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冱子は席を外した。
他の客はやはりない。陽太と根積はソファにならんで座っている。さきの黒ブチ子猫がまたソファに乗り、にゃおんと声を上げて根積の膝に頭をこすりつけた。他にも数匹、なんとなく近づいてきている。
もちろんここはくつろぐ場だ。小一時間は根積とも深刻な話はせず、天気の話などで間をもたせた。
猫に好かれている以上、根積さんは悪い人じゃないと思う。
根拠はないものの、そんなことを陽太は考えている。
でもここにいるのがマウスだったとしたら、どうだったろう。
ちびちびとキャラメルマキアートを飲む根積を前にして、陽太は言葉を選びつつ話しかけた。
「先日の暑中見舞い、ありがとうございました。返信できなくてすいません」
「私こそ失礼しました。返信しようのない出し方をしたんですから。むしろ怖がらせたり気味悪がらせなかったんじゃないかって気にしてましたよ」
夏のある日、陽太の専門学校の席の引き出しに根積からの葉書が入っていたのだった。住所はなく、ただ名前だけが書いてあった。
「そんなことないです」まったく、と陽太は手を振った。葉書を読んで、根積が元気でいるとわかり安堵したものだ。「あの葉書、『ねこのしま』のグッズですよね? 鈴木さんの描いた」
「わかりましたか。表情が気に入ってしまって即購入しました。ペンのタッチはもちろんですが、水彩調の色使いもいいですよねえ。鈴木さんはプロのイラストレーターになってもいいくらいだと私思うんですよ。ああそうか、グッズを売っているから実際にプロフェッショナルとも言えますか。これは失礼しました。今日も何枚か買って帰ろうかと……」
「それで」話し出したら根積は止まらないので、陽太はあえて言葉を差し挟んだ。「最近のナターシャさんのこと、ご存じですか?」
ナターシャ・カンディンスキー、凄腕エージェントと引っ込み思案な女子、ふたつの顔をもつ人物だが彼女も、根積同様にDUALであり、やはり根積同様、陽太とは因縁浅からぬ関係だった。
「いえ。私とはDUAL仲間ではありますが、新生活をいとなんでいるあの人を邪魔する気はないので」
だったら伝えておくべきだろう。
「実はナターシャさん、もうひとりの人格と分裂したそうなんです」
根積が仰天したのがわかった。「そんな」と言ったきり饒舌な彼が黙ってしまったのだ。演技ではあるまい。
簡単ながら陽太はナターシャに訪れた変化を話した。彼女の第二人格は『クリス・高松』と名乗り、ハローニャックの店員として働いていたのだが、同時に本来のナターシャも自我をたもったまま寝子島で暮らしているという。身長百九十センチ近いロシア系女性ナターシャ・カンディンスキーが現在、別名義とはいえ別個の人間として同時に寝子島に存在しているのだ。
「双子のようになってしまったと」
「一言で言い表せばそうなります」
陽太はナターシャともクリスとも親しいつもりだ。クリスとはひょんなことで知り合って以来、何度も顔を合せ事情を聞いてきたし、ナターシャも『我々は分裂したらしい』という重大ごとをまっさきに陽太に知らせてくれたくらいだ。
ナターシャは当初、自分は消えてクリスが本体になればいいと思っていたようだ。実際そう口にしていた。それでも陽太は彼女にも、もちろん現在クリスと名乗っている第二人格にも、生きてこの世界に存在してほしいと願っていた。まさかこんな急に実現するとは思ってもみなかったが現状は歓迎したい。
といった考えを述べたうえ、陽太は根積にこう言ったのである。
「同じことを、俺は根積さん
たち
にも考えています」
「とおっしゃいますと」
根積は問いかけのかたちこそとってはいたが、陽太が次に何を言うのか予想できていたらしい。だから驚くことはなかった。
「俺は、根積さんとマウス、両方に生きていてほしいんです」
立ち入ったことをうかがいますが、と陽太は告げた。
「根積さんはいまも、マウスと別れたいと思ってるんでしょうか?」
黙ったまま、根積はキャラメルマキアートを口にした。ゆっくりと店内を眺める。
それから言った。
「呉井さん、私にとってあいつは、がん細胞のようなものです」
「がん細胞、ですか」
