【終業式】課題をクリアして冬休みを死守せよ！｜リアクション

【終業式】課題をクリアして冬休みを死守せよ！

　フジコ先生は小指を立ててマイクを持ち、生徒達の間を歩いて回る。
　近くにいた男子は視線を下げた。フジコ先生は横目で見て微笑む。
「スピーチはチェリーなのね」
　あっさりと男子の横を通り過ぎた。
「誰がいいかしら」
　フジコ先生は腰を振りながら歩いてゆく。
「あなたなら上手くやれそうね」
「あたしですかぁ？」
　夢宮瑠奈は寝起きのような声で小首を傾げる。左耳の後ろで結んだ髪が小動物の尻尾のようにゆらりと揺れた。
「そう、子猫ちゃんよ」
「あたしなりのスピーチになるかなぁ」
　マイクを受け取ると、っしょ、と小さな掛け声で立ち上がった。
「それでは思ったことを話すねぇ」
　慣れた様子でマイクを口元に近づける。
「小さな島に大きな夢　詰まっているよ　猫がいっぱい　幸せいっぱい　胸いっぱい　みんなの笑顔　咲かせるよ」
　歌詞のような言葉が紡がれる。歌うような抑揚が加わると瑠奈の身体がスイングを始める。スカートは軽やかに揺れ、優しい声に生徒達の頭も自然に揺れた。
「困った子猫ちゃんね」
　フジコ先生はリズムに乗るように身体を動かした。
　その声が切っ掛けになって瑠奈は周囲に目を向けた。
　――もしかしてあたしの声で眠気がきたのかなぁ。目覚めるとは思うんだけど、どうしよう？
　深く考える前に声となった。
「おっはよー！」
　よく通る声は講堂内に響き渡る。びっくりした様子で生徒達の頭が跳ね上がった。
「な、なんだ！？」
「びっくりしたー！」
「え、な、なに？」
　瑠奈は最後に、あは、と笑ってマイクをフジコ先生に返した。