【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと｜リアクション

【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと

☆☆前夜祭☆☆

　講堂の天井一面、星でキラキラ輝いていた。
　寝子祭実行委員長の本条小萩は、講堂の天井一面に貼れるだけの量の星を調達、さらにそれを天井に配置していくという高所での作業、など、地味に大変な準備作業をこなした。
　それは氷山の一角にすぎない。委員長の仕事は寝子祭のさまざまな分野に渡り、ハプニングにも対応できるシミュレーションは他の委員たちにも徹底された。
「小萩はすごいので、なんとかなりました」
　出来栄えを確認、疲れも見せず満足そうに頷いた小萩は、実行委員に告げる。
「さあ、開場です！」

　普段は変わり映えしない制服姿の生徒たちが、今日ばかりは銀河をイメージした衣装やアクセサリで身を飾り、うきうきした足取りで会場へと入ってくる。
　入り口では星型のキラキラ光るうちわを配布している。

　舞台袖から小萩は生徒たちで満ちていく会場を眺めていた。
「銀河と言われると、岩手出身の小萩としては、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を思い出しますね」
　そう呟いて、小萩は宮沢賢治風のコートに帽子を被る。

　いよいよ前夜祭のオープニングセレモニーの始まりだ。
「実行委員長挨拶」
　司会の言葉に、小萩は登壇してマイクに向け発声した。
「実行委員長の小萩です。みなさん！　キラキラしてますか！？」
　そのセリフと共に帽子とコートを脱ぎ捨てる。
　どよめきの声が響く中、スパンコールのキラキラしたワンピース姿になって小萩は宣言した。
「明日からの寝子祭開催に向け、前夜祭『銀河パーティ』をスタートします！」
　講堂中に歓声と拍手が巻き起こった。

（寝子祭をきちんと生徒として参加するのは初めてだ）
　稲積柚春は、去年は転校してきたばかりな上、都合で休学中だった。
　たまたま課題の提出日だった日寝子祭に少し顔を出して、ウォルター・B先生が景品になっているのを見かけたのだった。
（今年はそんな噂は聞かないけど、射撃部の景品になってたりするのかな？）
　あんなに素敵なひとだもの、人気がなかったらおかしいよね、と思いつつ。
　そんな生徒たちの中で、声高に愛を叫んだり甘えたりする勇気はやはり出ない。
　思いは誰にも負けないつもりだけど。

　生徒たちでごったがえす行動の中、柚春は想い人の姿を求めて周囲を見回す。
（クラス担任に二つも部活の顧問もあって、きっと風紀委員だって見回りが忙しいよね。聞くなら今日が最後のチャンスだ）
　文化祭でどこを見て回るか決めるためにもお話出来たらいいな、と思う。
　目立つはずの金髪も、そこら中が星で輝いている暗闇ではまったく目につかないけれど。
「探し歩いてみよう」
　そんなことで諦める柚春ではない。
　１階は座席が取り払われて、ステージ寄りはスタンディングのライヴ風。後方は立食パーティー風だ。
（ワット、どこにいるのかな）
　ステージ傍でライヴに興ずる彼の姿は想像できない。
　ならば後方だろうか、あるいは……。

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