「呉井さん、あなたは私の半分以下のご年齢ですが、勇気も洞察力もおありの立派な方だと尊敬しています。これ、おべんちゃらじゃないですよ。本心です。呉井さんやあなたのお友達のおかげで私はどれだけ救われたか……。だからこんなことを申し上げるのは心苦しい。心苦しいですが言わざるを得ないんです。がん細胞とは仲良くできませんよ。しかもマウスは犯罪者です。私のネガティブな心を吸って、それを過剰な暴力で発揮してきたモンスターです。モンスターとは共存できない。共存を試みても食われてしまうだけですからね」
「でも根積さんは、マウスになっていたときの記憶はないんですよね?」
「ええ、ありません。だから私、春頃から調べましたよ。殺人くらいやっているはずと決めつけていましたが不幸中の幸い、あいつが実際に人を殺したことだけはまだないとわかりました。ですが、あいつは寝子島署の刑事を骨折させたり誘拐騒ぎを起こしたり、島でも有数のホビーショップで大暴れして怪我人を出したこともある。あいつがこれ以上出張る気なら、私はあいつともども心中する気持ちでいます」
相変わらず多弁ではある。だが、だらだらと語っては結論を出さず煙に巻くような話法を好む根積とは思えないほどきっぱりした内容だった。
「だけど聞いてください」
陽太も言わずにはいられなかった。
「自分と正反対のものって、なかなか受け入れがたいものでしょう。でも、マウスはマウスで……すっごく辛そうなのをオレは知ったんです。根積さんの記憶がないところで、マウスだって苦しんでいます」
根積の反論がくるより前につづけた。
「マウスは力が強大すぎて、それが原因で本体の根積さんを追い詰めてしまうようですが、それでも、司法に委ねるのは難しいにしても、『彼』にも反省なり、贖罪なりする機会を与えてあげてほしいんです。オレ、若造で人生のなんたるかなんてわかってません。けど、少なくともマウスは、根積さんのこと追い出そうとか体を乗っ取ろうとか思ってないって知ってます。それどころか根積さんを守ろうと、必死だったと思ってます」
「マウスが私を……守る?」
「思い当たる節はありませんか」
「つい最近ですが」
根積は重い口調で明かした。アイスピックを握る少女に襲われたこと、空飛ぶ少女が割って入ってその場は崩壊したことを。
でしょう、と陽太はつづけた。
「だからマウスを許せとか受け入れろ、ってオレは言いたいんじゃないです。ただ、根積さんが自分の分身と、拒絶するようなかたちで別れるのはつらいな……なんて思っちゃったんで。怒らせてしまったとしたらすいません」
陽太は頭を下げた。数十年マウスと付き合ってきた根積に、せいぜい二年程度の知己でしかない自分が言うには余計なお世話すぎるかと思ったのだ。怒鳴りづけられても仕方ないと考えていた。
ところが根積は落ち着いていた。しばらく考えたのち、
「……呉井さん、あなたはもしかしたら古代の聖人の生まれ変わりかもしれませんね」
しみじみと言ったのである。
「そんな聖人だなんて」
大げさすぎますと陽太は否定するも、根積は手でも合せそうな様子だ。
「これまで一度も考慮したことすらない視点でした。深く感銘を受けましたよ。ですが今日、すぐに結論を出すなんて私には荷が勝ちすぎます。しばし考えさせてくださいな」
根積はソファから立ったのだった。
「ナターシャさんの話も聞いてみましょう。陽太さん、今日は有意義な時間をありがとうございました」
そして深々と頭を下げた。泡を食って陽太も席から立つ。
「いえ、オレはただ思ったことを口にしただけで、意義のあることを言ったわけでは」
「思えば、さっきのたとえはまずかったですね。現代医学では、切り捨てるだけががん治療ではないんですよね。がんと生きるという道もあるのですから」
勉強になりましたと言い残すと、ひょこひょこと根積は出て行ったのだった。
彼の背を見送りながら陽太は思う。
言いたいことばかり言ってしまったかな、オレ。
でも聞いてもらえてよかった。それはまちがいない。
あともう少し、猫と過ごしてから帰ろうか。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
11人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2023年06月29日
参加申し込みの期限
2023年07月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2023年07月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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