【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと｜リアクション

【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと

　軽音楽部の楡宮遠海は、他のメンバーと共にライブステージに躍り出た。
　見上げれば天井に星、ステージ下には観客の持つキラキラするうちわが波のように揺れる。
　遠海は黒地にＵＦＯを描いたＴシャツを着て、ショルダーキーボードを肩に縦横無尽に走り回りつつ、景気づけにノリのいい曲を立て続けに披露する。
　元インディーズバンドのキーボーディストだった母に幼少期より演奏技術を仕込まれている遠海。
　去年以上に上達している自負がある。

　キーボードは忙しい時とそうでないときのギャップが激しい。
　とにかくものすごく忙しくて休む暇がないか、逆に滅茶苦茶ヒマでキーボードが置物にしか見えないような状態になるかの両極端だ。
　で、今のところそれなりに忙しくしている。
　ヒマな曲にぶち当たって演奏しているフリをするのもそれはそれでしんどい。
（まあ、どうしようもなかったらアドリブを何回か入れたりするけどね）
　それで曲が台無しになるとかまずないし、それに多少は景気づけになろうというもの。
（よし、ちょっとアドリブ入れてみよう）　
　少し暇になった遠海は楽譜にない小気味よいフレーズを加えてみる。
　合わせて、観衆の歓声が大きくなった。
　いい感じだ。
　と、さらに違う調べを遠海の耳は捕らえた。
　ギターの子がこちらに触発されて早引きのアドリブを入れてきたのだ。
（そっちがそう来るなら）
　興が乗った遠海は掛け合うように、心を開放し曲に乗せていく。
　曲はますます盛り上がり、観衆の声援も熱くなり。
　いつしか遠海の着ているＴシャツが完全に汗だくになっていた。
　遠海はペットボトルのミネラルウォーターに手を伸ばし、思い切りよく頭からかぶった。
　観衆からどよめきが上がった。
（黒地なので濡れても透けないし安心なのよね）
　冷たい水でリフレッシュして、頭を振って滴を飛ばす。
　視線を感じながら遠海が、
「Burn baby burn!!」
　と絶叫した。
　生徒たちは歓声をあげ、熱狂する。
　ヒートアップする会場を、遠海のパフォーマンスがさらに景気よく燃え上がらせた。　

　
「いやー、すごいのです」
　小萩はライブを眺めながら観客席を見回っていた。
「ん、あれは……」
　小萩は所在なさそうにしている笛吹ぴりりの姿を見つけげ、声をかける。
「ふふー、お祭りの最中は、風紀委員さんのお仕事は、ちょっとお休みになりそうですね」
「本条さん……おつかれさまです」
「トラブルなども寝子祭実行委員会で対応しますので、たまにはのんびりしてください」
　小萩の言葉にぴりりは首を振る。
「いえ、この熱狂は事故につながりかねません。何かあったらすぐに介入しますから、目を離すわけにはいきません」
　そう言いつつ、ステージに視線を注ぐのだった。

　
　休憩時間になった。
（お腹すいた……）
　ステージが終わると、途端に空腹が襲ってきた。
　遠海は後方の立食コーナーへ向かう。
　サンドイッチやオードブル、お菓子などが並ぶテーブルの前に立って、いただきますと手を合わせた後、思い切り食欲の赴くまま、ひたすら食べまくった。
　汚い食べ方ではなく、あくまでも美味しそうに味わうような感じで。
　見た目は鎌倉の清楚なお嬢様系なので、なにか上品にさえ見えてくるのが不思議である。
「ごちそうさまでした」
　お腹いっぱいになった遠海はまた演奏に戻っていく。

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