またコン、ＤＯ！｜リアクション

またコン、ＤＯ！

◆空はどこまでも青い。

　今日は本当にいい天気だった。バスも気持ちが良さそうに走っている。
　五十士柊斗は目まぐるしく変化していく景色を見ていると、ふと、その窓に気の強そうな女の子が映っていることに気がついた。
　きゅっと唇を結んで、所在なさげに、けれど表情にはそれを出さないように気をつけてる。
　隣に座っている彼女に視線を移した。名前は落神れみ。可愛らしいワンピースから伸びる足は、几帳面に揃えられている。
「どうかしましたか？」
　れみは首をかしげて柊斗を見つめ返した。
「いや、いい天気でよかったなって」
「ああ、そうですわね」
　愛想笑いをしてくれるれみを見ていると、柊斗は妹を思い出した。
（全然似てないけど、落神さんはあいつと同じくらいだよね）
　いや気が強いところは似ているか。そんなことを考えては、また窓の外を見る。
　もともと彼が彼女に声をかけたのは、妹と同じくらいの子が不安そうにしているのを放っておけなかったから。
　変な奴に声をかけられるくらいなら、自分が声をかけたほうがいいかもしれないな、という下心とはちょっと違った理由からだった。
　隣で気難しい顔をしているのを見ると、声をかけたことが本当に良かったのかわからなくなったが。
「どこか行きたいところとかあるかい？」
「私は特にありませんわ」
「うーん、じゃあとりあえずどこかでお昼を食べて……協賛店舗を適当に回ろうか」
「ええ、そうしましょう」
　ぼんやりと外を眺める。窓越しに景色と彼女の顔を見る。
「落神さんは趣味とかある？」
「お料理と……小物を作ることかしら。柊斗さんは？」
「俺は……高いところで外を眺めるのが好きなんだ、今日みたいに晴れた日は特に気持ちいいよ」
　ほら、と窓の外を示すと、れみも嬉しそうに窓の外に視線をやった。
「まぁ、たしかに気持ちが良さそうですわ！」
　穏やかな空の中で揺られ、ふたりはのんびり言葉を交わす。

「ほんと、いい天気だなぁ」
　ゆらゆらとバスに揺られて、風間舞子も景色を眺める。
　その間は隣に座っている新しい友人たちのことを忘れてしまいそうだった。
　いまからどこに行こうかな？　なにをしようかな？　とりあえずこの綺麗な空を絵に描きたい。
　あっという間に角度が変わってしまうバスの中で、風間は空のスケッチを描いていた。

　愛猫のサティを連れているため、バスを使わずに歩いて移動をしている霧生深雪。
　猫カフェに行くならと連れてきたのだが、それが裏目に出て入れない店が多くて困っていた。
「なんか適当に買い食いするか……」
　そんな彼がふと横切っていくねこバスを見ると、窓に指でなにかを書いている女性が目に付いた。
　なにをしているのかわからないが、忙しなく指を動かしている。
（面白いやつもいるもんだな）
　腕の中でむず痒そうにしているサティを撫でて、霧生はキャットロードの方に歩いて行った。