愛の実は心になる｜リアクション

愛の実は心になる

　皆がようやく落ち着いた頃にはすでに周囲が明るくなり始めていた。
「人の願望や希望を映していた泉が、いつしか悩みや憎しみしか映さなくなり、そして積もりに積もった負の念が泉を化け物へと変えてしまったんだな。」
　双葉は自分なりの結論を述べた。
「それで泉の場所が明確に記されてなかったのか」
「まさか泉があんな化け物になっているなんて思わないわよね」
　八神と尾鎌もそれぞれに意見を交わしあっている。
「再び人間の希望を見せてやったことで負の念をかき消したか。でも、これまでに積もった負の念がそんな簡単に消えるものかい？」
　晴海が不思議そうに尋ねる。
「それだけ強い願望パワーを感じたんだろ」
　民谷が呆れたように肩をすくめてコウを見ると、他のメンバーの視線もコウに向けられた。
「恥ずかしいほどの欲望とパワーだったのだ！」
「言うなぁ！」
　じゃれ合う後木とコウ。
　そこへ愛美が歩み寄る。
「ねぇ」
「ん？　お、おう」
　背後の愛美に気付いたコウが硬直する。
「ありがとう。助けてくれて」
「べつに……礼なんていらねぇよ」
「神隠し……ほんとにあったね」
「でも、木下の言うように今はもう泉ではなかったけどな」
　互いが目を合わせようとせずによそよそしく話す。
　その様子をみんながニヤニヤしながら見つつ、二人から後ずさりするように離れた。

「随分いい雰囲気じゃん。あの二人」
「あれだけ盛大に告白したんだ。照れてないで一気に行け」
　中でも八十八旗と民谷は期待に満ちた視線を向けている。
　そんな二人の頭をコツンと小突いたのは御剣だった。
「それくらいにしておけ」
「なんだよ～。協力したんだからこれくらいの興味はいいだろ～」
「他人の恋路に興味持つなんて野暮もいいところよ。ほらほら」
　尾鎌が面々の背中を押し、一行はその場をあとにした。
　残されたコウと愛美のそばでは小さな泉が穏やかな光を放っていたという。

　人間にとって心の拠り所だったはずの泉が、嘆きや苦しみを映し出しているうちに意志を持ち、そしてシンムという妖怪へとなった。
　今回はここにいる者達の活躍によってシンムを解き放つ事ができたが、また人間の心が荒み始めた時、泉はシンムとなって人間を呑み込んでしまうかもしれない。

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あとがき

担当マスター：裕竜
ファンレターはマスターページから！

　ご参加ありがとうございます。裕竜です。
　なんとか2作目も完成させることができました。

　参加していただいたみなさんと同じく、私も今回は少し冒険した内容になったので不安な出足となりました。
　前作でも思ったことですが、みなさんのアクションがこちらの想像を上回るものばかりで助けられています。
　もっと描きたい部分もまだまだあったのですがご覧のとおりにまとめさせていただきました。

　コウの未熟な部分をみなさんがカバーしてくれたおかげで、きっと彼も男として成長したことでしょう。
　その後愛美とどうなったのかはご想像にお任せします。

　また次回作でもお会いできれば嬉しいですね。
　どうもありがとうございました。

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