…………』
『このまま落ちて、落ちて落ちて落ち続けて、最後は……ぐしゃっ。終わりだよ、僕もお前も』
『うるせぇ……』

『ロベルト。ロベルト……』

『お前は俺の……親友だった。そうだろ？　そうさ。俺はお前のことならなんだって分かってる。親友だからな』

『ああ、分かってるさ。お前は悪くない。お前がそんなふうになっちまったのは、お前自身の問題じゃない……そうだ、きっと世の中が悪ぃんだ』

『なあ、見てるか？』

『心配すんな。お前は治る。お前は病気じゃねぇと頑なだけど、焦ってるだけだ。気にするな、焦ることねぇんだ』
『ほんと、しつこいよねお前。しつこいし馬鹿だよね。医者がいるのはお前だってば』
『うるせぇ、黙ってろ』

『俺は……待ってたんだぜ。お前が自分で気づくのをよ。お前は終っちゃいない、まともになれる。遅くないんだ』

『思い出せよ。俺たち、上手くやってたろ？　楽しかったじゃねぇか、なぁ？』

『親友だったんだ。かけがえない……お前みたいにいいヤツはいねぇよ。楽しかった。楽しかったんだ……』

『それを…………』

『それを、お前が……』
『ああ、地面まであとどのくらいかな。あと一分？　三十秒？　死ぬってどんな感じだろうね、叩きつけられて、全部がぐしゃぐしゃに砕け散るんだ。僕もお前もバラバラになって、混ざり合うんだ。それってどんな感じ……痛った！　殴ることないだろ！』
『うるせぇ……うるせぇ、うるせぇ』
『あ、ちょっ、やめ……あ、が、ぐっ』
『うるせぇ。うるせぇ、うるせぇ、うるせぇ、うるせぇ』

『……お前が……ぶち壊した！！』

『俺は普通だ。俺になにを求めてたんだお前は、勘違いしやがって、気色悪ぃんだよ！　気色悪ぃんだよ……』

『俺は……普通だ。美少年だか知らねぇが、そんなもんで勃たねぇよ俺は。俺は女が好きだ。付き合ってる女もいる。何人もな。普通だろうが……なぁ？　俺は普通だろうが！！　おい！！』
『………………』
『異常だよ、お前。異常なのはお前。俺じゃない。普通だ。普通だ……俺は……』

『普通の俺に、サカりやがって……変態野郎。クズ野郎』

『……許さねぇ。許されると思ったのか？　許すわけねぇだろ』

『死ね。死んじまえ』

『俺と同じ目に遭えばいい』

『死ねよ。死んじまえ。死ねよ、死ね！　死』

　ふたりの青年がエレベーターもろともに白い大地を抱きしめ、赤く一体となる動画はしばしねこったーのタイムラインを騒がせたが、すぐに削除され、執拗に話題が広がることもなく、風のようにかすれて消えていった。
「さーて！　今日も張り切って、美少年ハントだ！」
　ロベルトが件の動画を目にすることは、ついになかった。

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あとがき

担当マスター：墨谷幽
ファンレターはマスターページから！

　墨谷幽です。『翼求エレベーティング』のリアクションをお届けいたします。

　心の底からの言葉、ってなかなか口にできないものですよね。
　嘘をつくのとはまた違って、なにかを語る時には無意識に自分の心を守ってしまうのが、人間というものかなとも思います。
　私が小心者であるがゆえにでしょうか。皆さんは、いかがでしょうか？

　今回はプライベートシナリオながら、飛び入りでもご参加いただきまして、大変ありがたく思います。
　お楽しみいただけておりましたら幸いです～。

　それでは、今回もご参加いただきましてありがとうございました。
　また次のシナリオでお会いできますことを、心よりお待ちしております。
　お疲れさまでした～！

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