愛の実は心になる｜リアクション

愛の実は心になる

　一年普通科二組の木下愛美が神隠しに遭った。
　彼女の机に残されたノートには九夜山の神隠しに関するメモが残されており、その件で口論となったクラスメイトの我沢好は責任を感じ、彼女を救うメンバーを募集。
　彼のもとには九名の生徒が集った。

　放課後の校庭。
　コウは揃ったメンバーを満足気に見つめた。
「はいはーい。簡単に自己紹介してね～」
「晴海飛鳥。二年生」
「御剣刀。一年生だ」
「一年普通科四組の民谷鋭二。よろしく」
「どうもありがとう！　俺は八十八旗信彦。今回の主役、コウ君と愛美ちゃんのクラスメイトであり学級委員やってまーす！」
　声高らかに挨拶する八十八旗にコウが詰め寄る。
「なんでお前が仕切ってるんだよ……」
「細かいこと気にすんなよ。メンバーってこれだけ？」
「残りはそれぞれに準備があるからあとで合流するってさ」
「ふ～ん。それにしてもさぁ」
　八十八はコウの肩に腕を回しながら顔を近づける。
「らしくないじゃん。これだけ人集めたりしてマジになるなんてさ」
「べつにそんなんじゃねえよ……」
「愛美ちゃんのことがそんなに気になるかぁ」
「ん？　なんだ。二人ってそういう仲だったのかい？」
　間に入ってきたのは晴海。
　静かな口調ながらもその目は好奇心に満ちている。
「よく知らないんだけどね。好きな女子をからかったのが発端らしいし？」
　茶化す八十八旗を押しのけたのはコウではなく民谷鋭二だった。
「我沢。木下の写真は持ってないか？」
「木下の写真？」
　途端にコウの顔が赤くなる。
「ななな、なんで俺があいつの写真持ってなきゃいけないんだよ！」
「ああ、持ってないならいいんだ。落ち着いて」
　コウの動揺はおさまらないが、
「どうでもいいがそろそろ出発しないか？」
　御剣の意見にようやく落ち着きを取り戻すと、みんなと一緒にロープウェイ乗り場へと向かった。

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