【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと｜リアクション

【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと

　女子バスケット仲間の２年の浅見柚乃、１年の霧生愛、３年の羽生碧南は、銀河パーティに３人で参加した。
　三人ともカジュアル寄りの私服だが、ドレスコードに従い、胸元を飾るネックレスや耳を飾るイヤリングなどに銀河っぽい星をあしらったものを着用していた。
　この三人が並ぶと、元々の高身長もあって非常によく目立つ。

　柚乃は、カジュアルな私服に星をモチーフにしたアクセを身に着けただけのシンプルな装いの碧南をうっとりと眺めた。
（碧南先輩によく似合ってる。この前のハロウィンのようなドレス姿も素敵だけど……）
　つい見とれつつ、あんまりジロジロ見ていてはおかしく思われるかと、傍らの愛にも目をやると。
（霧生の方はマニッシュな印象の私服で、よく似合ってる。悔しいけど）
　柚乃の心はざわついていた。
（霧生、何で先輩と一緒にいるの？　碧南先輩は私の……私のものなのよ！）
　そう言いたい、叫びだしたい思いをこらえる。
　代わりに碧南に笑顔を向け、
「先輩、木天蓼大の特待生試験、合格おめでとうございます」
　と祝いの言葉を述べた。
「ありがとう」
　碧南も笑顔で答える。
　表面上は先輩の新たな門出を祝っているようだが。
（……本当は不合格になってほしかった。実際にはそれは有り得ないことだとわかっていても、それでも……）
　そんな懊悩を振り払うように、柄にもなくはしゃいで柚乃は言う。
「今日は思いっきり盛り上がりましょう！」
　
（……浅見先輩相変わらずこちらに敵意を向けてくるし、こちらも正直、辟易する）
　愛は内心ではげんなりしていた。
　インターハイの決勝戦の時からだ。
　試合終了後、悔しくて人目憚らず泣いたときに碧南先輩にハグして貰ったけど、その時自分を見た浅見先輩は唇を噛んで涙を流していた。
（それは、試合に負けた悔しさからじゃない。それまでの小競り合いの時とは全然違っていた。嫉妬していたんだ。
　そのことに気づいてしまって正直参ったが、表面上、そんなことはおくびにも出さず、碧南先輩の前では淡々と振舞っている。
　浅見先輩も碧南先輩の前ではおっとりと微笑んでいる。

　後輩二人に笑顔を向けながら、碧南は思っていた。
（私たち３人は表面上は楽し気に振舞っているけど、内心ではハラハラだ。こんなの、乙女ゲームにもなかったよ）
　碧南は柚乃が自分に恋心を抱いていることに気づいている。
（私が鷹取先輩に恋していることに苦しみ、一方で柚乃は愛とは不仲だ。愛も碧南のことが好きだと誤解し嫉妬しているから……）
　さすがに碧南の前で喧嘩するようなことはないが。
（……私が卒業後した後は、どうなっちゃうんだろう）
　気が気ではないが、今は前夜祭。
　こんな気持ちでいるのはもったいない。
（歌って踊って騒いでこんがらがった人間関係は忘れよう！）

「みなさんもご一緒にどうぞ！」
　ステージから声が響いた。
　軽音楽部だったか、なにかパフォーマンスで盛り上がっているようだ。
「踊りに行こうよ」
　碧南は柚乃と愛に声をかける。
「……えっと、私はいいです」
　愛は柚乃をちらりと見る。
「はい先輩、行きましょう！」
　柚乃は一瞬勝ち誇った目を愛に向けると、碧南と連れだってステージに上がった。
　即興で踊り始め、観衆の手拍子を受ける。

（浅見先輩、とてもうれしそう）
　客席で手拍子を送りながら、愛は思う。
（でも……どんなに想っていてもそれは報われない恋、片思い……）
　ステージのスポットライトは眩しくて。
　二人がはしゃいで踊るほどになんだか物悲しい。
（……なんで私は他人の恋にやきもきしなきゃならないのよ。恋なんてしなけりゃいいのよ……恋なんて、ね……）
　思いを隠し、踊り終えて戻ってくる二人に愛は笑顔で手を振った。