ハッピーバースデー！　１２月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　１２月☆

リッカルド町長はクリスマス生まれ

　町長秘書の三折部朝衣は、１２月も忙しくしていた。
　特にここ最近は年末進行なので、その忙しさは目が回るほどだ。
「町長。本日は１０時から副町長と打合せ、１１時に商工会の方との面談、１３時から議会となっています」
　寝子島町・町長である中沢リッカルドのスケジュール管理は、朝衣の仕事である。
　今年の３月まで、朝衣は総務課に所属していた。人事異動の対象になると言われたときは、町おこしプロジェクトなどに多く関わった経験から、地域振興課か観光課へ異動するのだろうと思ったものだ。
　なのに実際は――。

「ハッハッハ。朝衣君もすっかり秘書が板についてきましたね」
「お陰様で。勉強させていただいています」

　――いきなりの町長秘書抜擢。
（町長はあたしの何が気に入った？　高卒で就職して３年目のあたしを抜擢するなんて？）
　初めのころこそ、そんな疑問を抱いたものだが、そのうち、疑問を持つ暇もなくなった。
　秘書になった春から、仕事ではずっと全力で疾走しているようなものである。
　いきなり突拍子もないことを無茶振りしてくるし、その場のノリで突っ走ることもしばしばだ。
「町長ってフットワークが軽いですよね」
　言ってから、すこし厭味が混じったかと反省したが、リッカルド町長は気にする風もなく、
「熱さと勢いが取り柄ですからね」
　と笑うばかりだった。
（趣味のサーフィンがなかなかできなかったって恨み言を言いたいときもあるけれど、町長の笑顔を見ると、なんだか頑張っちゃうのよね）

　クリスマスを目前に控えたその日も、朝衣は町長に付き添って、１日びっちりなスケジュールをこなした。日が暮れてからは町長を手伝っての残業。若いお嬢さんをあまり遅くまで働かせては申し訳ないから、とリッカルド町長が２０時を目途に帰宅準備をはじめると、朝衣は、紙袋に潜ませてあったプレゼントを町長に渡した。
「リッカルド町長。少し早いですが、お誕生日おめでとうございます」
「えっ、私にですか？」
　町長はびっくりした様子だった。
「そうか、もうクリスマス。私の誕生日ですね。君に祝ってもらえるとは思いませんでしたが……開けてもいいですか？」
　どうぞ、と朝衣は手で促す。
　大きめの包みを開くと――。
「これは……サンタの衣装ですか！　おお、真っ白なあごひげまで」
「リッカルド町長に似合うかと思いまして」
「ハッハッハ、嬉しいです。そうだ、クリスマス当日はこれで出勤して、役場でもクリスマスを祝いましょうか！　飾りつけもして、手続きに来た方にクリスマスカードを渡したりして……ブラビッシモ！　朝衣君、明日、さっそく準備してください！」
　町長はやっぱり思い付き＆勢いの人。
　でもおかげで、寝子島町役場は街の人たちに素敵なクリスマスを届けることができたのだった。

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