ハッピーバースデー！　１２月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　１２月☆

俺の誕生日なのに？？

　クリスマスを間近に控えた、１２月２２日。
　花厳望春は困惑していた。
　何故ならば、三人いる姉、長女・知冬、次女・秋良、三女・夏希（次女と三女は双子である）から、唐突にクリスマスケーキを作るように命じられたからである。
「誕生日がクリスマスに近いと、一緒にされちゃうってのはよくあるけど……なんで、俺がそのクリスマスケーキを作る係なわけ？」
　疑問符が、望春の頭の上に飛び散っている。
「俺の誕生日なのに？？」
　ふつう、誕生日って、作ってもらう側じゃない？
　納得いかないこと極まりない。
　しかし三人の姉たちは「いいから」とにこにこ顔で望春の背中を押し、逆らえなかった望春は渋々、キッチンへと入った。
　そのキッチンに置いてあったのは――。

「え……なにこの新しいエプロンとヘアピン。それに、高校生の小遣いで買うには高価で手が出なかったお菓子作り用の道具セット……こ、これはまさか、姉さん達から俺への誕生日プレゼント……ってコト！？」

「そうよ」長女の知冬が穏やかに微笑む。
「うわー、嬉しい！　このハンドブレンダーとか、気にはなってたけど、自分のお金で買うほどのものじゃなかったし」
「でしょ？　きっと気に入ると思ったのよね」次女の秋良は自分の手柄みたいに胸を張る。
「ありがとう、姉さん！」
「じゃ、張り切ってケーキ作りなさいよね」三女の夏希が、ぽんぽん、と望春の肩を叩く。
　と、そこで、はた、と望春は気が付いた。
「………いや待って。結局ケーキを作るのは俺で、そのケーキを食べるのはこの人達なんだよな？　何かおかしくないか……？？」
　メッチャイイ笑顔で首を傾げる三人の姉が、まるで童話かなにかに出てくる三人の魔女みたいに見えてくる。
「ん？」
「なんか気づいちゃった？」
「気のせいじゃない？」
　姉たちはニコニコと、新しいエプロンを望春につけさせ、ヘアピンで望春の前髪をとめ、その手に新品のハンドブレンダーを握らせる。
「「「さ、思い切り、ケーキを作って！！！」」」
　そこまでお膳立てされて、望春は折れた。
　あるいは、彼は、姉たちの横暴に慣れすぎていた。
「うーん、まぁいいか。プレゼント自体は嬉しかったし。じゃあ、頑張って美味しいケーキ作ってみるよ」
「「「やったー！！！」」」
　姉たちは諸手を挙げて喜んで、いそいそとテーブルについてケーキが出来上がるのを待ち始めた。
　手伝う気は毛頭ないらしい。
　まあ、これが我が家だ、と望春は諦めた。
　小麦粉を篩う。卵白を泡立て、砂糖を混ぜて、生地をつくる。ケーキ型に入れてオーブンで焼き、仕上げに生クリームで飾って、最後にいちごとマジパンのサンタを乗せて――。
「はい、完成」
　とっても美味なクリスマスケーキに、望春の年の数だけ蝋燭を差して、いちおう誕生日も祝った花厳姉弟でありました。