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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
銀河は続くよどこまでも
◆朝鳥 さゆると姫木じゅん
起きてと、誰かに声をかけられたような気がして、さゆるは目を開きました。
向かい側の腰掛けに、恋人のじゅんが座っています。
「ここ……どこ？」
「列車の中みたいね。あたしもついさっき起きたとこ」
列車に乗った記憶はありませんでした。
いいえ、それどころか、外へ出た記憶もありません。
さゆるが覚えているのは、じゅんと２人でマンションへ帰って、優しく愛し合ったことでした。
満ち足りた思いと、疲労と。眠気にふわふわとした気分でいました。
するとつまり今自分は眠っていて、これは夢の中ということなのでしょうか？
「明晰夢？ それにしてもリアルだわ」
走り続ける列車から伝わってくる振動、その振動に合わせて揺れる、車室の壁に等間隔で据え付けられた小さな電燈の放つ黄色い光に照らし出されたじゅんの幻想的な美しさまで、さゆるには本物としか思えないのでした。
さゆるにじゅんも同意します。
「けど、夢でもいいじゃん。２人で同じ夢が見れてるって、すっごくすてき。
あっ！ 見て見て！ 流れ星！」
じゅんが喜々として指で示した窓の外に、さゆるも目を向けました。すると、確かにじゅんの言うとおり、少し遠くのほうで白い星が、竹箒の穂のように見える尾を引きながら、左上から右下に向かって流れていきました。
最初の１つを追うように、いくつも流れていきます。
「流星群だ！ いいもの見ちゃった！
――あ！ 何か願い事するんだったなあ」
残念、とじゅんは舌打ちします。
そして昔見たアニメの映画みたいと言いました。
彼女の言葉にぴんときていないさゆるに気付いたじゅんは、「あのね」と教えます。
昔、こうして銀河鉄道に乗って、星々を渡り歩く２人を描いた小説があったのだと。
「あたしが知ってるのはアニメのほうだし、見たのも子どものころなんだけど、ものすごーく面白かったよ！ 今度２人で見ようね！」
そのときです。
「次は水の星～、水の星ですにゃ～」
という声が聞こえてきました。
窓の外で行く手のほうが青白く光り、それがだんだんと大きくなって、水色の小さな丸い星となります。そこは本当に表面が全て水に覆われていて、どこからか吹いている風にさざ波を立てているだけの星でした。
一体どうするのだろうと少し不安がっていた２人の前、列車は勢いを落とすことなく水の中へ突入していきました。
わわっと慌ててじゅんが窓を閉めようとしましたが、まるで列車は透明な膜で護られているように――あるいは水自身が意思を持って列車を避けているように――水は全て列車の手前を流れていって、１滴も彼女たちに触れることはありませんでした。
やがて列車は、暗い水底にある停車場に着きます。
列車が停止すると、むくりと席を立って降車していく人たちが現れました。
「え？ 外へ出るの？」
「あたしたちも行きましょう」
だって水の中なのに、と不安がるじゅんでしたが、さゆるに従ってじゅんも席を立ちました。
構内へ出てみると、先に出た人たちがぞろぞろと水と列車の境目まで進んでいます。そしてそこから両手を前へ伸ばして地面を蹴って、とぷんと水の中に突入していました。
まだ少しおびえている様子のじゅんに、さゆるが先に水の中へ入ります。すると水はまるでゼリーのように２人を受け止めてくれました。
少しの息苦しさも感じることはなく、２人は水中を泳ぐように歩きます。ほの暗い水の中は、決して視界が良いとは言えません。建物が明け方の蜃気楼のように青や白の背景にゆらゆら揺れて、下のほうは途切れて見えます。その建物に向かっているたくさんの小さな影は、きっと人なのでしょう。
怖くはありませんでした。
むしろ順応力に長けたじゅんなどは、一度不安を克服すると今度はすれ違う人に積極的に声をかけて食事のできるお店を聞いたり、観光するのによい場所を聞いたりするほどでした。
「ふー、おなかいっぱい。夢でもおいしいって感じたり、おなかが苦しくなるのね」
「そうね」
水面に仰向けに浮かんで、さゆるは静かに周りの音に耳を傾けていました。
流れに身を任せて、ちゃぷちゃぷという水音と、じゅんの屈託ないおしゃべりに、さゆりは目を閉じて聞き入ります。
互いを求めるように這わせた指が、ふれ合い、確かめるように絡み合って、互いを引き寄せ合います。
求め合った唇は濡れて冷たく、けれどもその奥は熱くほてり。２人は同時に満足の吐息をつきました。
「んー。いい夢だわ。さめたくないくらい」
クリームを舐めた猫のようなじゅんの言葉に、さゆりは目を閉じたまま、満足げな笑みを浮かべて応じたのでした。
起きてと、誰かに声をかけられたような気がして、さゆるは目を開きました。
