上る昇る果てへのぼる。尽きぬ速度朱の光震える箱。
ささやきうめきあざわらい全てがぼくを刃と刺す。
ここはどこだあれは何だワレはいずこ胸に問う。
ただのエレベーターであって特筆すべきものもない。上昇してゆく間、
ロベルト・エメリヤノフも
千種 智也も意識は目を落とすスマートフォンの画面にあった。
古くて錆びがかり年季が入っている。足もとへまるで容赦のない振動が伝わる。時おりカゴは軋み、ロープのしなる音が異界の生物の鳴き声めいて響く。
高校三年生だった。いずれ慣れ親しんだ学び舎を出、目にもまぶしいキャンパスで新たな生活へ埋もれてゆくだろう。ずぶずぶと沼のように。
突然、振動が止んだ。
「あれ。止まった?」
「止まったな。ちっ」
智也は舌を打ち、不安げにこちらを向いたロベルトとちらと目を合わせた。長く合わせてはいなかった。自然とそらしたからでもあり、エレベーター内の照明が一瞬落ちたからでもあった。
「……あ?」
再び灯った明かりはやぼったいくすんだ白ではなく、鮮烈に赤い色をしていた。
「なんだこれ……」
古くとも、少なくとも近代的なエレベーターであったはずだ。
刹那の停電を挟んで、一変していた。カゴは四方を鉄格子で囲んだような簡素な箱で、ビルの内壁は無くなり、扉の向こうは中空となっていた。
赤い。朱の光は満ち、智也の目を射る。ここはどこだ。寝子島の街並みや見覚えある建物のひとつはおろか、地平線すら見えない。
頭上を見上げると、頼りなげなロープが滑車を噛み、きりきりと耳ざわりな音を立てながら上昇している。
「あのロープは有限だよ。当たり前だけどね。昇り続けていればいずれ寸断されて、真っ逆さま。ま、即死だよね」
「……ロベルト?」
くすくすと笑みを含む。目の前にいるのは彼だろうか。
それとも、この奇怪な空間に付随する別種のナニカだろうか。
智也は嘲りに目を細む。心がつまらない冗談だと断ずる。
「エレベーターには非常止め装置って、安全装置があるんだよ。衝撃緩衝器だってある。ロープが切れたくらいで死にゃしねぇよ。馬鹿か?」
「馬鹿はお前だよ」
嘲られているのは自身だと気づく。ロベルトの細めた瞳も。朱色の空に満ちるささやきも。地から沸き上がるうめきも。耳元に聞こえるかぼそい慟哭も。
全てが智也を刺すように響く。
「僕はそんな近代的かつ人道的で安心安全なエレベーターの話なんてしてない」
朱の光が後光よろしく紫の髪を照らす。
「このエレベーターの話をしてる」
上る昇る果てへのぼる。鎖支え断つは物言わぬため息。
ささやきうめきあざわらい全てがぼくを刃と刺す。
下を向くな上を見ろ。刺して断て胸を抉れ言の葉よ。
墨谷幽です。よろしくお願いいたします~。
ロベルト・エメリヤノフさん、千種 智也さん、プライベートシナリオの申請、まことにありがとうございます!
大変お待たせいたしました……!
ガイドのイメージによらず、どうぞご自由にアクションをおかけくださいませ。
なお、このシナリオには飛び入り参加枠もありますので、
もしご興味を持っていただけた方はぜひ、ご参加くださいませ。
このシナリオの概要
あなたは、上昇し続ける奇怪なエレベーターの中にとらわれています。
神魂の影響なのか、あるいは霊界と繋がってしまったのか、わかりません。
エレベーターには、ボタンや階数表示などはありません。
また内部には、テーブルや椅子が置かれていたり、あなたに関係のある物品が用意されていたり、
あるいはなにもなかったりします。
通常の方法で止めることはできず、どんどん上昇していきます。
あるところまで上昇すると、カゴを吊っているロープが切れて落下し、
中に乗っているあなたは死んでしまうでしょう。
★ニセモノ
エレベーターには、あなたがよく知る人物とそっくりなニセモノが同乗しています。
ニセモノは姿や声、口調などもそっくりですが、
性格はそのままのこともあれば、別人のように正反対なこともあるようです。
登録PCのニセモノを登場させる場合、双方が参加し、GAを組んでいる必要があります。
★脱出の条件
ニセモノが、このエレベーターから脱出する条件を教えてくれます。
いわく、
「常識や偏見、倫理道徳などに囚われず、心の底から嘘偽りない相手への感情」
を語れば、上昇は止まり、元の場所へ戻れるとのこと。
★イベント
エレベーターが上昇する間、時おり突発的な出来事が起こることがあります。
・エレベーターが止まる
・エレベーターが突然、すさまじい速度で下降する。
・カゴの格子に無数の鳥が激突してくる
・いつの間にか、後ろに知らない誰かが立っている
・どこからか、自分を呼ぶ声が聞こえてくる
などなど、多くはホラー的なドッキリや脅かしなどですが、
自由に指定していただいても構いません。
NPCについて
NPCは、登録済みのキャラクターでしたら誰でも登場可能です。
また、墨谷のシナリオに登場したNPCでしたら、登録・未登録問わず登場OKです。
ただし、不自然でないシチュエーションに限ります。登場が難しい場合もありますので、ご了承ください。
こんなNPCと絡んでみたい、なんてリクエストがありましたら、お気軽にご指定ください。
細かく指定もOKですし、マスターにおまかせもOK。
Xキャラクターも登場可能です。
口調などのキャラクター設定は、アクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いていただければ大丈夫です。
以上になります。
それでは、ご参加お待ちしております~!