「九夜山の神隠し」
九夜山のどこかに小さな泉があり、覗きこんだ人間を呑み込んでしまう。
寝子島に残る昔話のひとつで、現在では知っている人間もいなくなったと言われている。
1年生普通科2組の教室。
「あの九夜山にそんな泉があるのかよ」
「本当だったらこえぇな」
クラスの男子達が話しているのを、木下愛美は自分の席で聞きながら心の中で笑っていた。
(そんな泉あるわけないじゃない)
そんな愛美の様子に会話していた男子の一人が気付く。
彼の名は我沢好(がさわこう)。
クラスメイトからはコウと呼ばれるお調子者だった。
「木下、お前いまバカにしただろ~」
「だって九夜山にそんな泉なんてないもの。ば、バカじゃないの……」
「なんだと~?」
愛美とコウの言い合いを聞いたほかの生徒達も集まりだす。
(なんで集まってくるのよ~。クズばっかなんだから)
うつむいてしまう愛美にコウが、
「だったら神隠しが嘘だって証明してみろよ」
とんでもないことを言いだす。
それを見ていた他の生徒達が止めに入る。
「おい、もうやめておけよ」
男子達は愛美から離れるとヒソヒソ話を始める。
(馬鹿にして……)
教室中の視線が向けられているような錯覚に耐え切れなくなった愛美が立ち上がる。
「いいわ……証明してやるわよ。楽しみに待ってなさい!」
愛美の勢いに教室内は静まり返った。
数日後。
愛美は九夜山へとやって来た。
もちろん理由は神隠しの泉を見つけるためだった。
だが、奥へ進んでいるうちに道に迷ってしまった。
「メモを書いたノートさえ学校に忘れてこなければ迷わないのに」
やがて陽も沈み始めて薄暗くなると不安にかられ始める。
そんな彼女の前にそれは突然姿を現した。
澄んだ水なのに底が見えず、どこか光を放っているようにも見える。
人間を呑み込んでしまう泉。
(そんなバカな話があるわけないわ)
自分に言い聞かせて泉を覗きこんでみる。
周囲を時間が止まったかのような静けさが包み込む。
だが、いつまで待っても何かが起こる様子もなく、強張った表情が次第に緩み始めた。
「ほらね。あるわけないのよ」
気が済んだのか帰ろうとしたその時であった。
突然泉がまばゆい光を放ち始めた。
「え?」
驚いた愛美は小さく声をあげて尻もちをつく。
そんな彼女の前に現れる黒い影。
「な、なんで?」
そして愛美は姿を消した……。
愛美が姿を消してから数日後。
自分の発言がきっかけになったのではと心配するコウは、愛美の机の中から一冊のノートを発見する。
そこには「泉の自分に呑み込まれる」という言葉と、九夜山の地図上に一ヶ所印がつけられたメモがあった。
「あいつ……本当に九夜山の泉を探しに行ったのか?」
妙な胸騒ぎを覚える。
「まさか本当に神隠しに」
コウは神隠しの真相を暴き愛美を救うべくメンバーを募ることにした。
こんにちは、裕竜です。
ちょっとした言い合いから九夜山の神隠しを探ろうとして消えた木下愛美。
最近寝子島高校の生徒の間で度々噂されていた昔話が現実となった?
愛美が残したノートには彼女が独自に調べたらしき神隠しに関するメモが残されていた。
それによると泉は九夜山の三夜湖より西にあったのではとされている。
自分が余計なことを言ったせいで愛美が神隠しに遭ってしまったと信じ込んだコウは、
泉を見つけ出して愛美を救うため協力してくれるメンバーを募集。
興味本位でも神隠しの真相を探ろうとする人、
ただこの騒動を楽しみたいだけの人など、参加理由はなんでもOK。
ぜひみなさんにもメンバーの一員として参加していただければと思います。