向かい側の腰掛けに、恋人のじゅんが座っています。
「ここ……どこ？」
「列車の中みたいね。あたしもついさっき起きたとこ」
列車に乗った記憶はありませんでした。
いいえ、それどころか、外へ出た記憶もありません。
さゆるが覚えているのは、じゅんと２人でマンションへ帰って、優しく愛し合ったことでした。
満ち足りた思いと、疲労と。眠気にふわふわとした気分でいました。
するとつまり今自分は眠っていて、これは夢の中ということなのでしょうか？
「明晰夢？ それにしてもリアルだわ」
走り続ける列車から伝わってくる振動、その振動に合わせて揺れる、車室の壁に等間隔で据え付けられた小さな電燈の放つ黄色い光に照らし出されたじゅんの幻想的な美しさまで、さゆるには本物としか思えないのでした。
さゆるにじゅんも同意します。
「けど、夢でもいいじゃん。２人で同じ夢が見れてるって、すっごくすてき。
あっ！ 見て見て！ 流れ星！」
じゅんが喜々として指で示した窓の外に、さゆるも目を向けました。すると、確かにじゅんの言うとおり、少し遠くのほうで白い星が、竹箒の穂のように見える尾を引きながら、左上から右下に向かって流れていきました。
最初の１つを追うように、いくつも流れていきます。
「流星群だ！ いいもの見ちゃった！
――あ！ 何か願い事するんだったなあ」
残念、とじゅんは舌打ちします。
そして昔見たアニメの映画みたいと言いました。
彼女の言葉にぴんときていないさゆるに気付いたじゅんは、「あのね」と教えます。
昔、こうして銀河鉄道に乗って、星々を渡り歩く２人を描いた小説があったのだと。
「あたしが知ってるのはアニメのほうだし、見たのも子どものころなんだけど、ものすごーく面白かったよ！ 今度２人で見ようね！」
そのときです。
「次は水の星～、水の星ですにゃ～」
という声が聞こえてきました。
窓の外で行く手のほうが青白く光り、それがだんだんと大きくなって、水色の小さな丸い星となります。そこは本当に表面が全て水に覆われていて、どこからか吹いている風にさざ波を立てているだけの星でした。
一体どうするのだろうと少し不安がっていた２人の前、列車は勢いを落とすことなく水の中へ突入していきました。
わわっと慌ててじゅんが窓を閉めようとしましたが、まるで列車は透明な膜で護られているように――あるいは水自身が意思を持って列車を避けているように――水は全て列車の手前を流れていって、１滴も彼女たちに触れることはありませんでした。
やがて列車は、暗い水底にある停車場に着きます。
列車が停止すると、むくりと席を立って降車していく人たちが現れました。
「え？ 外へ出るの？」
「あたしたちも行きましょう」
だって水の中なのに、と不安がるじゅんでしたが、さゆるに従ってじゅんも席を立ちました。
構内へ出てみると、先に出た人たちがぞろぞろと水と列車の境目まで進んでいます。そしてそこから両手を前へ伸ばして地面を蹴って、とぷんと水の中に突入していました。
まだ少しおびえている様子のじゅんに、さゆるが先に水の中へ入ります。すると水はまるでゼリーのように２人を受け止めてくれました。
少しの息苦しさも感じることはなく、２人は水中を泳ぐように歩きます。ほの暗い水の中は、決して視界が良いとは言えません。建物が明け方の蜃気楼のように青や白の背景にゆらゆら揺れて、下のほうは途切れて見えます。その建物に向かっているたくさんの小さな影は、きっと人なのでしょう。
怖くはありませんでした。
むしろ順応力に長けたじゅんなどは、一度不安を克服すると今度はすれ違う人に積極的に声をかけて食事のできるお店を聞いたり、観光するのによい場所を聞いたりするほどでした。
「ふー、おなかいっぱい。夢でもおいしいって感じたり、おなかが苦しくなるのね」
「そうね」
水面に仰向けに浮かんで、さゆるは静かに周りの音に耳を傾けていました。
流れに身を任せて、ちゃぷちゃぷという水音と、じゅんの屈託ないおしゃべりに、さゆりは目を閉じて聞き入ります。
互いを求めるように這わせた指が、ふれ合い、確かめるように絡み合って、互いを引き寄せ合います。
求め合った唇は濡れて冷たく、けれどもその奥は熱くほてり。２人は同時に満足の吐息をつきました。
「んー。いい夢だわ。さめたくないくらい」
クリームを舐めた猫のようなじゅんの言葉に、さゆりは目を閉じたまま、満足げな笑みを浮かべて応じたのでした。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年05月17日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年05月24日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年05月24日 11時00分
